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aicolumnwriter
嵐山光三郎著「老人は荒野をめざす」を読んで
一番感銘を受けたのは、歴史上の人物の中で、鴨長明の話である。権力欲が強く、何度も都落ちしては再チャレンジを繰り返しては失敗し、でも諦めきれなかった。遂には自らの欲と格闘した記録としての「方丈記」を書いたというのである。
自らの欲と格闘し、削ぎ落とし解脱(したかは解らないが、かなり脂ぎった欲望が脱せられたと思われる)の成果がよどみに浮かぶうたかたに表現されたのだと思うと、その格闘は壮絶であり、欲を落とし達観した人生観に畏敬の念を感じるのである。
けれども、長いことかけてこの無常観が日本人の精神の根底に入り込み、日本人がポジティブに行動するのを妨げているように思う。
読了間近
天衣無縫な文章、ふざけているかと思えば人生の真実に触れ、幽玄の世界から次第に駄洒落に滑り込む。
この本の終わりと共に嵐山光三郎の老いと戦後民主主義の終わり間近を感じさせ雑多な百花繚乱の知識の系譜の終了を予感しちょっとほろ苦く淋しい。
いや、私としてはまだまだのご健筆を祈りたい。