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葬列の意味

志村けんさんが亡くなったニュースは、日本では衝撃をもって受けとめられたと思います。そして、ネットを見ていて気づいたのは、「コロナ感染症で亡くなった故人には、遺族は最後のお別れもできない」「お葬式を出せない」という事実を、日本の方はあまりご存知でなかったらしい、ということでした。

数日前に少しだけ触れたのですが、コロナウイルスに感染して入院される方は、治療中はご家族に会えません。残念ながら容態が改善しなかった場合でも、家族はその死に際に立ち会うこともできません。せめてご遺体を運ぶ時に家の前を通ってくれないか、と葬祭業者にお願いされる遺族もおられるようです。ベランダから霊柩車に向かってお別れが言いたいから、と。(下の動画の中のインタビューに、そのエピソードが出てきます)

葬祭業に従事しているイタリア人の友人に、イタリアでの感染病による死亡者への対応はどうなのかたずねてみました。彼は、「あくまでボクの地域では」ということを明確にした上で、こたえてくれました。

・ご遺体はシーツにくるんで、シーツの上に故人の服を置く。これは、故人へのリスペクトを示すため(感染予防のため、ご遺体に服を着せる作業ができない)
・その後、棺はすぐに閉じられる
・葬儀に参加できるのは直近の家族のみで、棺を開けることはできない(*直近の家族とは、一等親か二等親の方のことかと思います。そういう親族がおられない場合は、最も近しい方、ということになるのでしょうか。基本的に、平時であれば故人の遺体を引き取られる方、という感じだと思います)
・ミサはをあげることは許されていない(しかし、ほんの短い祈りを捧げる神父はいる)
・その後すぐに火葬場に運ばれる

感染者数も死亡者数も突出しているイタリア北部のベルガモの町から、軍のトラックでご遺体が運ばれていく映像は、日本でも流れたかと思います。(下の動画は3月21日のもので、50人のご遺体を運んでいます)

衝撃的な映像ですが、この映像を見られる際にひとつ知っておいていただきたいのは、イタリアには火葬場がわずかしかない、という事実です。近年、火葬を望む人が増加しているとはいえ、イタリアではまだ土葬が圧倒的多数です。ところが感染病で亡くなった方は、感染予防の見地から火葬しなければいけない。ですので、ベルガモの火葬場では対応しきれないご遺体を、他の町の火葬場まで運ぶ必要があるのです。

日本では考えられないことかもしれませんが、イタリアで火葬する場合、お葬式が終わってから実際に火葬されるまで、平時であっても数日以上、順番を待たなくてはなりません。日本とは全く事情が違うということも知っておいていただきたいと思いましたので、とても悲しいことですが、書かせていただきました。

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