自分と他者を受け入れる気持ちを育む『絵本セラピー』
はじめに
つい先日、うちのブックカフェで第二回の「絵本セラピー」を絵本セラピストの方に開催していただいた。第一回、二回を通じて感じたことをここに書き記すと同時に、「絵本セラピー」というものがあること自体をnoteを見ている人に知っていただけたらと思う。素晴らしいものはどんどん広まって欲しいのである。
「絵本セラピー」って何?
僕自身、絵本セラピーというものを知ったのは去年である。知り合いからそういうものがあることを聞いた直後ぐらいに、偶然うちのブックカフェに絵本セラピストの方がご来店されて、「ここで絵本セラピーをしたいです」と申し出を受けて快諾したのが始まりである。
絵本セラピーとは、「絵本セラピスト」が行う、読み聞かせ+グループワークのようなものである。
また絵本セラピストとは誰でもそう名乗れるわけではなく、「絵本セラピスト協会」というものがあり、そこで講座を受けて試験をパスしてから初めて絵本セラピストとして活動ができる。
活動をし始めてからもレポートを書いて提出したりもするようで、別個で活動しながらもきちんとした取り組みをなされている方たちなのである。
絵本セラピーでは何をするの?
僕はこんな記事を書いているが絵本セラピーについて通暁しているわけではなく、うちのブックカフェで行われた第一回、第二回のみしか知らないので、あくまでその二回のイベントについての内容となることをあらかじめ断っておきたい。
まず絵本セラピストの方が、数多くの絵本のなかからテーマを決めて5冊選んでくる。そのテーマは絵本セラピストさんが自由に決められるもので、それぞれに特色が出るのだろうと思う。
どの絵本を選ぶかもそうだが、どんな順番で読むか、どうしたら自分の伝えたいメッセージが伝わるか……、などなど考えに考えて5冊が選ばれる。
その5冊を読み聞かせて、参加者の方たちが感じたことや思ったことをシェアしたり、また絵本セラピストの方が用意した絵本の内容に関連する質問に答えたりして、絵本を中心にしたグループワークを行う。
「感想をシェアする」「質問に答える」とあるが、発言は決して強制的なものではなく、
「言いたくない人はそもそも発言しなくてもいい」
「感想をうまく言葉にできなくてもいい」などなど、一人一人の意見や性格を尊重しており、みんなが安心して参加・発言できるような配慮がなされている。
そういった気配りがなされているためか、終始あたたかく優しい雰囲気のなかで、参加者の方々はそれぞれに思ったことや感じたことを自由に発言し、お互いの意見を受け止め合っていた。
自分の発言が他の人に気づきを与えたり、他の人の意見に自分がハッと心を動かされたり、また自分の感想を他の人たちが大事に受け止めてくれる、ということが参加者の方々の心を癒しているのだと思った。
その癒しが、絵本"セラピー"というところに繋がったのかなと個人的には感じた。
ただ絵本を読んで聞かせるだけなら、「読み聞かせ会」となるし、
絵本の感想を言い合うだけなら「読書会」となるわけで、
絵本セラピーの特色は、お互いがお互いの感想を受け止め合うことで生まれる「癒し」なのではないかと感じた。
絵本セラピーの必要性について
個人的に思うことは、上記にも書いたが、絵本セラピーではどんな意見や感想も尊重されるので、それぞれが安心して発言することができる。
一方で、僕たちが受けてきた学校教育というものは、
「正しいことを言わなければ間違い」
というもので、この絵本セラピーの真反対のスタンスと言える。
そういう教育を受けてきた僕たちはいつの間にか「正しくなければ間違い」と思うようになり、自由な感想や意見を持つ機会がなくなり、狭い価値判断のなかで息苦しさを覚えるようになるのだ。学校教育を終えて、自分の力で「正しくなければならない」という固定観念を外すことができる人もいれば、大人になってからもそのバイアス(偏り)から逃れられない人もいる。
そして絵本セラピーは、まさにその「正しくなければならない」という観念を和らげてくれるものなのである。
絵本を読んでもらい、その感想を自由に発言する。
自分がどんな感想を言っても言わなくても、周りの人が耳を傾けて受け入れてくれて、言い終わればあたたかい拍手をしてもらえる。
「正しくなくていい」
「上手に言えなくていい」
「素直に発言すればいい」
「あなたはあなたでいい」etc.
そういうあたたかい雰囲気のなかで、人と人が関わっているうちに、「正しくなければならない」といういつの間にか植えつけられていた観念が、徐々になくなっていき、やがてそれが自分と他者を受け入れるための人としての大きな器に変わっていることに気がつくのである。
そしてまさに今、自分と他者を受け入れることのできる人たちがこの世界には必要で、自分と他者を受け入れる心や気持ちを育んでいる絵本セラピーは、単なる絵本のイベントではなく、世界をより生きやすい場所にしている素敵な活動なのである。
終わりに
絵本セラピーを通じて、一人でも多くの人が、自分と他者を受け入れられるような気持ちや心を抱いてくれたら、と切に願うと同時に、このような活動をされている方々がおられることに深く感謝したい。
興味のある方はぜひ体験してみてください。
↑絵本セラピーの発案者の方の著作。