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成果を出したければ、『イシューからはじめよ』~十数年の経験から解説してみた~

今回はいつものnoteとは違って、一冊の本をもとに書いていきます。

その本とは、『イシューからはじめよ』です。

10年前に書かれた本で、今年で37歳になろうとする自分がなぜ今更この本を取り上げるのかということですが、、、
それはひとえに、自分がここ最近の課題として取り組んでいた「経験知を言語化して他者に伝える」という部分に対し、ど真ん中ストライクの言語化がされている本だからです。

例えばこの本の中にある「強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てる」というフレーズについて、自身の経験則では十二分にわかっていることでした。
ただ、実際に後輩などにアドバイスする際、「まず仮説立てなきゃ!」という言い方をしていたりします。

言われた当人からすると、仮説を立てなければいけないことは十分に理解しているものの、
仮説を立てるための材料(データやファクト、経験など)が足りない状態でこれを言われても、「仮説の立て方がわかんないよ」となるわけです。
こういった実務上の課題についても、本書には明確に答えが書かれています。

数々の苦難を乗り越えて成果を出してきた人のアドバイスというのは、本質的であるがゆえに、「なぜそうしなければならないのか」という説明が十分ではないことも多いものです。
話し手と聞き手の間にある経験・知識の隔たりによって、話し手が意図していることが聞き手に一割も伝わっていないと感じることはよくあります。

自分は社会人生活の十数年でそれなりに経験も成果も積んできたという自負があるものの、そのエッセンスを伝える術が不足していたという課題感がありました。
その解決策の一つとして、本書に書いてある内容を自身の経験と照らし合わせ、言語化して残してみようという目的でこのnoteを書くことにしました。

noteの内容は基本的に、本書の目次の見出しを中心に取り上げて、実体験をもとに解説する形をとっています。
そのうえで、特に注目したいフレーズも取り上げて解説していっています。

なお、あくまで学びの抜粋であり、すべてを網羅して書いてあるわけではありません。
少しでも気になったら、ぜひ本書を自身で読んでみることをおすすめします。

【バリューのある仕事とは何か】~マーケティングの現場から考える”仕事の本質”

バリューのある仕事をしようと思えば、取り組むテーマは「イシュー度」と解の質」が両方高くなければならない

本書では、バリューのある仕事を「イシュー度」と「解の質」という2軸で説明しています。これらが高いほどバリューのある仕事というわけです。

「イシュー」というのは、詳しくは本書を読んでもらえればと思いますが、要するに「白黒つけるべき課題」と捉えてください。

「イシュー度」というのは、「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」と定義されていますが、
わかりやすく言えば「事業インパクトの高さ」と捉えても問題はないと思います。

これは事業運営の現場においても、しばしば問われていることです。

例えばモバイルゲームの運営をしていると、決して順風満帆なことばかりではなく、「黒字化か撤退か」といったシビアな状況に直面するということも多々あります(というよりレッドオーシャン市場においては大半のプロダクトがそうなる)。

そういうときにありがちなのが、「とにかく施策の投下量を増やしてなんとかしよう」という対応です。
例えば通常より格段にお得なゲーム内商品を販売したり、アイテム配布のキャンペーンをひたすら増やしたり…といった形です。
(モバイルゲームに限らず、小売・飲食など数多くの業界で同様のケースがある)

しかし、それは一体なんのイシューに対する解なのか、ということです。

事業運営がうまくいっていないからといって施策の投下量を増やすというのは、まさに本書でいう「犬の道」といえます。仮に一時的に上手くいったとしても、過剰労働の反動や施策精度の低下などで、すぐにまた厳しい局面に陥る…というケースは何度も経験してきました(つらかった)。

まずは事業運営におけるイシューを見極めることが先決なのです。

また、そのときのイシューは本書でいう「イシュー度の高いもの」である必要があります。
しばしば「細かいところを改善して積み重ねていくしかない!」といった議論になったりしますが(そしてそれが大きなイシューになるケースもあるものの)、実際にはシンプルに「ターゲットユーザーからみたとき、他社に比べて根本的に面白くない・魅力がない」といった、よりイシュー度の高いものを見逃しているケースがほとんどだと思います。

また別のケースでいうと、例えばデジタル広告のクリエイティブ制作や、LP改善といったPDCAサイクルにおいては、ことさら「犬の道」が転がっていることは疑いないでしょう。

「この広告のテキストを目立つようにしましょう!」「別の素材でABテストしてみましょう!」といった議論がされることは多いが、それ自体はイシュー度も解の質も極めて低いケースが多いのです。

広告であれLP改善であれ、「より大きな売上・利益を作る」がイシューであるのに、いつのまにか「より目立つにはどうすればよいか」といった小さなイシューに集中してしまっているといったケースは決して少なくないと思います。

例えば以下の記事はMARKETIMESというメディアに以前寄稿したものですが、デジタル広告運用における大きなイシュー=事業を伸ばすということについて具体的な話を書いています。

事業の成否を分ける!アプリマーケティングにおける広告予算配分のキホン

業種業態に関わらず、バリューのある仕事=「イシュー度」「解の質」という鉄則については、とにかく徹底的に伝えていきたいと思います。

【「噛みしめる」ことを大切にしよう】~一次情報を死守するという鉄則

「一次情報を死守せよ」というのは、私の大先輩が授けてくれた珠玉の教えのひとつだ

こちらはコラムに書いてある話ですが、強く同意なのでピックアップしました。

自分も以下の記事で書いたことですが、とにかくマーケティングの基本は「顧客になりきる」ということであり、すなわち一次情報をとにかく集めるということです。

マーケティングは「顧客になりきる」 調査の大原則

仮説が出ない人というのは、とにかくこの「一次情報に触れる」という動きが不足していることがほとんどです。ネットで検索して表層的な情報を集めたり、SNSの投稿を見てなんとなく考えているだけでは、大した仮説は出せないのです。

自分で動き、自分の頭でかみ砕いた情報だからこそ、他者には真似できない強い仮説を考え出すことができるのであり、それは決してセンスなどという曖昧なものではなく、”一次情報の量と質の差”であり、それを集める”執着の差”です。

良い仮説が出せるかどうかというのは、結局のところ執着の差でしかありません。
本書ではイシューを見極める方法として「相談する相手をもつ」という話が書かれていますが、
聞き手に一次情報というバックボーンがなければ、相談してもアドバイスの本質を理解できないものです。

イシュー度の高い仮説にたどり着くには、一次情報を死守するということが鉄則であり、例外はありません。

なお、これに関連して本書の学びとして重要なのが「相談する相手をもつ」というのがあります。

一次情報を集めるのは時間も経験もかかるもので、その情報を意味があるものに仕上げるのはさらに難易度の高いものです。
そういうときに、頼れる相談相手がいるというのは成果を出すうえで非常に重要なことです。

以下の記事でも「デキる人に相談する」という話を書いていますが、TVCMを成功させるさいには相談相手が極めて重要でした。

できるマーケターの実行力 3つの実践で磨こう

相談相手をもつというのは、意外と意識しないものですが、特に若手のうちは積極的に探すのが良いと思います。

※なお上記の記事に出てくる「頼りにしたクリエイター」はこちら

【何はともあれ言葉にする】~言語化の重要性への認識が成否をわける

実務上、もっとも気になっていたことが言語化されていると思った部分です。

・言葉で表現しないと、自分だけでなくチームのなかでも誤解が生まれ、それが結果として大きなズレやムダを生む
・言葉にするときに詰まる部分こそイシューとしても詰まっていない部分であり、仮説をもたずに作業を進めようとしている部分なのだ

事業運営の現場では、施策の議論をするときに「ここはユーザーが盛り上がるポイントにしよう」「ここで攻めた施策を入れよう」といった話が出ることが多々あります。

こういう話が出ると、自分が議論に参加している場合、
「盛り上げるって、ターゲットは誰?盛り上がったという定義は?盛り上がることによる目的は?」
「攻めるというのは具体的に何を目的に、何をやること?通常施策とのターゲットの違いがある?」

といった突っ込みをいれます。

施策を考えている側からすると鬱陶しいことこの上ないとは思いますが、それを承知で無表情で突っ込みを入れているのは、上述の引用部分が理由です。

大抵の場合、「盛り上げよう」という共通認識で進めた施策は失敗します。

たまに成功することもありますが、打率でいうと”まあ失敗でもなかったね”という程度の結果に終わる率が5割、”全然だめだった”が4割、”大成功!”はわずか1割くらいといったところでしょうか。

ほとんど失敗するか、そうでなくとも誰の記憶にも残らない施策になる理由は明確にあり、

・言語化ができていないため、チーム内で施策の目的が不明瞭な状態のまま共有され、「目的」「ターゲット」「ベンチマーク事例」「成功のキーファクター」などが担当者ごとにバラバラになる
・そのため施策として中途半端なものができあがる

というものです。

そもそも、ユーザーが盛り上がらない施策であれば、わざわざ実施する必要がないわけで、
マーケティングの観点からすると、常に盛り上がる(プレファレンスが高まる)施策をやるか、そうでないなら施策を撤廃すべきです。

しかし、言語化ができていないがゆえに、こういった「盛り上がる施策」を入れようとしてしまうというのは、事業運営をしたことがある人であれば(自分を含め)心当たりが大いにあるのではないでしょうか。

上記はアプリ運用などの話を念頭に書いていますが、例えばTVCM制作などを例にとっても、目的が明確に言語化されていないがゆえに
「おもろいけど効果がわからんCM」
というのが世の中にあふれかえっているわけです。

特に経験の浅いビジネスパーソンほど、言語化の重要性を軽視する傾向にあり、それに気づかずに「チームに考えが浸透しない」「思ったようなアウトプットが出ない」と悩んだりします。
それをチームメンバーのせいにするなどは、言語道断です。

思ったような成果が出ない、アウトプットがうまくいかないという場合は、まず言語化が明確にできているのかを振り返ってみるべきです。
大抵の場合、イシューが明確でなかったり、イシュー度が低い話をしていたということが明らかになってハッとするものです。

【スタンスをとる】~無理やりにでも仮説を出すことの大切さ

・強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てることが肝心
・「どんなデータが取れそうか」ではなく、「どんな分析結果がほしいのか」を起点に分析イメージをつくる

最後に紹介するのはこの、「スタンスをとる」という部分です。
イシューの見極めをするには、とにかくスタンスを明らかにして動くことが大切ということです。

例えば「もっと売上を伸ばさなきゃ」と考えたとき、様々なイシューが仮説として思い浮かびます。
「ユーザーが飽きたのでは」「UIがわかりづらい」「競合にユーザーをとられた」などです。

こういうとき、ほとんどのケースでもっとも最悪な手段は”みんなでブレストして仮説を決める”ということです。

ブレストといえば聞こえはいいものの、誰も明確なスタンスをとらずに抽象的な仮説を出すことに終始し、具体的なアクションが不明瞭に終わることがほとんどです。

なぜそうなるのかというと、繰り返しになりますが「ブレストの参加者の誰も、スタンスを明確にしていない」ということがほとんどだからです。

前述のように、一次情報を死守している人の集まりであればともかく、クリティカルな情報をもっていない人が意見を出し合っても、通り一遍で「答えを出しようがない」仮説が出るのがオチです。

逆に、ワークするブレストは
・構成員が、一次情報をひたすら集め、深い洞察力でスタンスをもった仮説がある人の集まりである
・ファシリテーター(または決定権者)にも明確なスタンスがあり、仮説を決定する権限がある

という部分がポイントです。

前者は、ブレストを通じて一次情報がより多く集まってくるためイシューに対する仮説を判断する精度が高まること、
後者は最終的にスタンスを判断できる構造があることが、ワークする理由です。

手法がブレストかどうかはさておき、ここではとにかく「具体的な仮説を立てる」ということがポイントです。

具体的な仮説がなければ、分析をしようにも進めようがありません。ふわっとした分析で議論が堂々巡りするのがオチです。

無理やりにでも具体的な仮説を立てていれば、検証ができます。
分析や調査を通じて、仮説の正否を判断することができます。

仮に仮説が間違っていたとしても、そこから新たな仮説が生まれ、最終的に強い仮説のあるイシューに辿り着くことができます。

究極的には、事業責任者の仕事とは、この「具体的な仮説のスタンスをとる」ことに集約されます。
人員配置や施策の判断など、すべての活動が責任者の決めた仮説にしたがって遂行されていくためです。

そのため、どんな事業課題に立ち向かうにせよ、事業責任者が明確なスタンスをとることが成否を分けるということです。

とはいえ、スタンスをとるというのは非常に大変なことで、知識や経験だけではなく、事業の成否をわける責任を負うだけの胆力も要求されます。
そのため、前述したような「一次情報を死守する」「相談する相手をもつ」といったことの重要性が、ことさら強調されるわけです。

【まとめ】

このnoteでは、本書の一部のエッセンスを抽出しているだけなので、伝えたいことがちゃんと伝えられているか甚だ不安ではあります。

ただ、不遜を承知でこのような注釈まじりの記事を書いているのは、冒頭にあるように「エッセンスを言語化して伝えたい」という理由です。

途中に自分の記事などを紹介しているのは、本書にもあるように「情報はつながることでより深く理解できる」ためです。
特にアプリ運営・デジタルマーケティングに携わる人にとって、より明確に理解しやすいように補足として入れました。

この記事を読んで少しでも興味が出たら、未読であればぜひこの『イシューからはじめよ』を読んでみてほしいと思います。

また、日々の実践を通じて、深く理解し成果を出すことにつなげてもらえれば、この記事の目的は十二分に果たせたと思う次第です。

以上

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三浦 慶介 | 事業グロースのひと
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