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趣深い日本の色彩 #29 菜の花色
こんばんは。グラフィックデザイナー、カラリストの藤田です。
菜の花に関する色のお話。
実用的な黄色
アブラナ科アブラナ属の『菜の花』。
名前を聞くだけで、どんな植物か思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。
教科書に載ってることも多く、『朧月夜』の歌い出しにも使われています。
なによりナタネ油は調理油としてよく見かけますね。
パッケージに描かれているので、無意識に目に入っていることも多いと思います。
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花の色、油の色
今回紹介する菜の花色は、名前そのまま「花の色」を指します。
春を告げるような、少しだけ緑がかった明るい黄色。
色名としては比較的新しくできたものと言われています。
と言うのも菜の花には、花とは別に、古くから使われていたナタネ油を指す『|菜種油色』という色があります。
今のナタネ油は精製技術も高まり明るい黄色をしていますが、当時はかなり緑みのある鈍い黄色をしていました。現在も色名として使う場合は、この色を指します。
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菜種油は今と同じく食用として使われていた他、夜に明かりを灯すための灯油としての役割がありました。
食用として、なにより「夜の時間を活用するための重要なアイテム」として、油の方がフォーカスされ、花より先に色名となったのも納得です。
同じ植物で2つの色名がある植物って珍しいかもしれませんね。
藍染のような染め具合で名前を変える色や、桜色のような同じ植物でも種類が違って複数あるように感じる色などはありますが、「花とそこから生まれる物質」で異なる色名がある植物は、そんなにないのかなと感じます。
ちなみに、この時期(3月中旬~4月上旬)の雨が降りやすい気候を春雨前線と言いますが、別名で「菜種梅雨」と呼ぶこともあるそうです。
菜の花の開花時期と被っているのが由来とのこと。
春に花開く黄色の植物のお話でした。
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