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なぜ「虫歯は予防できる」と、誰も教えてくれなかった?

私は家族に“歯科衛生マニア”と言われるほど歯のケアに熱心だ。
歯ブラシに120グラム約2500円の歯磨き粉を惜しみなく載せて歯を磨き、ワンタフトブラシ(下記の写真参照)で細かい箇所の汚れを落とし、毎日欠かさずデンタルフロスを通す。仕事の合間にはキシリトールガムを噛むのが習慣だ。

左の赤いブラシがワンタフトブラシ。細かいところも磨けるすぐれもの。


さらに4ヶ月ごとに自費の歯科医院に通い、1回2万円のクリーニングをしてもらっている。
おかげで、ここ何年も虫歯になった記憶がない。


33年間、「虫歯になるのは当たり前」と思っていた

しかし以前は、歯に全く関心がなく虫歯だらけだった。
20代で2本も歯をダメにし、インプラントが2本入っているほどだ。
このインプラントのせいで、歯列矯正をあきらめた。
 
なぜ歯並びがガタガタなのに、子供のときに歯列矯正治療をしてもらえなかったのだろう。
親に聞いてみたら、「そのうち虫歯になって歯を抜くだろうから、そのときにやればいいと思っていた」と返ってきた。
 
親を責める気は毛頭ない。
虫歯になるのは当たり前という考えは、ごくごく普通だろう。
昭和時代ならなおさらで、私もずっと私もそうだった。
 
しかし33歳のとき、考え方が180度変わる。
きっかけは、歯科関連企業のライターに転職したこと。
歯科に興味はまったくなかったが、未経験歓迎でライターを募集していた会社がそこしかなかったのだ。
 
こんな適当な動機で入社した私だが、記事を書くうちにどんどん歯科に詳しくなっていく。
その中で特に衝撃的だったのは、虫歯や歯周病はかなりの確度で予防できるという事実だ。
 
ざっくり言うと、「定期的に歯科医院でクリーニングと歯磨き指導をしてもらい、指導された通りに毎日お口のケアをしていれば、そうそう虫歯や歯周病にはならないよ」ということ。
北欧などでは予防のために歯科医院に通うことが一般的で、虫歯や歯周病は非常に少ないらしい。
 
私は「もっと早く知りたかった!」と思うのと同時に、「なんで誰も教えてくれなかったの?」と行き場のない怒りも覚えた。
 
もし、私も歯科医院に予防のために通っていたら、インプラントなんて入れずに済んだかもしれない。
歯列矯正治療をして、きれいな歯並びになっていたかもしれない。
 
確かにインプラントは今やすっかりなじみ、痛みも違和感もない。
でも手術後しばらくは痛みが続き、頬は漫画のように腫れて食事も3食雑炊だった。
20代でもこうなのだから、高齢になってから手術をしたらどれだけ治りが遅いか、推して知るべし。

安易に「最悪、インプラントがあるから大丈夫っしょ」と考えるのは勧めない。
 
それにしょせん、天然歯ではなく人工物だ。
一時的にドイツに住むことが決まったとき、かかりつけの歯科医院の先生が「現地でインプラントにトラブルがあったら、これを持って歯科医院に行ってください」と、インプラントのネジのようなものを持たせてくれた。
 
先生の心遣いが嬉しいのと同時に、「しょせんインプラントは“部品”なんだ」と、忘れかけていた歯を失った悲しみが戻ってきたのを覚えている。

予防歯科はコスパ最高

今まで、歯の治療にどれだけの時間とお金をかけたのだろう。
仮に嚙み合わせが改善されて噛みやすくなったり、歯並びがきれいになって笑顔に自信が持てるようになったりしていたら、お金と時間を費やした価値があったと思えただろう。
 
しかし私の場合、残ったのは削られて銀が埋め込まれた歯や、人工の歯。
 
完全に、「死に金」だった。
 
このお金を予防に回していたら、どれだけ良かったか。
冒頭の通り、私は4ヶ月ごとに1回、つまり1年に3回歯科医院行き、2万円の自費クリーニングを受けている。
年間6万円を歯に投資しているようなものだ。
 
13年間継続しているから、これまでに78万円投資してきたことになる。
「高っ!」と思うかもしれない。
でもこの金額では、インプラントを1~2本しか入れられない。

もし13年間一度も歯科医院に行かずに日々の歯磨きも適当だったら、口腔内の環境が悪化して複数の歯を失う可能性は充分にある。
予防をして自分の歯をすべて残したほうが、はるかに「コスパが良い」のではないだろうか。  

歯を失うことは、日常を失うこと。

仮に女性の平均寿命の87歳までこのクリーニングを続けた場合、総額は324万円になる。
この額も、まったく高いと思わない。
むしろ激安だ。
 
前述した歯科関連の企業は退職しているが、現在はフリーランスのライターとして歯科関連の取材をすることが多い。
そこでは、高級車が買えそうな額の治療の話も聞く。
 
こんな額を払えるのは、ごく一部の人だ。
ほとんどの人は、口の中に違和感や痛みを覚えながら人生を過ごすことになるだろう。
長ければ何十年にも及ぶはずだ。

私は歯科医師や歯科衛生士への取材を通じ、歯を失った人の悲痛な声を幾度となく聞いてきた。
最近聞いた中で印象に残っているのは、「もう一度タコが食べたい。本当に歯がほしい」だ。
くら寿司で必ず「大葉生たこ」を注文する私の胸に、グサグサ刺さりまくった。

確かに弾力のあるタコを食べるには、グラグラの歯やフィットしていない入れ歯、ましてや歯茎では無理だろう。
 
歯を失うことは、日常を失うことなのだと改めて感じた。
 
虫歯になるのは仕方がない。
歳をとったら歯は抜けるもの。
 
こんなことを言っている場合ではない。
防げる疾患は防がないともったいない。
 
もし虫歯で嫌な思いをしたことが一度でもあるなら、ぜひ予防歯科を始めてほしい。
私は歯科衛生マニアなので電車で1時間かけて自費の歯科医院に通っているが、保険診療で対応している歯科医院もたくさんある。

「予防歯科 地域名」「歯医者 予防 地域名」などで検索すれば、予防歯科を行なっている歯科医院が見つかるはずだ。
 
「もしかして虫歯かも。歯医者行きたくないな……」と痛みを抱えながらも、だましだまし数か月過ごし、我慢しきれなくなって歯医者に駆け込む。
そして、貴重な休日を潰して治療の激痛に耐える。
 
私はこんな経験を一切しなくなった。
至極快適である。
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歯科業界を陰ながら支えるため、歯科ライターとして活動中です。
歯科医院への導入事例など、歯科関連の記事作成はおまかせください。



 



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