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推しエンタメの最前線を読み解く:『日経エンタテインメント!』3月号から学んでみた

『日経エンタテインメント!』3月号を読みました。

今月号のテーマは、「1冊丸ごと“推し”エンタメ大研究!」。その中で調査されていたのが、推されている人や作品を性別×世代でマッピングした図(下記)。

これが結構おもしろいと思ったので、ご紹介しつつ考察してみようと思います。

「推しマッピング図」- 日経エンタテインメント! 2024年3月号紹介記事よりhttps://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00960/00001/

エンタメビジネスでは、「だれに、何をみせるか?」はめちゃくちゃ重要


マーケティングを学ぶ際に必ず通るのは「ターゲットは誰か?」です。このターゲットの選定は、エンタメビジネスではめちゃくちゃ重要です。

そもそもエンタメは個々の好みや感情に訴えかけるビジネスであるため、すべての人たちの好みに対応することは不可能です。

そのため、特定の層に対してシッカリと焦点を当て、効果的なコンテンツやプロモーションを企画することが求められます。よって、「誰に、何をみせるか?」という視点は、エンタメビジネスでは特に意識されています。

こうしたことから、あるエンタメ作品がどのような層に受け入れられているかを理解することは、企画の意図や目的を考察する手がかりとなるわけです。

今回は、このマッピングデータを基に、いくつかの興味深いポイントを探ってみましょう。

「新しい学校のリーダーズ」を推すのは40代後半男性、松本人志好き?

去年の紅白でのインパクトが記憶に新しい「新しい学校のリーダーズ」。彼女たちがマッピングされているのは、40代後半×男6割/女4割のエリアです。

ついついZ世代に人気……と思いきや、実はおっさんファンが中心のアイドルグループともいえます(データ的には松本人志ファンとほぼ同じ層です)

考えてみれば理由は明確ですね。「新しい学校のリーダーズ」はレトロスタイルです。ファッションは「スケバン風」だし、「オトナブルー」のメロディや歌詞も昭和ノスタルジーです。

そもそもアイドルファンというのは中年男性が中心。新しい学校のリーダーズは、まさにアイドルファンど真ん中・中年男性にとっての「エモさ」を追求したアイドルグループということが分かります。

千鳥を推すのは女性ファン!

ボクは大阪に10年住んでいたこともあり、千鳥は割と昔から知っていました。そのため、どうしても昔の男くさい印象が抜けずにいるのですが……いまの千鳥が抱えるのは女性ファンのほうが多いです(40代×男4割/女6割のエリア)

その理由はキャラや見た目が丸くなったなど、色々とありますが、調べていて特におもしろいと思ったのは、2人のコンビ仲の良さに着目した考察です。

いわく、彼らの和気あいあいとしたやり取りが微笑ましく、多くの女性が「いちゃいちゃ」(恋愛感情がなくても)を魅力的に感じているようです。

「コンビ仲のいちゃいちゃ」が魅力といえば、ボクが推すのは鬼越トマホークの2人。いかつい見た目とは裏腹に、彼らの仲の良さは業界でも有名です。

個人的に好きなエピソードがあります。

最近、坂井良多(坊主頭の方)が入院した時、相方の金ちゃんに「声が聞きたくて……」と日に何度も電話をかけたという話。しかもそれを照れくさそうに語る金ちゃんと、恥ずかしそうに聞く坂井。そんな微笑ましい様子をみるたび、ボクはいかつい2人にほっこりしてしまいます。

すべての人が推すのが「集英社」と「任天堂」

「呪術廻戦」「鬼滅の刃」「SPY×FAMILY」「スラムダンク」「僕のヒーローアカデミア」「ハンター×ハンター」「ポケットモンスター」「スプラトゥーン」。

これらの人気タイトルはマッピングデータで見ると、ほぼ中央に鎮座しています。このエリアは男女比がほぼ1対1で、ファンのバランスが非常に取れていることを示しています。

男女比が均等であることはどういうことか?

要は、これらの作品が幅広い層から支持されており、ビジネスの観点から見れば、最も大きなマーケットにアクセスできているエンタメ作品ということです。

前述の通り、多様な人々の好みに合わせたコンテンツを生み出し、広く受け入れられることは容易なことではありません。マッピングデータは、「集英社」と「任天堂」の企画力の強さを如実に表していると言えるでしょう。

女性は「にじさんじ」推し。男性は「ホロライブ」推し

VTuberプロダクション「にじさんじ」と「ホロライブ」のファン層の違いは興味深いです。

「にじさんじ」は20代×男4割/女6割のエリア、「ホロライブ」は20代×男8割/女2割のエリアにマッピング。「にじさんじ」は女性ファンが多く、「ホロライブ」は男性ファンが多い傾向にあります。

『にじさんじ』HPより https://www.nijisanji.jp/
ホロライブ公式HPより https://hololive.hololivepro.com/

この違いの背景を探ると、「にじさんじ」には男性VTuberが多く所属しており、一方で「ホロライブ」は女性VTuberグループが中心ということです

これは、ほぼ同時期にスタートした二大VTuberプロダクションが、ファンの奪い合いを避けるためマーケットの棲み分けを行った結果だと思います。

「プロセカ」推しは平均年齢19.4歳。最も若いタイトル


音楽ゲームアプリ「プロジェクトセカイ」(通称:プロセカ)。マッピングデータによると、最も若いファン層を持ち、平均年齢は19.4歳とされています。

『プロジェクトセカイ』HPより https://pjsekai.sega.jp/

「プロセカ」はセガとColorful Paletteが共同開発したスマートフォン向け音楽ゲームアプリ。

最近、ボクは「プロセカ」の熱狂的なファンの大学生に出会い、触発されてゲームを体験したところ、ただの音楽ゲームではないことに気づきました。

というのも、本作ではキャラクターやストーリーがとても魅力的。思春期の主人公たちが、バーチャルシンガーたちと共に、音楽やダンスを通じて自分の想いを表現し、成長していくとうストーリーです。

物語には夢や将来、家族や友人との関係、恋愛など思春期特有のテーマを取り入れており、若年層のプレイヤーに共感と感情移入を促しています。

ボクの小学生の娘が通うクラスでも「プロセカ」は流行しているようです。聞けば、純粋にゲーム要素を楽しむ子どもたちに加え、なんとストーリー「だけ」を楽しむ子たちも少なくないようです。

「プロセカ」は、キャラやストーリーに深みを持たせることで単なる音楽ゲームを超え、IP(知的財産)としての価値を高めようとしています。

まとめ


推している層とその背景を色々と妄想すると、企画者の意図やトレンドがなんとなくあぶり出されてきます。

もし気になった方は、『日経エンタテインメント!』3月号をぜひチェックしてみてくださいね。

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