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イタリアを治す経済政策

経済について説明するのは本当に苦手です。用語だけでなく、イタリアの税制はとても複雑で、実生活でも会計士さんに任せっきり。収入が少なくても、申告は会計士さんにお願いしてます。というのは、しょっちゅう法律に変更があり、しかも申告ミスがあるとすごく高い罰金が科せられてしまうからです。

なので、コロナウイルス感染のために経済がほぼ止まってしまったイタリアで打ち出されている経済対策も、私には理解するのがとても難しいのが正直なところ。普段、ブログなどに情報を載せる時には、政府の公式サイトから情報をひっぱってくることが多いのですが、今回はどうにもチンプンカンプン。なので、3月25日の経済新聞「Il Sole 24」の記事を参考にしてみました。それでも訳の間違いや理解不足はあると思うので、ミスがあればどうかご指摘くださいませ。

Cura Italia

今回の経済政策は「Cura Italia」という名称がついています。「イタリアを治す」という感じの意味です。感染防止、家族、労働者等々、広範囲に渡る一連の景気対策と規則の変更を含む法案で、3月17日に提出されました。何度かその予算総額に変更があり、現在いわれているのは250億ユーロ(今のレートだと3兆円弱)です。ただし、実際に現金の支給が一般の人々に行われたわけではないと理解しています。(勘違いならご指摘お願いします!)つい先日、いわゆる自営業者への支給金受付がネットで始まったばかりですし、正規雇用者の場合は一時休業中の休業補償が出るのですが、受け付けから実際に支給されるまで30日くらいかかるということなので、きっとお金を受け取るのは5月になるんじゃないでしょうか。また、この法案の内容すべて(30項目ほどあるようです)を法律として成立させる目標も、5月1日とのことです。

さて、「Cura Italia」の内容です。あくまでざっとしたものであること、ご承知ください。また、イタリアの状況も政策も日々変化の連続です。これを書いているのは4月4日(土曜日)から5日(日曜日)にかけてなのですが、その後すぐに変更されている可能性がありますことも、ご承知ください。

医療システムについて

・医師や看護婦への残業代、引退間際の者の雇用期間延期のために1億5000万ユーロ(約170億円)
・1万人の医師不足を補うため、医学部の国家試験免除(大学の卒業試験とは別)
・市民保護局の局長は、民間・公的なあらゆる医療機関の設備の供与を要求できる。また、県は検疫期間を過ごす必要がある人々のため、ホテルの供与を要求できる。

家族について

・休校のため家にいる子供を面倒をみなければいけない両親は、INPS(国家社会保障局)に申請し、最高で15日間の特別休暇をとることができる。対象は12歳以下の子供(障害を持つ子供については年齢制限なし)がいる正規雇用者とコラボレーター(正規雇用はされていないが、会社と契約関係にある者)。休暇中は報酬(コラボレーターの場合は日収)の50%を手当てとして供与。両親が共働きの場合は、二人とも特別休暇と手当てを請求できる。
この手当てはINPSに登録している自営業者にも適用される。法律によって制定されている日収*の50%を対象となる日数分供与。
子供が12歳以上16歳以下の場合、一方の親が働いていれば、もう一方の親は休暇は請求できるが手当てはなし。

*イタリアでは自営業の業種によって、年収がどれくらい、とだいたい定められています。(どこからそんな計算ができるのか、すごく不思議なのですが)EU以外からの外国人が自営業者として働いている場会、法律で決められた年収を下回ると、つまり納税額が一定額以下になると、イタリア国内での労働滞在許可証を失う可能性があります。

・ベビーシッターボーナス:休暇をとるかわりに、ベビーシッターを雇うための援助金を申請できる。最高で600ユーロだが、医療関係者や警察関係者などの場合は最高で1000ユーロまで。
・立ち退き要請を受けている場合、その実施は2020年6月30日まで延期。
・家政婦を雇っている場合、雇い主の家族からINPS(国家社会保障局)への税金支払いの締め切りを、2020年6月10日以降に延期。
・車両免許証試験の休止。
・車両免許証、身分証明書の有効期間延長*。

*どちらも更新に手数料がかかるのと、手続きをするために人が集まることを防ぐため

・車検の期限延長。2020年7月31日に期限切れの分は、10月31日まで期限を延長。
・車両保険の新旧きりかえ猶予期間を15日延長して1ヶ月に。
・罰金を30日以内に支払えば30%の値引き(普段は5日以内)
・生活困窮者への食料配給のために5000万ユーロ(約58億円強)追加
・学校、遠隔授業奨励のために8500万ユーロ(約100億円弱)内訳:プログラム購入費=1000万ユーロ(約12億円弱)、教員のためのトレーニング代=500万ユーロ(約6億円弱)、遠隔授業を受ける環境を持たない児童学生への環境整備(タブレット等の購入費)=7000万ユーロ(約82億円)

労働者について

・これより2ヶ月の間の解雇を禁止
・一時休業中に支払われる給与補償として総額32億ユーロ(約3750億円)。対象は農業、漁業を含む全ての私企業。
・出勤して労働に従事していた正規雇用者(公務員および私企業)には、3月の給与に100ユーロ追加。ただし、年収が4万ユーロ(約470万円)以下の者が対象。追加は4月の給与分か、もしくは年内にされるものとする。予想総額は8億8050万ユーロ(約1033億円)。
・各種税金、社会保障金支払い期限の延期
・INPS(国家社会保障局)やAgo(自営業者用社会報奨制度)に登録しているフリーランスと自営業者、農業や観光業の期間限定就労者、INPSが運営管理をしている舞台関係者用年金基金に登録している年収5万ユーロ(約590万円)以下の舞台関係者等に、600ユーロ(約7万円)支給。ただし支出総額上限は1億7000万ユーロ(約200億円)。(上限までいったらどうするんだろう?)
・自営業者の2020年3月分の店鋪家賃の60%を税額控除。
・2020年2月21日以降の四半期の収入が昨年の同時期に比べて33%以上減少していた自営業者については、一軒目の自宅のためのローンの支払いを9ヶ月間一次停止する。総額5億ユーロ(約590億円)。
・観光、舞台、文化活動についての緊急補助金として、払い戻しの補填、もしくは発行日より1年有効の同額のクーポン券を発行。総額1億3000万ユーロ(約153億円)
・タクシーについて:運転手と乗客を隔てるパネル設置費用として200万ユーロ(約2億3千万円)。
・農業と漁業従事者について:過去2年間のローンに発生した利子分の金額を補填するため、1億ユーロ(約117億円)

企業について

・公的機関の事業向け保証・融資制度の強化は、この政策の最重要課題。農業、漁業を含むすべての業種が対象で、1企業への融資上限額は、現在の2倍の500万ユーロ(約5億9000万円)となる。

以上です。まだ流動的ですし詳細部分を省いてますが、大方の方針みたいなものは分かっていただけるかもしれません。

日本の経済政策について、3月23日付けのロイターの記事を読みました。

コロナウイルスへの緊急対応策としては、すでに第1弾で153億円、第2弾で4308億円の財政措置と1.6兆円規模の金融措置を講じた。

また、4月3日の日本経済新聞には、こうありました。

対象世帯は全国5300万世帯のうち、約1000万世帯を想定する。30万円を給付すれば、現金の支給総額は3兆円規模となる。
融資の規模なども含める事業規模は名目国内総生産(GDP)の1割にあたる56兆円を超える過去最大とする方向で調整する。国費などの財政支出は20兆円を上回る見通しだ。

最初の方に書きましたが、イタリアの経済政策の総額は、今のところ250億ユーロ(3兆円弱)です。確かに日本のGDPはイタリアの2.5倍ですし、人口も2倍以上ですが、日本における現金支給額だけで、イタリアの経済政策の総額を越えています。ですので、現時点での日本の経済政策の規模は、経済には全く素人の私の目には、かなり大きなものであるように見えます。

イタリアは経済政策などまったく用意するヒマもなく、感染爆発と共に全土封鎖に突入しました。もう一ヶ月近く、イタリアのほぼ全ての産業が止まっています。あまりにも重症者と死者が多すぎて、それどころではなかった、というのが実情だと思います。そして今、ようやく経済政策が動き出しました。でもイタリアの経済がこの先どうなるのかは、全く予想もつきません。

日本はイタリアのような爆発的感染が起こる前に、都市封鎖なしで、経済政策を発表できました。

おそらくギリギリのタイミングで(?)

日本では、(ネットで拾える報道やSNSによれば)「補償なければ休業せず」という批判の声がまだ多いように見えるのですが、これで休業していただけますでしょうか?移動制限が出しやすくなった、応じてもらいやすくなった、と考えてもいいでしょうか?

どうか日本の皆様、できるだけ家にいてください。


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