見出し画像

チンチャンチョン処女卒業🇮🇷

サッカー以外で大声を出したのは何年ぶりだろうか。

話やニュースを耳にする度にそんなの受け流せば良いのにと軽んじていたが、いざやられてみると感情的になってしまうものですね。

夕暮れ時。イラン、シラーズのカフェで一息ついていた折、向かいの席に5人の家族連れが。その中の10歳前後くらいのガキンチョが僕を見るなりチンチャンチョンと口にした。なにぶん生で聞くのが初めてなもので、最初はもしかしてと思って聞き流す。
しかし、その後もニヤニヤしながら僕の方を振り返り、何度も口にしているのは確かだった。
気付けば僕は自分でもビックリするくらい大声でWhat did u say!!と発していた。ガキンチョはキョトンとしているので、2.3回繰り返して、say againと付け加える。
目を丸くしてこちらを見ている両親は最初ペルシャ語で何か僕に発した後、両手で顔を覆ってなんか謝罪じみたことをしている。

お前らじゃなくて子供に謝らせろ。って何度言っても伝わっていないようで、他の客が彼らは英語が話せないよと僕をなだめにきた。
じゃああなたがペルシャ語に訳して伝えてくれよとも思ったのだが、彼を巻き込むのもなんなのでこらえる。

僕がなにより一番腹が立ったのは、この両親がガキンチョを叱らないことであった。
ガキンチョなんて何も考えずにノリで言葉を発してるのはこっちだってわかっている。特に悪そうな言葉は使いたくなるものだ。
しかし、これがイランスタイルなのか知らないが、両親はずっと顔を覆って俯いてるだけ。
仕方ないから両親に代わって僕が子供に説教することにした。どうせ英語通じないからもう日本語で。おい、お前次言ったらマジでどつき回すぞガキみたいなことを言い続けて睨みつける。説教というより恫喝だ。

とりあえずこのガキンチョには「チンチャンチョンって言ったらヤバいんだ」ということが伝わればそれでいい。

それにしても、自分自身こんなに怒ると思わなかった。きっとどこかで「自分は他のアジア人の様にナメられない」という驕りがあったのだろう。極東の島国で外人風と持て囃され、勘違いして生きてきたしっぺ返しを食らったのだ。
そんな自分自身への恥ずかしさが怒りに変わった面もあったに違いない。

本当はそのまま近くで評判のレストランに寄ろうと思っていたのだが、とてもそんな気にもなれず帰路に着く。

道すがら、路上に停められた車のバックガラスに指でなぞられた「BTS♡」の文字が。
目の前の光景が虚構と現実をない交ぜにし、僕を酷く混乱させたのだった。

アラビア文字は数字すら読解不能なのがハードである

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?