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いつしかミスチルから離れた40代に贈る、ミスチル再会のススメ『miss you』
あるアンケートを見たことがある。
男性の20代、30代、40代に「今なりたいもの」を尋ねたものだ。
そこにはこうあった。
20代……課長
30代……部長
40代……「鳥」
正直、笑ってしまった。
そして同時に深く共感している自分がいた。
11月の初めに誕生日を迎え、40代になってまた一つ年を重ねた。40代になると、20代、30代とは異なる感情が湧き上がってくる。
仕事の責任はどんどん増して、上司と部下の間で揺れ動く板挟みの日々。
子どもは少しずつ大きくなって、だんだんと手がかからなくなるが、次は進路の話になってくる。
親は年を取り、いつまでも続くと思っていた父・母との団らんの時間が、そう長くないことに気づかされる。
お昼ごはんを買いにコンビニへ行くと、今まで目に留めることすらなかったひじきやおからの惣菜を、自然と手に取るようになる。
そして、過去の出来事に対して「もしあのとき、ああしていれば……」と後悔することがしばしばある。しかし、そのたびに「もう後戻りはできないんだ」と自分に言い聞かせて受け入れようとする。そんな感情が繰り返されるのだ(若い子には分からないかも、だけど)
そして重圧から逃れたいとき、ボクもやっぱり「鳥になりたい」と感じる笑
20代、30代の頃にもそんな気持ちはあったけれど、その頃の「鳥」はせいぜいカモメ程度だった。だが今は、オオワシになってカムチャツカ半島あたりまで飛んでいきたい気分である。
そんな日々を送っている中で、ふとMr.Childrenの『miss you』というアルバムに出会った。
アルバムは2023年10月にリリースされたもので、気づけば現時点でもう一年が経っていた。ミスチルが新しいアルバムを出していたことさえ知らなかった自分に驚いた。
そういえば、中学・高校・大学時代はミスチルが大好きだった。
『Atomic Heart』『深海』『BOLERO』『DISCOVERY』のサウンドに酔いしれていた。田舎の夜、カエルのゲコゲコという鳴き声をバックにギター片手にミスチルを口ずさんでいた。大学時代は、友人たちとのカラオケのために『友とコーヒーと嘘と胃袋』という曲を部屋で必死に練習していた。
ところが、いつの間にかボクたちは仕事や家庭、子育てで忙しくなり、ミスチルから離れてしまった。『SUPERMARKET FANTASY』や『SENSE』は数回聞いた程度。それ以降のアルバムは、タイトルすら知らなかった。
これ以降のアルバムは、ボクが必死に会社や子育てに食らいついている最中にリリースされたものだからだ。
40代の今、改めて『miss you』に耳を傾けてみた。
調べてみると、このアルバムは桜井さん自身も「非常に個人的で特殊なアルバム」と語っていた。自分の思いをストレートにぶつけた作品であり、「世の中に出して良いのか悩むほどの内容だった」とも言う。
セールス的には成功していないようだが、それは最初からセールスを目的としていないからだろう。
曲の一つひとつに、特に40代や50代に向けたメッセージがストレートに散りばめられている。
「今のしんどさも、いつか笑い話になる」
「過去は変えられない。だからこそ気にせず前を向いてみる」
「もしモヤモヤがあるなら、少し勇気を出してチャレンジしてみよう」
「新しい家族の形が少しずつ出来上がってきたなら、それも幸せじゃないか」
20代、30代の頃にもこうしたメッセージは心に響いたかもしれない。
けれど、40代になった今だからこそ、よりリアルで深く、心の柔らかい部分に響いてくる。
思春期にボクたちの心を癒やしてくれたミスチルは、こうしておっさんになった今でも寄り添い、励ましてくれる。
そして、ボクの中にも、まだまだ青くて酸っぱいリンゴが残っていると気付かされる。前を向く。
いつしかミスチルから離れた40代の皆さんへ。是非いちど『miss you』を聴いてみてくださいね。ちょっぴり前向きな気持になれるかも、です。