日本酒とパスタ、あるいはイタリアン
パスタを作る工程にまつわるコラムとか、リゾットの話とかいろいろ書いているが、「パスタ🍝と私」な話をしよう。
そもそも、 マガジン名:「唎酒師がパスタを中心に淡々とイタリアンを綴る」 に関連する事について何も述べてなかったか。ちょっと、つづってみる事にしよう。
本名名義のFacebook に、毎日ののように料理写真を投稿しているが、過去にUPした写真を引っ張ってこよう。これでも全部ではなく、ごくごく一部である。
ここまでしつこく、パスタと日本酒を組み合わせるのは、ひょっとしたら世界でも私しかいないかもしれない。(もちろん、上には上がいるやもしれぬが、かれこれ30年以上続けているので、そこまでハッタリじゃないと自負する。)
こう言っては何だが、飽和したワイン市場から流れて来た、昨今の有象無象の日本酒ペアリング/マリアージュ発信ブームなんぞよりはるか以前からやっている。(誤解のないように補足すれば、後述の酒井 辰右衛門さん にように、一線を画する活動をされている方もいらっしゃる。単に組み合わせて食べ続けて来た当方なんぞ足下にも及ばず、尊敬している。)
Webサイトを自分でつくる、なんてのが全く一般的ではなかった黎明期の 1999年に 趣味の日本酒サイトをつくった。漫画「美味しんぼ」の影響を強く受けた、「日本酒のダメなところ」を糾弾するばかりのネガティブなサイトだが、自身「こんなに美味しい日本酒が衰退していくのは嫌だ」という若造ゆえの叫びを書きなぐったのだった。当時は、特定名称酒 高付加価値ラインナップを主体にした酒蔵経営がまだまだ主流とは言えなかったと思う。日本酒を飲み始めた 30年前ぐらいと、今ではまるで景色が変わったなあ、と感慨深い。
で、「美味しんぼ」の影響を強く受けた、というのが、日本酒×イタリアンを食べ続けるキッカケになっている。
Webサイトを書いた後、これまでいろいろ振り返るタイミングがあり、美味しんぼの54巻 「日本酒の実力」は、いろいろな矛盾、あるいは古い情報をベースにしている事に気付かされてきた。(そういう意味では、私のWebサイトもだいぶお恥ずかしい内容なのだが、若気の至りを残しておくのも悪くなかろう、と閉鎖や削除をしないでいる。)様々な矛盾については、以下でよくまとまられている。
上記リンクに記載のある、
のところが、当時の私に非常に大きなインパクトを与えている。実際、「確かに、ワインには合わない組合せが多いなあ、なんでこんなに生臭い組合せが合う、とか世間で言われてるんだろ?」というのは、実際にやってみて実体験を積んで理解した。ただし、当時20歳前後の”日本酒贔屓な”私でも「どんな日本酒でもあらゆる料理に合う」とまではさすがに受け取らず、「古酒もあるしスパークリングや低アル酵母もある。つまり日本酒はバリエーションが広いので、まあ料理に合わせて選べるよね。決してワインだけが料理に合わせて選ぶ酒ではないよね。」と腹落ちしたと言う事である。
上記リンクでも、以下のように応答していて、まさにその通りだと思う。
私の大好きな 酒井 辰右衛門さん(酒井辰右衛門 - 日本酒ぺありんぐ総合研究所)が、同様のことを Quora で書いている。
しかししかし。考えてみてほしい。
1995年
・美味しんぼの54巻 「日本酒の実力」
1997年前後から
・私が「日本酒は幅広い料理と合う」と主張し続け、パスタと日本酒を食べ続け始める
(その他、業界の人、日本酒好きな人だってそういう発信を、それこそ私なんぞより遥か以前からして来たと思う。)
2007年 リンク
・そもそも、日本酒と言っても濃醇なもの、端麗なもの、香りが高いもの、 香りがおだやかなもの、辛口なもの、甘口なものと色々あります(バリエーション広い → 合うものだって広い)
2022年 リンク
・一般的に考えられているよりもずっと広く合わせることは可能です。
つまり、一般的な認識は、だいぶ昔から何にも変わってない。
「ワインは料理に合わせてあれこれ選ぶお酒だと言う知識や認識は何となくのあるのに、こと日本酒に関しては、一口に日本酒と言っても様々なバリエーションがあって、ワインに負けるとも劣らず和洋問わず様々な料理に合わせるのを試して楽しめる。」
と言う事に、下手をすると、興味も関心もない、のかもしれない。お米の国、日本と言う国であるにも関わらず。
前述の通り、自身「こんなに美味しい日本酒が衰退していくのは嫌だ」という若造ゆえの叫び を20歳前後で発信した。
別投稿リゾットの話で、「実際、これだけ洋食化、というより洋食とのハイブリッドが進んだ日本でも、リゾットが家庭の食卓にのぼるのは非常にまれなのではないか」と書いた。米食文化にはこだわりがあるんじゃないかと思っている。
その逆、瑞穂の国として、米の酒で洋食を迎え撃って楽しんだらよいではないか。その組み合わせが非常に少ないのに、ある種の民族的な危機を感じる。これ、日本酒に関しては、20歳の頃から変わらない感覚である。見える景色がだいぶ変わったこれからの市場は好転していくかもしれないが、ここまで無関心を引っ張ってしまって失われたものは多いように感じている。
だから私は、カルボナーラをキッカケに大学生時代に好きになった、イタリアンと日本酒を組み合わせる事を続けている。
今回は、ちょっと重い思いがこもった文章に。次回以降、ライトな感じに、1000文字程度に戻ると思う。