#23 痛みに対しての運動:変形性関節症
痛みに対して運動をすることは、痛みの低減や色々と良い効果があります。
もちろん、急な痛み・激しい痛み・夜も眠れない程の痛み、痺れや麻痺があったり、またそれが何日も続いたり…日常生活にも影響が出るようならば一度病院でチェックしてもらうことをお勧めします。
特に、診断の付いている慢性的な痛みに対しては少し動いてみるのをお勧めします。なぜなら適度な運動は痛みを抑える効果があるからです。
膝の痛み
痛みのある部位で多くあるのが、膝関節ではないでしょうか。
たくさん運動をしたら膝が痛む、たくさん歩いた次の日に膝が痛む、しゃがんだり立ったりして膝が痛む、こんなことがある方は多いのではないでしょうか。
膝の痛みに〇〇サプリメント!みたいな広告も見かけますし、人工の膝関節を入れる方や、変形性膝関節症に対しての手術をする方も多くいらっしゃいます。特に年齢を重ねるほどに、多くなってきます。
この膝の痛みの一つに、変形性膝関節症があります。
変形性膝関節症は膝の軟骨が損傷することで、痛みや腫れなどの症状が現れます。
下肢のアライメント(O脚やX脚)不良や、過去の膝の怪我(半月板損傷や前十字靭帯断裂・再建手術)などが原因とも言われています。
また、変形性の関節症は他の部位(股関節など)でも起こることがあります。変形性関節症は、とても複雑な疾患でもあります。
一方、画像診断で関節炎の変化が見られても症状がない(痛みがない)こともあるそうです。
治療方法
*治療方法・治療方針については、主治医とご相談ください。
手術
一つの治療法である外科手術:人工膝関節置換術は、痛みの強い患者様(かなり進行している)には、とても素晴らしい治療法の一つであるのは間違いありません。ただし、予後が全て素晴らしいとは言えない現状があるようです。
他には、骨を切る手術:高位脛骨骨切り術、関節鏡(内視鏡)手術
薬、注射
痛み止めの薬をとったり、ヒアルロン酸を関節内に注射したりするような、病院の先生による処置・処方となります。
運動
治療の方法として、「運動」というのも選択肢の一つとなります。
衝撃の小さな運動、水泳や自転車、ウォーキング、ガーデニングなど(活動)の運動からスタートで問題ありません。
また、運動をすることによる減量も一つの目的にもなってきます。
体重が減少することにより、膝関節への負担・負荷が少なくなります。さらに、体重減の際に、体脂肪が減ることが大きなポイントとなります。体脂肪の増加は、体内の炎症を上げるという、マイナスの効果があるからです。
全身の炎症が上がると、痛みの感じ方にも変化が出て(敏感になる)、より痛みが強くなってきてしまいます。
なので、体脂肪を落とす運動は、全身の炎症を抑えるという事と、直接的な負荷の軽減という二つの点で素晴らしいものです。
さらに筋トレには、関節自体の炎症も下げるようです。
この運動も闇雲に体を動かせばいいというのではありません。
自身が楽しい・好きなアクティビティー:外を歩く、水泳、サイクリング、ジムトレーニングや、昔やっていたけど今はやっていない事などを行なってみて下さい。
注意したいのは、目標を決めて(目標設定はこちらの記事をチェック)、少しずつ無理せず行う事です。
負荷は多過ぎても、少な過ぎてもよくありません。
例として、ウォーキングを運動として選択をするのなら、ウォーキングをした後や次の日に、強い痛みや・腫れが多く出るようであれば、少しやり過ぎなので、次回は少なく行います。それを数週間続けて、また距離や歩数を増やしてみて、膝がどのように反応するのかを見て判断します。
*不安がある場合は、医療従事者・専門家の指示に従って下さい。
この変形性関節症への運動療法や運動・エクササイズは各国の理学療法や医師の団体・グループからも支持をされています。
ただし、痛みがあったり、悪化してしまうのではないかという不安から運動に取り組むのが億劫になってしまうことがあります…
マインドセット
変形性膝関節症に対して、「骨と骨がぶつかっている」、「軟骨が摩耗して、損傷する」とも言われています。その為に、一度痛めると、時間と共に悪化していくという風にも考えられがちです…
悪くなった軟骨は元に戻らないと考えると、「軟骨を取り替えるしかない」→「手術が唯一の選択肢」となってしまうことがあります。(もう一度言いますが、手術は一つの素晴らしい治療方法であるのは間違いありません)
これらの事から、「膝への負荷が損傷の原因になる」→「膝に負荷が掛かる運動は避ける」→「活動する・動くのが怖くなってしまう」と、動かなくなってしまいます(動かなくなることは、全身の炎症を上げてしまったり、体重増となってしまうリスクが上がります)
ここで言えることは、運動は前述のように良い点があり、さらに軟骨に栄養を与える関節内の滑液が、運動することで与えられますので、軟骨の健康の為にも、運動する事が必要になります。また、"適切"な運動をすることで、機能低下や悪化、痛みの増大、手術適応になる、という研究はありません。
このような事を頭に入れておくことで、より前向きに変形性膝関節症と付き合うことが出来ます。マインドセットを変えてみませんか?
また、このポジティブな感情は痛みにも変化があります。
ネガティブな感情は、痛みの感受性を高めてしまい、痛みが強くなってしまいます。
「膝の為にも動く事、運動は大切なんだ!」→「少しずつ目標に向かってトレーニングをしよう!」→「より活動的になり、自身もついて、痛みも低下」
このようないいサイクルになります!
炎症
運動のパートでも全身の炎症は良くないとお伝えをしましたが、全身の炎症を抑えるという意味では、規則正しい生活、しっかりとした十分な睡眠やバランスの取れた食事をする(超加工食品を避ける、野菜やフルーツをとるなど)やストレスをコントロールする、という事もとっても重要になってきます!
最後に
運動が痛みに対してプラスの働きをしてくれるということを、特に変形性膝関節症に関して説明をしましたが、他の関節の変形性関節症にも同じことが言えると思います。
ポジティブに、楽しく体を動かすというのが、とても重要になりますので、是非実践してみて下さい。
*今現在、痛みがある場合は一度医療機関を受診して下さい。
*運動も、医療従事者または専門家に一度ご相談下さい。
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