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ライブ配信をやりたい訳じゃなかった。〜早慶戦の裏話〜


約1年も早稲田大学と顔を合わせる機会が無かったが、それでも久しぶりの感覚はあまり無かった。慶應義塾大学は幸運な事に、日本一の大学である早稲田大学と1年に最低でも4度、団体戦を行なっている。(関東リーグでも当たる女子部は6度、2ヶ月に1度のペースで試合を行なっている)

今回の早慶定期戦は無観客試合にて開催され、会場は選手、監督コーチ等に限定された。

とはいえ、平時でもほぼ無観客試合と呼べるほど密かに開催されていた早慶戦、全員がマスクを着用している部分以外は特別な違和感は感じられなかった。

【小田島主将の夢】

遡ること1年前、主将の小田島が一つの夢を語ってくれた。
「早慶戦、お客さんで日吉のコートいっぱいにしたいですね」

早慶戦は春と秋の1年に2度、会場持ち回りで早稲田大学所沢テニスコート、慶應義塾大学下田テニスコートにて開催される。

2020年は慶應開催で行われ、駅からのアクセスも悪くは無い。(徒歩10分ちょい)

早慶戦で観客を呼び込むべく、有志を中心に動き始めたのが2019年11月だった。

【膨らむ期待】

「野球部のようにカッコいい対決ポスターを日吉に沢山貼ってもらう?」
「観客には応援Tシャツや選手うちわを配布しよう」
「昼休憩の時間に選手との交流タイムを作ろう」

初めは本当に自分たちの試合で観客を呼ぶことができるのか不安視していた部員も、出てくるアイデアに触発され、

「どうすれば観客を呼び込めるか」から

「どうしたらお客さんが喜んでもらえるのか」

考えるようになっていった。

「目の前の試合に集中してもらうために1面展開でやろう」
「第2コートで試合、横の第1コートには階段状の観客席を設置しよう」
「観客よりも当事者として楽しんでもらうために応援歌や
エールの歌詞を配って、試合を一緒に応援してもらおう」
「全対戦の試合結果を予想してもらって、
当たった人に選手のサイン入りラケットをあげよう」

早稲田の知名度と慶應の企画運営が噛み合わされば、きっとお客さんを呼び込み満足させることができる。
そう信じ、2020年6月の早慶戦に向け動き出した。

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松江工業高校出身の浜田が日吉テニスコートの図面を簡単に作成した

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早慶交えてのLINEグループ

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ソフマガさんの付録で大会日程を確認し、
なるべく早慶がフルメンバーで参加できる日程を調整していた。


【かかる予算】

企画を考えるのは自由だが、何をするにもお金がかかる。デザイン費、印刷費、会場設営費、備品…

大学のコートで開催する以上、収入源を確保することは難しい。

雨天時を考慮し会場を借りることも検討したが、多少現実味がなくOB会に早慶戦費用として来季の予算を確保してもらうことを相談した。

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【役員20人の前でのプレゼン】

2月、OB会の理事会が開催され
小田島の同期、新田が役員20人の前で思いの丈をぶつけるプレゼン。
約2ヶ月の案をまとめ上げ、早慶戦の予算の承認を得た。
コロナウィルスが日本にも影響を与え始めた時期だったが
このときは一過性のものだと疑わず、6月開催の早慶戦が中止になるとは誰も想像していなかった。

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【集客の目的】

高校生で約8万人いる競技人口も、大学(学連)では1万人を切るほど競技人口は減少する。

慶應義塾大学にはスポーツ推薦が存在せず、センター試験受験もないため一般受験のハードルがかなり高い。そのため慢性的に部員不足が深刻な問題となっている。

慶應では取り組みの一環として、

・関東中心とした進学校を招待し、大学生とも対戦機会のある「高校生招待試合大会」を年に4度開催

・秋の高校生ブロック大会にはできる限り部員が現地に出向き、先生方に挨拶と大学のパンフレットの手渡し

・大会シーズンとなる夏のハイジャパ、インターハイではOBが挨拶に伺う

部員獲得のための努力は継続して行なっているが、入試ハードルの高さもあり、なかなかの部員獲得できずにいるのが実態である。

3年の春から急に甲子園を目指しても、甲子園の舞台には辿り着けない。

どんな目標にも前持った準備が大事である。我々としてもできる限り早い段階で「慶應義塾大学」を知ってもらい、目標にしてもらう必要があると考えるようになった。(実際、小田島は高校1年生の頃に慶應に興味を持ち、意識していた)

特に神奈川や東京の中高生を集客することができれば、物理的な距離も近く目標としてもらいやすい。真剣な試合、日本一の大学のプレーを至近距離で見ることで、早慶を進学先に選んで欲しい、という背景が両校にあったのである。

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生で早慶の魅力を感じてほしい、という観点から
ライブ配信は行わない方向であった。
(当日の様子を後に動画化する予定だった)


【withコロナの在り方】

1月の時点では考えもしなかったが、緊急事態宣言が発令され大会どころか部活動すらも長期間規制されてしまった。

コロナのため早慶戦どころではなくなってしまい、集客の云々の話は徐々にフェードアウト。

学校もなく、集まることもできずに毎日をすごしていく日々が続いた。

ただ、そんな状況だからこそできたこともあった。
その一つが「ソフメモ甲子園」である。

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忘れられないソフトテニスの思い出をメディアで共有して楽しむ全国大会、非常に多くのソフトテニス関係者のご協力もあり、大会は無事に幕を閉じた。

ソフメモ甲子園について詳しくはコチラをご覧ください

コロナウイルスの影響で春リーグ、東日本インカレ、インカレも軒並み中止。今年こそはと特に意気込んでいた4年生にとって、この3大会がなくなる意味はとても大きかった。インカレの中止が決まった瞬間に、男子部は主将を小田島から中川に交代することにしたのだった。

こんな状況でも体育会への入部を決めてくれた男子部の松川、鈴木、北川、女子部の髙橋、飯塚には本当に感謝である。

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3月〜6月にかけてオンラインで部活を行なっていた。


【シーズンの初戦が秋リーグ】

ようやく大会が開催できるようになったのが10月。シーズンの初戦が秋リーグという異例の事態。
(慶應では通常秋リーグで4年生は引退し、早稲田大学も秋リーグは3年生以下で戦うことが多く、通常であれば早関戦で引退する)

関東リーグ戦は無観客試合での開催となり、動画の公開も禁止されたため、その勇姿を保護者や関係者に届けることができなかった。

4年生の最後に、早慶戦で何かできることはないだろうか。そこで出た案が、当初の早慶戦では考えていなかった『ライブ配信』という手法だったのである。

【やるからにはできる限りのことをしよう】

「せっかくやるからには、やれるだけのことをしよう。」
1年前からいろんな構想や準備をしていた早慶戦。4年生にとって最後の舞台。一番近くでその頑張りを見ていた3年生が中心となり、早稲田大学と連携しながらライブ配信を含めた大会開催方法について協議を重ね、現役部員の手で早慶戦のポスターを作りあげた。

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3年の横田・梁の手で画像を作り上げた

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女子部1年マネージャーの飯塚も合流し、ポスターを制作した

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【ライブ配信へ向けて】

スマートフォンでの簡単なライブ配信は行ったことがあるが、画質も悪く、選手の表情も見ることができない。それでは早慶戦の魅力を十分に伝えることは難しい。どうすれば視聴者にも分かりやすい配信ができるだろうか。

そこでパソコンを通じてライブ配信を行いテロップ等を追加する、弊部ではまだ一度も行ったことがない本格的なライブ配信に挑むことになった。

また両大学に事前アンケートを行い、選手本人たちからの情報や雰囲気もPRできるよう協力いただいた。

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当然ながら、オーダーは直前まで分からないため、
ある程度の出場選手を絞り込み準備を行うことに。

【ぶっつけ本番のライブ配信へ】

応援に来ることができない関係者の方や呼びたかったお客さんのために、より早慶戦の臨場感を伝えるべく、試合と選手の表情を切り替えながらのライブ配信となった。

技術的・機材的な問題点を解決してくださった協力者の方には本当に頭が上がらない。ご協力ありがとうございました

ライブ配信のアーカイブは下記よりご覧ください。

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一日中選手の表情を追い続けた1年生の松川
初挑戦ながらもどんどんとカメラワークの技術を上げていった

【ライブ配信を終えて】

1年前との構想とはまったく違う形での早慶戦となった今回。
望んでいた形での開催は叶わなかったが、早慶の魅力をPRするという目的は達成できたのではないかと思う。

このような状況下でも開催できたことに感謝し、

これを機に少しでも早慶両校に興味を持っていただけたのなら幸いである。両校の応援いただき、本当にありがとうございました。

最大同時接続数 335人
ライブ配信中の視聴者総再生時間 1,104時間
ライブ配信中視聴回数 約11,000再生
かかった費用 0円(部員・協力者の持ち物につき)

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早稲田の皆さん、アンケートや写真の共有、拡散などへの積極的なご協力いただきありがとうございました。

そして早稲田4年生の上松・内田・後藤・福井・人見・渡邊 選手

慶大4年の荒木・勝又・川口・花岡・能願・小田島・村野・新田・武藤・尾崎 選手

4年間お疲れ様でした。


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