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「アルムナイ採用」なぜ地銀は退職した出戻りを歓迎するのか?

不思議なことに、地方銀行は退職した元行員を再び歓迎しています。

このユニークな「アルムナイ採用」の背景には何があるのでしょうか。

アルムナイとは「卒業生」や「同窓生」を示す言葉で、定年退職者以外の退職者を指す言葉としても使われています。

業界固有の人手不足と高い退職率に直面する中、経験豊かな元行員がもたらす即戦力としての価値は計り知れません。

本記事では、地銀が退職者を再び受け入れる理由、その影響、成功の鍵を詳しく掘り下げています。

地銀でのキャリアに新たな視点をもたらすこの動きには、どのような意味があるのでしょうか?


アルムナイ採用とは

アルムナイ(alumni)は、英語で「卒業生」や「同窓生」という意味です。

アルムナイ採用とは、「過去に組織で働いていた元従業員を再度採用する」ということを示します。

アルムナイ採用は、特定の業界では一般的な採用ともいわれています。

例えば、企業が急速に成長しており、信頼できる経験豊富な人材が急務である場合や、特定の専門知識を持つ元従業員が市場に少ない場合などです。

具体的には、成長性の高いIT業界や、専門的なコンサルティング業界、人材が不足している医療・福祉業界などでは効果的な採用として定着しています。

元従業員ならば、既に組織文化や業務に精通しているため、短期間で高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。

また、外部で新たなスキルや経験を積んでおり、それが組織に貢献しやすいと考えられる場合にも有効です。


地方銀行のアルムナイ採用とその背景

ただ、地方銀行のアルムナイ採用は、他の業界には見られない独特な現象でしょう。

多くの地方銀行が直面しているのは、労働力不足です。

高い退職率を背景に行員数は年々減少しているため、経験豊富な元行員の再雇用は非常に価値があるとされています。

出戻りを歓迎する理由の一つとして、既に銀行業務に精通しているため、再教育の必要が少なく、即戦力として活躍できる点が挙げられます。


地銀における退職の主な理由

地方銀行を離れる行員の多くは、過重なノルマやキャリアの見通し、または仕事の単調さから退職を決意しているといわれています。

実際に、私が地方銀行を退職した理由でもあります。

また若手行員の中には、もっと多様なキャリアを求める声が強く、地方銀行特有の制約にフラストレーションを感じている人も多いと思います。

この問題は地銀における人材流出の主要な原因でもあり、行員の定着を図るための改善策が急務なのは間違いないでしょう。


地銀の再雇用のメリット

アルムナイ採用が地銀にもたらすメリットは多岐にわたると考えます。

例えば、既存顧客との良好な関係を再構築しやすい点や、過去の経験を活かした新しいアイデアの提供などはメリットになりやすいでしょう。

元行員ならば、組織文化や内部のワークフローを熟知しているため、業務の効率化にも大きく貢献するはずです。

新たな視点と経験を持ち帰ることで、新たなプロジェクトの推進や業務プロセスの改善に繋がり、組織全体の成長を促進する可能性もあります。

長期的にはこれが顧客満足度の向上にも繋がるでしょう。


地銀に戻る元行員の動機は?

個人的な成長や外部での経験を積んだ後、地方銀行に戻る動機はなんでしょうか。

彼らは外部で得た新しいスキルや異業種での経験を銀行に持ち込み、業務の質を高める可能性を秘めています。

これに加えて、地方銀行のビジネスモデルや戦略の変化も大きな要因となっていると考えます。

特に、ホールディングス制や持株会社化を進める地方銀行が増えている点は、元行員にとって新たな魅力となっているのではないでしょうか。

ホールディングス制を採用することで、地方銀行は金融だけでなく、不動産や保険、投資事業など、多角的なビジネスを展開できます。

このような環境は、外部で異業種の経験を積んだ元行員が、新しいアイデアやスキルを銀行に持ち込むことを期待され、金融以外の領域での収益確保を目指す戦略に貢献できる可能性が高まります。

さらに、地方銀行が多角化戦略を進める中で、異業種からの視点を取り入れることは、革新的なサービスの開発や顧客基盤の拡大にもつながり、競争力の向上に寄与すると考えられます。

従って、元行員が地方銀行に戻る動機は、単なる個人的なキャリアパスの選択にとどまらず、金融業界全体の成長や地域社会への貢献にも影響を及ぼす可能性があります。

これが地方銀行がアルムナイ採用を積極的に行う理由の一つとして考えられるのではないでしょうか。


アルムナイ採用の展望

地方銀行がアルムナイ採用を成功させるには、退職した行員との継続的なコミュニケーションを保つことが必要でしょう。

彼らが「組織に戻りたい」と思うきっかけを作り出すことが出来るかが大切ではないでしょうか。

また、彼らが持ち帰るスキルや経験を最大限に活用するためのポジションを用意することも重要だと考えます。

元行員を再度雇用できれば、更なるビジネスチャンスを追求する可能性や選択肢が増えると思います。

今後、アルムナイ採用は地方銀行が競争力を保つための重要な戦略として活発化するのではないでしょうか。

ただし、この戦略を具体化するには、人事部門の強化と退職者データベースの整備が必要です。

さらに、出戻りする行員を一定のポジションに就けることで、彼らの能力を最大限に活かすための組織構築も必要だと考えます。

注意すべき点は、アルムナイ採用が既存の行員のモチベーションに影響を与える可能性です。

再採用される元従業員が昇進や重要なプロジェクトに関与すると、現在の従業員が見過ごされていると感じることがあり得るのではないでしょうか。

よって既存の行員のモチベーション維持にも気を付ける必要があるでしょう。


まとめ

アルムナイ採用は、特定の業界で元従業員を再度採用する手法として活用されています。

この採用は、特にIT業界やコンサルティング、医療などでは一般的な手法の一つとされていました。

しかし、それが労働力不足が顕著な地方銀行でも一般的な手法になってくるかもしれません。

元行員は業務プロセスや組織文化を既に理解しているため、再教育の時間とコストを節約しながら即戦力として活躍してくれるのではないでしょうか。

特に地方銀行などでは、ホールディングス制などの持株会社化によって金融以外の収益確保を目指す傾向にあります。

経験豊かな人材が再び歓迎される理由は、異業種で培った専門性などが即座に価値をもたらす可能性が高いからです。

よって、今後はアルムナイ採用が地方銀行では一般的な採用方法として定着するのかもしれません。

銀行を退職して失敗したと思っている元銀行員の方も、再び銀行に戻れるかもしれません。

ただ、単なる労働力の補完人材として採用されるのであれば、結局また辞めてしまう可能性もありますので、そこは見極める必要があるでしょう。

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