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【イベント報告】「これしか書けない――いしいしんじの創作講座」

こんにちは! 編集部員Oです。
以前の記事でも告知していた2023年8月5日(土)、オンラインイベント「これしか書けない――いしいしんじの創作講座」のアーカイブをYoutubeで配信しています。

当日の模様について短いレポートを書きました。少しでも雰囲気を感じ取っていただけたら幸いです。

最初に、旺盛な創作活動(イベント中、これまで書かれた本をいしい氏が机の上に積み上げると画面いっぱいの高さとなる場面もあった)の土台となった、ある出来事が語られた。

他人から求められるものをひたすら書き続けた東京でのライター時代、氏は喘息とアトピー性皮膚炎を発症し、精神も病んでしまう。療養のため地元の大阪へ帰り、祖母の家に逗留していた時、小さい頃の自分がまさにその場所で物語を書いていたことをふと思い出した。母に尋ねると、いくつもの物語がつづらのなかに保管されているという。その中の「たいふう」と題された物語は、世界と自分との距離に真摯に向き合って書かれていた。表現の切実さに胸を打たれ、これまでの文章は自分の中から出てきたものではなかったことに気づいた氏は、これからは初心を貫き、「たいふう」の切実さを引き受けて書いていこうと決意した。

参加者の方から「そうした自分の原点となるものがない場合はどうすればいいか」という質問が出た際は、大切なもの(例えば昔飼っていたペットや身近な人)について手書きで書いてみると、自分の中に眠っている記憶が溢れてくると語った。手で書く理由は、幼い頃はみな、全身を使って文章を書いていたからだという。当時の記憶へ「釣り糸」を垂らすためには手が大切になる。

小説を書く時のアドバイスとしては、三田文學新人賞の選考委員として応募作に触れてきた経験から次のように述べた。書き出しでは小説の全体を見わたせていたのに、物語が進むうちによくわからなくなっていく作品が多い。そうなってしまったら無理に書き上げようとするのではなく、何度でも書き直し、冴えわたった冒頭のテンションをラストまで保つのが大事だという。

書くこと、生きることそれ自体のよろこびを感じられるような二時間だった。

書くことに興味がある方も、そうでない方も楽しんでいただけると思いますので、ぜひ動画をご覧ください!

また、季刊文芸雑誌『三田文學』では、「三田文學新人賞」を設け、新しい才能の発掘にも力を入れています。小説部門・評論部門ともに全年齢対象・原稿用紙100枚以下の作品を募集しており、年に1回、春季号に受賞作品を掲載しております。

動画を観て、「書きたい!」という気持ちになった方、ぜひ、応募してみませんか?第30回の〆切は2023年10月31日(当日消印有効)です。

↓応募事項の詳細はこちら

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