確率論:「話が噛み合わない人」と出会う確率②
人間関係において、どうしても「この人とは話が噛み合わない」と感じる瞬間があります。
そうした人々と出会う確率について、統計学や確率論を使って説明します。
前回の記事では、確率論を用いた人間関係の分析について解説し、特に「話が噛み合わない人に出会う確率」を算出する計算方法を紹介しました。
今回は、その続編として、Excelを使ったモンテカルロ法によるシミュレーションを実施し、ランダムなサンプルを何度も生成して結果を分析する方法を解説します。
複雑な人間関係や予測不可能な状況に対して、どのように確率を推定し、意思決定に役立てるかの一助になれば幸いです。
確率論とモンテカルロ法
前回の記事では確率論の計算式について述べました。
今回のモンテカルロ法も似たような話と思うかもしれません。
確率論とモンテカルロ法は、結果として同じ確率を導くことがあるのですが、アプローチの違いが重要です。
両者は以下のように異なりますが、理論上は、結果が同じになることが多くなるはずです。
確率論の基本計算
確率論では、固定された前提をもとに、事象の発生確率を計算します。
例えば、「少なくとも1回、話が噛み合わない人に出会う確率」というものは計算できます。
例えば、20%の確率(p)で「話が噛み合わない人」と職場で、10回(n)の接触機会があれば以下の計算式で算出できます。
話が噛み合わない人に一度も出会わない確率
(1-p)^n
少なくとも1回出会う確率
1-(1-p)^n
計算すれば、少なくとも1回出会う確率は 約89% です。
ただし、この計算方法は、理論的な確率を数学的に計算しており、ランダム性は考慮していません。
つまり、設定した条件のもとで1回の計算で結果が得られるのが特徴です。
モンテカルロ法によるシミュレーション
モンテカルロ法は、ランダム性を取り入れたシミュレーションで、実際のランダムな事象の発生を繰り返しシミュレートすることで確率を求めます。
計算式を直接使うのではなく、ランダムな結果を何度も生成し、最終的に確率を推定します。
各シミュレーションでランダムに「噛み合う」「噛み合わない」を生成。
その結果を10,000回など大量に繰り返して、全体の傾向を集計して確率を推定します。
例:20%の確率で話が噛み合わない人がいる場合、10回の接触機会を10,000回繰り返し、毎回少なくとも1回「噛み合わない人」に出会う確率を集計します。
この場合、結果はおそらく理論的な計算と近い 約89% に収束します。
両者の違い
「確率論による計算」と「モンテカルロ法による計算」は、結果は似るかもしれませんが、アプローチが違います。
確率論
事前に決められた確率と固定された条件で、1回の計算で結果を得る。モンテカルロ法
ランダムなシミュレーションを何度も繰り返して集計し、確率を推定する。
なぜモンテカルロ法を使うのか?
モンテカルロ法は、複雑なシナリオやランダム性のある状況に適しています。
例えば、確率が変動する場合や、複数の要因が絡む場合に、モンテカルロ法を使って現実に近いシミュレーションを行うことができます。
一方、確率論はシンプルで予測可能な問題に対して非常に有効です。
例えば、単純な確率計算や固定された条件の問題に使われます。
モンテカルロ法
確率論だけでは予測できない複雑な人間関係の動態を理解するために、シミュレーション手法が有効です。
ここでは、モンテカルロ法を用いたシミュレーションの具体的な手順とExcelでの実装方法を説明します。
モンテカルロ法とは、ランダムなサンプルを大量に生成し、統計的な分析を行うことで、複雑な確率問題を解決する手法です。
人間関係のシミュレーションでは、ランダムに「合う」「合わない」を決定し、その結果を繰り返すことで確率を推定します。
簡易シミュレーションのステップ
必要なデータの設定
合わない人の割合 (p)
接触機会の数 (n)
シミュレーション回数 (m)(例: 10,000回)
シミュレーションの実行
各シミュレーションでn回の接触を行い、その中で少なくとも1回「合わない人」に出会うかを判定します。
結果の集計
m回のシミュレーション中、何回「少なくとも1回合わない人に出会ったか」をカウントし、確率を算出します。
Excelによるモンテカルロシミュレーション
セル入力
A1: 合わない人の割合 (p)
B1: 20%
A2: 接触機会の数 (n)
B2: 10
A3: シミュレーション回数 (m)
B3: 10,000回
A4: シミュレーション結果
シミュレーションの実行
A5からA10004: 各行に対してシミュレーション結果を記録します。
シミュレーション結果の出力
A4に結果を表示します。
算定するためには、ランダムな「合う」「合わない」を生成する必要があります。以下の手順で設定します。
設定手順
B列からK列(n=10回の接触)に「合う(合)」または「合わない(不合)」をランダムに生成します。
B5に以下の式を入力し、K5までコピーします。
=IF(RAND() <= $B$1, "不合", "合")
L5に「少なくとも1回は不合」の判定を行います
=IF(COUNTIF(B5:K5, "不合")>=1, 1, 0)
A5にシミュレーション結果を記録します。ただ、数字が表示されるだけなので、フォントの色は白色で消しています。
=L5
A5からA10004(10,000回)までのセルに上記の式をコピーします。
A10005に以下の式を入力し、合わない人に少なくとも1回出会う確率を計算します。
=AVERAGE(A5:A10004)
セルA10005に表示される値がシミュレーションによる確率です。理論的な計算と比較して近似値かを確認してみましょう。
今回はA4に以下の式を入力して、シートを最下部まで移動して確認しないように設定しています。
=A10005
上表の場合、シミュレーション結果は89.3%と、確率論と近似値になりました。
では、数字を入力し直してみましょう。
このように、同じ条件だとしても確率は微妙に変わりますが、概ね理論値の近似値(約89%)を示すはずです。
以下の添付ファイル(Excelベース)を参考資料として確認ください。
同じ条件下では、確率論による計算とモンテカルロ法によるシミュレーションで導かれる結果は 理論的には同じになる ことが多いです。
違いは、計算方法(理論計算 vs シミュレーションによる推定)です。
確率論は数学的な理論計算。
モンテカルロ法はランダム性を活かしたシミュレーション。
シンプルな問題では、どちらの手法でも似た結果が得られますが、モンテカルロ法はより複雑な問題に対して有用です。
まとめ
確率論を使えば、自分とは合わない人に出会う確率をある程度予測することは可能です。
しかし、最終的には統計だけでなく、感情や直感をもとにした柔軟な対応も必要かもしれません。
人間関係を理解するためには、確率論とともに心理学的な要素も取り入れることが有効だと、私は思っています。
そのため行動経済学のような分野も、色々と研究していますので、是非その分野の記事も読んでみてください。
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