国債の償還と、将来世代の負担について
今回は、フォローしているnoterの「海尾守」様からの依頼に対する回答記事です。
noteのコメントで返信したかったのですが、500字以内に収まらないと判断し、記事にいたしました。
経緯を説明します。
(海尾さん、間違っていたら申し訳ございません!)
記事執筆の経緯
1.海尾さんの上記のブログ記事のコメント欄に、B様から以下のご質問。
2.これに対してコメント欄で返信したかった海尾さんですが、noteの制約(コメント500字以内)により、別記事をアップ。
3.以前、海尾さんの記事を引用させて頂いたご縁があり、上記記事の内容の検証依頼がありました。
記事の検証
私のような若輩者が「検証」という表現を使うのはおこがましいのですが、ここでは「記事について考察した結果」という意味で使わせていただきます。
結論として、海尾さんの記事は、基本的な論点をよく押さえており、問題ない内容と思います。
以下、なぜ「内容は問題ない」と考えたかについて述べます。
「何世代にも渡って借金を残すのか」について
海尾さんは「国債の償還は、将来世代の負担にはならない」との見解を示しています。
これは私も、ほぼ同意見です。
一般的に、国債償還の問題は「世代間負担」として議論されがちです。
しかし、現実的には日本を含む多くの国で国債の大半は「継続して借り換え」を行う形で対応しています。
このため、「次世代に負担を残す」との指摘は必ずしも全体を反映していないと考えます。
基本的に国債は永久債
国債の多くは再発行が前提で発行されており、永久債という考え方です。
永久債 は元本の償還期限がなく、利払いが継続されることが前提です。
永久債の価値は、将来にわたる一定の利払いキャッシュフローを割り引いて求めます。
このために、価値算定はDCF法を使用します。
年利率(クーポン率)を C、割引率を r とした場合、永久債の価値 P は以下の式で表されます。
P = C / r
この式は、将来の利払いが一定かつ永続する場合に適用でき、利払いが割引率 r に対して安定的に支払われ続けることを前提とします。
<計算例>
利払いが毎年100万円で割引率が5%の場合、永久債の価値は以下のようになります。
P = 100 / 0.05 = 2,000万円
数学的に示す
将来世代の負担を考える際に使用されるのが「債務比率」です。
この比率は、国の経済規模に対してどれだけの債務があるかを示します。
GDP対債務比率を D とし、GDPを Y 、政府債務(国債等)を B とすれば、以下の式で表されます。
D = B / Y
ここで、将来の政府債務 B' とGDP Y' は、将来の経済成長率 g と実質利子率 rに基づいて変化すると仮定すれば、以下の数式になります。
B' = B (1 + r)Y' = Y (1 + g)
将来の債務比率 D' は以下のように表されます。
D' = B' / Y' = (B (1 + r)) / (Y (1 + g))
現在の債務比率 D = B / Y と比較すると、比率が将来にどう変わるかは以下のように表されます。
D' = D × ((1 + r) / (1 + g))
ここで重要なのは、将来の経済成長率 g と実質利子率 r の関係です。
成長率が利子率より高い場合 (g > r)
債務負担は相対的に減少する可能性があります。これは、次世代が負担を軽減できる状況です。成長率が利子率より低い場合 (g < r)
債務比率は増加傾向となり、将来世代の負担が重くなる可能性があります。
したがって、成長率 g と利子率 r の関係が、将来負担の判断に重要かもしれません。
結論
国債は償還するのではなく、再発行を前提に継続していくのが、一般的です。
よって「何世代にも渡って借金を残すのか」に対しては、「それが普通です」が適切な回答ではないでしょうか。
また、経済成長率が実質利子率を上回る場合、相対的な負担は軽減される可能性があります。
したがって「次世代が負担を背負わされる」と結論付けるのは、論理が飛躍しすぎかもしれません。
もちろん、「日本は、これ以上成長しない」という前提に立てば、デフォルト(破綻)する可能性はあるので、過度な国債発行に依存すべきではないという議論は成立するかもしれません。
しかし、財務省?の官僚が「もう日本は成長する見込みがないから、国債は発行しない方がよい」というのは、本末転倒です。
むしろ「経済発展の一環として役立つように発行し続けます」、と言って欲しいものですね。
海尾さん、残りの質問の「貨幣価値が下がり続けいずれ円の信頼が無くなりジンバブエドルのようになる」「日本の借金は1300兆円で20年分の税収に相当する」についての回答も、長くなりそうなので別記事にします!
今回のブログでの質問からの学びも、理解を深める上で非常に有用だと、改めて気づきました。
ありがとうございました。