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「宙ぶらりんプロジェクト」は意地でも、着地!


「企画力より、着地力」

これは『注文をまちがえる料理店』をはじめ、様々なプロジェクトを牽引している「小国士朗」という人の暴言。

ではなく、名言か格言か金言だ。

ボクが、小国士朗という人に出逢ったのは例のごとく部活のように通っていた『みんなで語ろうフライデーナイト』に参加したときのこと。

たしか、この日のブレストのテーマは『あなたの熱狂スイッチの見つけ方』というものだった。

ボクは、いつも通り30分前には会場に入ってボンヤリと「熱狂」という言葉について考えていた。

そうしたら突然、前方のドアから「赤い竜」が飛び込んできた。というのは見間違えで、一瞬、小国士朗という人がRPGゲームに登場するレッドドラゴンのように見えただけだった。

ちなみに、そのレッドドラゴンというのはこういうヤツのことです↓


芸能界にいた頃、色々な俳優やタレントから「オーラ」というものを感じたことはあったけど、小国士朗という人が放っていたものは独特だった。

なんていうか、燃えているような凄まじいエネルギー。足元から「何か」がザワザワと入り込んでくるような感じがした。

ボクは、そんなレッドドラゴンの姿を見た瞬間、恋に落ちてしまった。なーんて!少女漫画のワンシーンのような展開だったら面白いけど、現実はいつだって恐ろしいほどに真逆だ。


実際は、

強烈に嫌いだな、と思った。


初対面で事前のリサーチもなく、まだ一言も話していないにも関わらず。とにかく、ボクは小国士朗という人の中にある「何か」に激しく拒絶反応を示していた。

やばい。

小国士朗という人のことを「嫌い」だと思った瞬間、自分の中で「封印」していたモンスターが目を覚ましてしまった。これじゃあ、熱狂スイッチじゃなくて「怒りのスイッチ」がONになってしまうじゃないか!

まずい。

モンスターが「檻」にガンガンと頭をぶつけて壊そうとしている。

やっぱり、今日は参加するべきじゃなかったな…。なんとなく、熱狂という言葉を見たときからイヤな予感はしていたけけど。まさか、こんな精神状態になるなんて!とりあえず、イベントが終わるまでの間は大人しくさせておこう。

うるさい!

静かにしろ!

暴れるんじゃねぇ!!!


ボクが、こんな感じで自分の中のモンスターと格闘していると、前方のスクリーンでは『俺物語!!』ではなく『小国士朗物語』の上映がスタートしていた。

ん?

何の話しをしているんだろう?

もう、さっきから何も入ってこないよ!

そうやってジタバタしていると、イベントはいつの間にかブレストタイムに突入。参加者は少人数のグループに分かれていて、小国士朗という人はガシガシと「ゴジラ」のように会場内を歩き回っていた。

けれど、ボクの中にいるモンスターは相変わらず落ち着く気配もなく暴れまくっている。どうしよう…。やっぱり、一発ブン殴って大人しくさせるかな?とボクは心の中でコブシを構えた。


そんな"時"だった。


小国士朗という人の口から「企画力より、着地力」という言葉が会場内に放たれて、ボクのモンスターに命中。バタッと倒れて大人しくなった。

が、その言葉はモンスターを貫いて、ボク自身の心の奥深くにも突き刺さっていた。

「ちゃくち…りょく…」

ボクが、そうヒッソリと呟いていると、1.5m先にいたゴジラがクルッと振り返って笑った。


「そう。一度はじめたら意地でも着地!」


ハハハハハ。ボクは、無邪気に笑うゴジラにつられて顔だけスマイルにしてみたけど、本当は1㎜も笑えなかった。

というより、心の奥がキリキリッと痛んだ。痛い。痛すぎる。頭の奥もズキズキする。

「一度はじめたら意地でも着地!」という言葉は、徐々に、ボクが見ないようにdeleteしていた「現実」を炙りだしていった。



ボクは、人並み外れた『多動力』の持ち主だ。



それ故に、色々なプロジェクトに参加したり、自分自身でも企画を立ち上げたりとエネルギッシュに活動していた。でも、着地できたプロジェクトは一つもない。ただ、気の向くままにやり散らかしていただけだった。

プロジェクトは楽しいからね。

たぶん、企画しているときが一番テンションが高いんじゃないかと思う。「新プロジェクト始動!」っていうタイトルでメンバーで写真を撮ってSNSに投稿したら何となく「やっている感」も出るし、アドレナリンも全開。

行動を起こすことも簡単だ。

最初のうちは参加している全員がプロジェクトという言葉の響きに酔っているから、どこまでだって飛んでいけそうな気がする。


問題は、1歩2歩3歩目からだった。


なんかいつもよく分からないんだけどさ、プロジェクトって1歩2歩と進んでいけばいくほどモチベーションが下がっていくんだよね。

特に、メンバー全員のモチベーションを「持続」させるのは難しい。プロジェクトの発起人がよほど強い信念を持っていない限り、一人、また一人とメンタル離脱していく。

気がつくと、参加していたプロジェクトは「宙ぶらりん」の空中分解。結婚式会場の風船のようにプカプカと空中に浮かんでいた。

ボクには、こんな宙ぶらりんのプロジェクトがいくつもあった。見ないフリをして忘れたつもりでいたけどさ、ずっと、無意識の領域では気になっていたんだよね。

何とかしなければ…!
何とかしなければ…!
何とかしなければ…!

って。こうやって頭の中では着地を飛びかける声が聞こえていた。

ボクは、その声が聞こえるたびに「自分」のことを責めるようになっていたし、エネルギーを大量に消耗するようにもなっていた。

更に、ここ最近では「根拠のない自信」もなくなっていて、やりたいと思えることも"0"になってしまった。一時期は、毎日あれほどやりたいことで溢れていたのに…。

やりたいことがなくなると、ボクの真ん中で燃えていたものはモンスターへと変貌した。エネルギーを爆発させる先がないと、ボクの中にある「熱」はネガティブな方向へと爆発してしまう。

こんなん自分じゃない!自分じゃないのに…!って、そう何度も心の中で叫んでいたけど、状況が変わることはなく苦しい日々が続いていた。


そうだ。


ボクが嫌いなのは小国士朗という人のことじゃない。今の自分自身なんだだ。華麗に羽ばたいて着地する。レッドドラゴンの「姿」に映し出された、情けない今の自分の姿が嫌いだったんだ。

どうしても、無意識に比較してしまっていた。

ああ、ボクもこんな風に自分のエネルギーを爆発させて「熱狂」できるものがあったらいいのになって…。ホント、このままじゃダメだよね…。



帰宅後。



ボクは、小国士朗という人の言葉を思い出しながら決心した。何とかして、関わっているすべてのプロジェクトを着地させよう!と。

よくよく考えてみたら、
自然消滅なんて一番自分らしくない。

決めた。

『宙ぶらりんプロジェクトは、意地でも着地!』っていうプロジェクトを始動して、全部全部全部、着地させよう!


But、

冷静に考えれば考えるほどムリだな、と思った。


だって、死にかけている宙ぶらりんのプロジェクトだよ!今更復活させて「成功」に導くなんて誰がやってもムリじゃない?

それに、『小国士朗物語』から学んだのは成功プロジェクトのことだけだもん。失敗したプロジェクトを着地させる方法なんて聞いてないもん!

ううっ…。

ボクは、完全に行き詰った。けれど、ここは一旦"0"に立ち返って「ひとりブレスト」をしてみよう!と思い直した。

たしかに、ボクが関わっていたプロジェクトは失敗作ばかりだ。だけど、果たして「着地する」というのは「成功させる」ことだけなのだろうか?

いや、それだけじゃないはずだ。

自分には、自分のできる範囲での「着地」があってもいいんじゃないだろうか?

そうだ!プロジェクトの「着地」は「成功」させることだけじゃない!

失敗を受け入れて、落とし前をつけることだって一つの着地だと考えられるんじゃないの?

そうだよ!

プロジェクトメンバーに謝って脱退したり解散したり。そういうのも一つの着地だよ!


思い立ったが吉日。


ボクは、参加していたすべての宙ぶらりんプロジェクトに「けじめ」をつけていくことにした。

「もう、これ以上は関われません」

と、正直に話して謝罪したり脱退させてもらったり。キリのいいところまで走ってキレイサッパリと卒業させてもらったりした。

もちろん、すべてのプロジェクトがサッパリと気持ちよく終われるワケではなかった。

途中、チクッとするような「嫌味」を言われることもあった。けど、それはそれで仕方がない。けじめをつけるってそういうことだ。

ボクは、悟りの境地を開きながら最終的には「化石プロジェクト」までをも掘り起こしてカタをつけていった。


そして、

いよいよラスト一つ。


最後は、自分自身が発起人となって立ち上げたプロジェクトと向き合うことになった。

そのプロジェクト名は『MY MADE IN JAPAN』

「伝統工芸品の魅力を海外に伝える」ことを目的としたプロジェクトだった。


ここでちょっと、このプロジェクトを立ち上げることになった経緯について話しをさせてほしい。

ボクは、伝統工芸士であった祖父Aの影響で子供の頃から日本のものづくりが好きだった。更に、仕事で異文化交流のあった祖父B&父親が、海外の人にお土産を手渡す「光景」を見るのも大好き。

ブロンドの髪、モスグリーンの瞳、真っ赤な漆器。海外の人たちが日本の「伝統工芸品」を手にするシーンは神聖だ。

また、同じ光景を見たい。

海外で、MADE IN JAPANのあるスタイルが当たり前になればいいのに。それがプロジェクトを立ち上げた「動機」だった。

嬉しいことに、プロジェクトにはメガネのクリエイター陣や色々な職人さんが協力してくれて材料は集まっていった。

けれど、途中で資金が足りなくなってストップ。

当時は、クラウドファンディングをするなんて知識もなく、無計画に勢いだけではじめてしまったことが問題だった。


何とかして、お金を集めなければ…!


そう考えていたときに出版が決定。『はじめての野心』をベストセラーにすることができれば印税をプロジェクトの資金に回すことができるかも。なんて、甘いあまいシナモンロール野郎な考えで挑んだけど、結果は惨敗。

完全に、お手上げ状態になった。

資金を調達できたら再開させよう!って自分に言い訳をしながら先延ばしにしてきたけど。本当は、もっと早くに「着地」させるべきだったのかもしれないな…。

さすがに、このプロジェクトだけは「謝る」という「着地」だけでは許されない。というか、自分がそれを許すことができない。

どれほど無様で格好悪くてもいいから、自分なりのカタチに誠意を持って仕上げよう!

ボクは、色々と模索した結果、自分自身のHPの中にプロジェクトの写真を掲載することにした。本当は、もっと立派なサイトを立ち上げて掲載したかったけど…今はこれしかできない。

理想とはだいぶかけ離れているけど、このまま闇に葬るのが一番ダメだ!

ボクは、プロジェクトの説明文をカキカキ。タイトルコピー、ボディコピー、撮影した写真などを自分なりに組み合わせていった。

よし!できた!

完成後、ボクはURLと一緒に「一旦、これで着地させてほしいです」という謝罪文をつけて全員に送信。震えた。やばい。怒られるかも?スルーされるかも?このプロジェクトの着地、一体全体どうなるの!?ってパニックになった。

が、結果から言うと、

24時間以内に全員からOK!との返信があった。しかも、それだけではなく関わった全員から「今後の活躍を祈っている」といった温かなメッセージまでもが送られてきた。

ボクは、泣いた。

泣きじゃくった。

これがドラマだったら、確実に挿入歌が入るシーンになったと思う。ボクは、泣いて泣いて泣きじゃくりながらも、足の裏から少しずつエネルギーが舞い戻ってくるのを感じていた。


これが…着地させるってことなんだ…。


そりゃあさ、レッドドラゴンに比べたらタツノオトシゴレベルの着地だとは思うよ。でも、それでもちゃんと自分なりの着地をすることができた。

自分なりの着地をしてみてはじめて気づいたけど、着地ってエネルギーよりも「覚悟」のほうが必要なのかもしれないな…。特に、想いの強いプロジェクトであればあるほど着地させるのが怖くなる瞬間があった。

審判が下るからかな?

成功か失敗か。良いか悪いか。天国か地獄か。今までは「成功」させることだけが「着地」だと勘違いしていたけど、それはきっと違うんだよね。

プロジェクトの結末は、
着地させるまで自分にも誰にも分からない。

それって…怖いことだな…。

着地させたときに誰にも伝わっていなかったらどうしよう?話題にならないプロジェクトなんて地獄だ。今まで費やしてきた「時間」がすべて水の泡になる。それでも、着地させてみないことには「成功」も「学び」も得られない。

だからこそ、企画を動かすときには「どんな結末を迎えても受け止めてやるぞ!」っていうチカラが必要なんだ。もしかしたら、そのチカラのことを「着地力」と呼んでいるのかもしれないな…。


小国さんって…

ガチですごい人なんだ…。


何回も何回も何回も、色々なプロジェクトを「着地」させているなんて信じられない!それも成功バージョンの着地だし!ぶっちゃけ、ボクの中では「すごい人」っていうよりは「ヤバい人」って感じだな。

レッドドラゴンに見えたのも納得だ。

企画を動かしていくには、メンバー全員を引っ張って空に飛ぶための羽と、地面にガッと爪を立てて着地するだけのチカラが必要なのだから…。

ところで、散々ディスってしまったけど小国さんって「何者」なのだろうか?イベントでは「着地力」という言葉のインパクトが強すぎて「肩書き」を聞き忘れてしまったけど。

熱狂家?

それとも熱狂のプロフェッショナル?やっぱり、レッドドラゴンとかかなぁ?(そんなワケない)

ネットで調べてみよ!

ボクは、そんなささやかな疑問を胸にネットの海で小国さんを探してみた。すると、そこには自分自身がずっと追い求めていた"一行"が!

肩書きのない名刺。


こ、これは…

まさに、ボクが求めている理想のカタチじゃないか!へぇ。こうやって生きれば「肩書きを超えた存在」になれるんだ。ふーん。これが、名前で生きるってことなんだ…。

ボクは、PCをパタンと閉じた。

そして、やっぱり小国士朗という人のことがキライだな、と思った。

そういえば、通りすがりの誰かが「氏名には使命が刻まれている」って言ってたっけ?


小国士朗。


小さな国…日本?

日本に熱狂を巻き起こす、令和に生きる武士ってこと!?(注:あくまで個人の解釈です)

いいな…。

名前の通りに生きていて…。


ボクも、いつの日か「名前で生きる」ことができるだろうか?



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中村慧子|Keiko NAKAMURA
最後までお読みいただきありがとうございます!もしも今、少しでも心動くものを感じていただけましたら是非ともサポートをお願い致します。私にとって「お金」とは「愛」です。あなたから愛を贈っていただいた際には、私もまた自分自身が感動したモノ・コト・ヒトへと還元していきたいと思っています。

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