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デジタルツインが作り出す製造業の未来[テクノロジーに触れるシリーズ]

古い産業に勤めているぼくとしてはテクノロジーに少しでも触れて視野を広げていこうと思っている。自分が見聞きしたものを1-2分で読める備忘録として書き留めていく。

今日はデジタルツインについてちょっと学んでみる。

少し前になるが、ものづくりにおけるテクノロジーに関する展示会を見にビックサイトにいった。その分野のプロの方から見た場合、製造業で特に人力に依存している分野というのは技術面に加えてコスト面でもなかなかデジタル化が進みづらい分野であると考えられている。

そんな業界で働いている僕としても取り入れないわけにはいかない段階に来ていると個人的に考えている。

会社のおじさま達には実感がないのか、少なくとも自分としてはアンテナを張っておきたいと思って展示会などには視察にいくようにしている。

その時、デジタルツイン(Digital Twin)という言葉に触れた。マイクロソフトが提供するAzure Internet of Things (IoT) プラットフォームというものがあってそれを導入した企業の実用事例に関する講演を聞いた時だ。

☞デジタルツインとは何か

非常にざっくりいうとツインというのは双子という意味なので、現実世界にある製品や機器をデジタル空間に再現すること。IoTの技術によってリアルタイムでサイバー空間に情報を送ることで、サイバー空間上に現実世界とまったく同じ製品とか機器を再現して、サイバー空間で実験をするという分野で今応用が進んでいる。

ぼくも専門家ではないので詳しいことは専門家のHPなどを見ていただくとして、これがなぜ良いか?というと、新しい製品を作る際に実験と検証というのは非常にコストがかかるものであり、モックアップを作って何回もやるよりもデジタルな空間で繰り返しいろいろな条件でテストできるというのはぼくのようなメーカーにとっては魅力的なのだ。

何か物を作る条件というのは非常に複雑にいろいろな条件が重なっているので本当に難しい作業になる。

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こういったデジタルツインの技術が一気に発展してきたのはセンシング技術の向上が寄与してて、いろいろなデータをとれるようになっているというのと、情報処理技術が上がってきているという点が大きい。

もし、こういったものを導入できたら設計や製造プロセスのリードタイムが短くなるし、何か問題が起きたときに複雑に絡み合った要件から何が問題だったかという究明の精度が上がったり、新製品開発でもより短期間にお客さんの要求にあった製品を開発できるようになるので、期待されている技術だ。

ぼくが講演で見たのはマイクロソフトのこういった技術を導入したエレベーターの会社。この会社がすごいのは実際にエレベーターの実験場をゼロから作ってたかーいタワーを建設した。

そしてそれと全く同じものをデジタル空間で再現してリアルとデジタルの両方で完全なデジタルツインを作り上げた。今ある設備に導入すれば効率的でコストが抑制できる気はするが、ゼロから作ってしまったほうが整合がとりやすいということで思い切って作ったというのが印象的だった。

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当日は紹介はなかったが、他にも自動車開発の試作車両のテストなどでも徐々に使われ始めているらしい。

ぼくの会社は部材を作るメーカーでカスタマイズ製品が非常に多い製品が多いこと、割と古い設備を減価償却しながら長年使っていく業界なのでコスト的に厳しいことからおそらく導入はされないか、だいぶ先の話だと感じた。また利用する原料が化学品だったり天然物だったりするのでロットがぶれるし、デジタル標準化がしづらい分野ということも一つの理由だ。

一方でこういったものを導入しやすい大量生産大量消費モデルの分野では一気に進むとも感じた。例えば自動車、ロボット、医薬品、建築、物流などの分野ではぼくの会社の産業よりも導入が進む気がする。

☞デジタルツインの技術が進むとどうなるか

こういった単に試作をしたりシミュレーションのソフトではない未来がデジタルツインの技術でありえるといわれている。

それはデジタルツインの世界の方が実はリアルな世界になって、現実の世界はそれを模倣してトレースするだけのものになる可能性があるということだ。

実際にVR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術が発達してきているので、ぼくたちがデジタルの世界に入り込んでいける可能性がある。ぼくたちの脳に直接センサーを埋め込んですべての感情や触覚をデジタル化すればデジタルの中にぼくらのパーフェクトコピーを作りだせるということが研究されている。

そうすると肉体の役割がなくなってくる。心臓は血流を送り出すポンプでしかなく、心が痛んだりする感情は脳が作り出している。脳を切り出してネットにつないでおけばデジタルの世界で永遠に生きていける。最近アマゾンプライムでみたアニメーション「PSYCHO-PASS(サイコパス)」の世界にもそういったシステムが裏で世界を支配しているという内容があって、近未来を描いたSFの世界が現実のものとなってくる。

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遠い未来のような話だが、少なくともぼくの会社のモノづくり業界にも今後さらに影響が広まっていく可能性は高い。

均一に大量に作れるもの、原料も安定した品質のものが手に入りやすく、人の職人ワザがあまり使われない分野。リアルな世界でテストをしようにも膨大な変数の量があったり、ものがそもそも大きすぎてそれまでのシミュレーションと作ったあとのものが理論値でしか安全性を証明できないもの。そういったものからまずは導入が進むだろう。例えば橋の建設とかも含まれるかもしれない。

こういったところからまずはセンシング技術の融合によってどんどんデジタルツインのような技術は進化をしていくので、他人事とは思わずにこれからもニュースなどに触れたら意識しておこうと思った。

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あの職人ワザというイメージが強い日本酒の杜氏の世界でも「獺祭」を作る旭酒造がAI技術を取り入れている時代だ。ディープラーニングによって実際の醸造現場での計測情報や、職人の経験と勘に基づいた行動をデータとして取り込み、AI予測モデルの精度を高めながら生産をしていて、職人がいなくなっても持続可能な味を実現している。

原料のばらつきがぼくの会社ではデジタルを導入する一つのハードルではあるが、その点について日本酒業界では少なくとも克服して再現性を実現したことになる。原料の種類が少ないことも導入はしやすかった一面とは言えそうなので、それが何十種類もなると相当コストがかさむし、ぼくの業界ではそういった投資を吸収してコストとして載せられる市場価格は形成されていない。

そんなこともいっていられない時代はやってくる。自分が働いている間かどうかはわからないが、ぼくの娘たちの時代には間違いなく来るだろう。すでに今は時代の流れは「モノからコト(サービス)」。ものづくりだけでは高い付加価値を生み出しにくくなってきている。

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デジタルツインの技術にはまだまだ課題もたくさんあって、まずはデジタル化すること、つまりデータがとれるかどうかが問題であり、データが全然取れない分野については変数としてデジタルツインにその要素を組み込めない。まだまだ限界があるというのが今の状況であり、いろいろなものをセンシングする技術はこれからも伸びるだろうなと感じた。

どうりでSONYのCMOSセンサーが伸びているのだ。自動運転とかセキュリティとはiPhone11の三眼カメラ以外にもこういったデジタルの発展があるんだなあと感じた講演だった。

ぼくのどんな情報までセンシングされる未来が来るのだろう。

デジタルツインについてもっと詳しく知りたいという方はIBM、マイクロソフト、シーメンス、三菱電機などのサイトや専門書を調べてみてください。一応ぼくが読んで良くまとまっていると思ったサイト・記事のリンクを以下に貼っておきます。

keiky.

[参照リンク]


※注:このシリーズは先進的なテクノロジーに疎いぼくが、そういった世界に意識的に触れて自分の見識を広げていくことを目的としています。その分野に詳しい方にすれば当たり前すぎる内容となっていますのでご容赦ください。初心者的な内容になっていますので、そういったテクノロジーを「利用して導入していく側のフツーの会社の人の記事」としてお読みいただけますと幸いです。


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