リスクの数値化:標準偏差と懐かしの√(ルート)について
投資を検討する際、リスクを数値化する方法として「分散」と「標準偏差」があります。
これらは統計学の概念ですが、ファイナンス理論では分散よりも「標準偏差」がリスク指標としてよく用いられます。
本記事では、その理由と計算方法について解説します。
分散と標準偏差
まず、分散について理解しておきましょう。
分散とは、あるデータが平均値の周りにどれほど散らばっているかを示す指標です。
計算式は以下のとおりです。
計算式:分散 = Σ(各データ - 平均値)² / (データ数 - 1)
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
分散の特徴
分散とは、その名の通り「散らばり」です。
以下、その特徴です。
• 数値が大きいほどデータが広く散らばっていることを意味します。つまり、「幅が広い」ということは「リスクが大きい」という意味です。
• ただし、単位が元データの二乗になるため、直感的な解釈は難しい。つまり、数値を二乗しなければ平均との距離を測れない特性があるため、どれくらい乖離しているか、単位では判断しにくいということです。
分散と単位の問題
例:身長データの分散
仮に、ある集団の身長データが以下のような場合を考えます。
• 平均身長:170 cm
• 各人の身長:160 cm, 165 cm, 175 cm, 180 cm
分散の計算式を使うと次のようになります。
計算式
分散 = Σ(各データ - 平均値)² / (データ数 - 1)
<計算過程>
1. 各データと平均値の差を計算
• -10, -5, 5, 10
2. 差を二乗
• 100, 25, 25, 100
3. 二乗値の平均(データ数 - 1 で割る)
• (100 + 25 + 25 + 100) / (4 - 1) = 83.33
したがって、分散は 83.33 cm² です。
しかし、分散の単位が cm²(平方センチメートル)と表されるため、多くの人は「どの程度ばらついているのか?」直感的に理解しにくいと思います。
一般的に、身長のばらつきを「cm²(平方センチメートル)」で表現する場面は、ほぼありません。
多くの人は身長を表すときはcm(センチメートル)を使うでしょう。
分散は二乗して計算する必要があります。
そのため、データの広がり具合を感覚的に捉えるのが難しくなります。
標準偏差での解決
この問題を解決するために、分散の平方根を取って元のデータと同じ単位に戻す標準偏差が用いられます。
計算式は以下の通りです。
計算式:標準偏差 = √分散
分散から標準偏差を求めるときは、平方根(√ ルート)を使います。
ここで、中学生の頃に勉強したであろう平方根(√ ルート)が登場します。
「中学生時代なんて、昔すぎて忘れた」という人もいるかもしれませんので、平方根(√ ルート)について簡単に説明しておきます。
平方根とは、ある数を二乗して元の数になる値を指します。
数学的には次のように説明しています。
√x = y ( y² = x)
• 記号: 平方根は「√」を使って表します。
• 例: √9 = 3 なぜなら、 3² = 9 だからです。
では、先ほどのデータで計算した分散 83.33cm²の平方根を計算します。
標準偏差:√83.33 ≒ 9.13
となり、ばらつきが「約9cm」であることが分かります。
これなら「身長は平均170cmを中心に約±9cmの範囲に分布している」と表現でき、直感的に理解しやすくなります。
なお、計算が難しいという方はExcelを使用すれば、簡単に計算できます。
「SQRT」という関数を使えばすぐに計算できますが、一応私が作った簡単な計算ファイルを添付しておきます。
こちらのファイルを使えば、下図のように一瞬で計算してくれます。
また最近の電卓は、ルート計算可能な種類が豊富なので、電卓でも良いと思います。
標準偏差を用いる利点
単位の一致
標準偏差は元のデータと同じ単位で表されるため、結果を直感的に理解しやすくなります。一方、分散は単位が二乗されているため、解釈が難しくなります。
ばらつきの評価
データが平均値の周りでどの程度散らばっているかを示します。標準偏差が小さいほどデータは平均値の近くに集中し、標準偏差が大きいほどデータは平均値から離れて散らばっていることを意味します。
標準偏差を使えば、元データと単位を揃えられるので、データのばらつき具合を、直観的に理解しやすくなります。
ちなみに、学生時代によく耳にした「偏差値」も標準偏差の概念を使った指標です。
なぜ標準偏差が重要なのか?
ファイナンス理論では、リスクを測る際、データの散らばり具合(分散)を直感的に把握するために、標準偏差を使います。
中学生で学習した平方根(√ ルート)が登場しますが、Excelなどの計算ソフトを使えば簡単に算出できます。
リスクの大小や、ばらつきを評価する際にはぜひ確認してみてください。
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