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【10限目】教師一年目の出来事から学んだこと

2020年6月4日

新型コロナウイルスの流行で、学校の始まりが遅くなりましたが、いつもと違ったスタートになりました。特に、新任の先生方は、大学で学んだことや、教育実習で学んだことに加え三密を避けながらの感染予防や熱中症対策も加わり大変なスタートです。

私の50年前のスタートは、滋賀県の小さな町の中学校の体育教師からでした。三年生の担任と各学年4クラスの女子全員の体育の授業に合わせて体育だけでは時数が足りないので自分のクラスの社会も担当することになりました。

初めて出会った8歳ちがいの生徒たちは、私よりも大きな子もいて、興味深く私をみているのです。後から聞いた話ですが、自分達の進路を決める大切な一年間を、女の先生、新任、しかも、大阪から来た大学を出たばかりの教師で大丈夫なのか?と、思った子や、珍しい若い女の先生が来た!と、思った子もいたそうです。

体育の授業は、女の体育の先生が珍しかったのか、よく話を聞いて楽しんで頑張ってくれましたが、なかなか難しかったのが社会の授業と学級会活動でした。三年生なので修学旅行(箱根・東京)が4月の連休前にありました。

学年の先生方はよくしてくださり助けてもらいましたし、同じ体育の先生にも体育の指導の仕方、進め方の指導以外にも生徒との接し方などその都度教えて頂き、スタートとしては、とても恵まれた環境でした。


修学旅行の1日目、箱根の旅館で、夕食になっても私のクラスのちょっとやんちゃな野球部のK君が来ていません。

呼びに行こうとしたら、赤い顔をしてやってきました。熱もありそうで、しんどそうだったので様子を聞くと、大丈夫、カバンの中に薬があるから後で飲むと言うので私は、K君のカバンの中の薬を取りに部屋に行きますと、そこには薬ではなくお酒が入っていました。

私は驚いて主任に話しますと、食後、K君が呼ばれて主任が話を聞きますと、イモズル式に十人ほどがそのお酒を飲んだということで、夜遅くまで正座をして、主任をはじめ先生方の話を聞きました。

K君は、バスに酔ったときに飲んだらいいということで、親から渡されたと言っていましたが、本当かどうかは分かりません。私は、子供たちの並んでいる一番端に一緒に正座をして聞いていました。

その中で主任が「君ら、理科室にアルコール漬けの標本があるなあ、なんでアルコールに漬けてあるか分かるか?標本がそのままの状態で保存するためにそうしてあるんや!君らはこれからドンドン伸びていく頭にアルコールを入れたらそのままで止まってしまうぞ!」と、言って説教をしました。

その時私は何故か納得して、子供と一緒に泣いている自分がいました。まだ、1か月も経っていないのに、私にとっては大きな出来事でした。


連休が明けて、再び子供の前に立った時、今までとはちょっと子供達が変わっていました。K君もこちらを向いて私の話を聞いていました。

その時、クラスを受け持った当初から私は子供達と向かい合ったとき、どう思われているだとか、どんな反応をするだろうかなどと、気にしていましたが、まず、22年間生きてきた事を肯定して、楽しい時は、楽しい。悲しい時は、悲しい。いい時には、褒め。ダメだと思う時は、だめだと言う。怒っている時は、怒ろうと思いました。

私のサインがハッキリしていたら、子供達にも、きっと伝わりやすいと思ったからです。受け取り方は、それぞれ違うかもしれないけれど、発信する私がぶれないようにしようと思いました。

それからは、迷わずに子供達と向かい合えたように思います。ときどき、子供に向かって「信じられなぁい!」と、叫ぶ時もありました。今、思えば、教師が子供に「信じられなぁい!」って、どういうこと?いいのかな?と、思うこともありましたが・・・

ある日、朝の会で、目を腫らしている子がいて「めばちこ。出来たん?」と、聞くと、みんなが大笑いをして「めばちこやてぇ~。」と、私を笑います。「みんなはどう言うの?」と、聞くと「目いぼや!」と、私はみんなの方を見て「目いぼやてぇ~。」と、笑いました。

そんな日常を積み重ねてクラスの繋がりが出来てきました。今でも、子供達との交流が続いています。今は、子供達が私を気遣ってくれます。

あれから、あっという間の50年でした。


20200604 油絵(トマトとビン)

「トマトとビン」

【編集担当より】
はじめの一歩は、誰もが初心者です。いろいろな失敗や努力を積み重ね、一歩一歩望んだ道を歩んでいくことでしょう。思い付きで始めたNoteももう10限目となりました。50年間歩み続けた姿を面と向かって聞くこともありませんので(特に息子は母親の話をゆっくり聞かない・・・)、このNoteが長く積み上げた歩みの一つひとつを知る機会となり良かったなと思っています。それでもあまりかまうとしつこいので、記事のやり取りはすべてメールですけれども。

油絵ですが、ようやく題名が送られてきました。普通すぎて削除しようかと思いましたが、記載しておきます。皆様にご覧いただくために、絵も上達することでしょう。これからもお付き合いの程、お願い申し上げます。

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