新しい法令が出ます
昨日、土曜日の夜11時半に、テレビで首相の演説が始まりました。余りにおそい時間だったので、前の会見か演説の再放送かなにかだと思っていたら、月曜日から施行される新しい法令に関するものでした。息を飲んで画面に見入ったイタリア人も多かったのではないでしょうか。
箇条書きではありますが、内容を下に訳します。
・イタリアは戦後最大の試練にいます。その現実を隠すことは一切していません。
・今起こっていることに関するニュースや映像は、この試練が終った後でも、我々の記憶の中に強く刻まれることでしょう。
・毎日、多くの方が亡くなっています。彼らは「数」ではなく、それぞれの家族の歴史なのです。
・我々がとっている方法は、その結果がでるまでにとても時間がかかるものですが、辛抱と責任と信頼をもって継続していくべきものなのです。
・家にとどまり、根付いた習慣を変えるというのがどれだけ難しいことかは、よく理解しています。でも、他に方法がないのです。
・こうすることによってのみ、私たち自身と、私たちにとって大切な人を守ることができるのです。
・しかし、「家にいる」という犠牲は、病院で自身を危険にさらしながら活動している人々が払っている犠牲にくらべ、わずかなものといえるでしょう。
・医師、看護師、警察、軍、市民保護局の人々、スーパーマーケットの店員、薬剤師、運転手、公共サービスに従事している人々、情報に携わる人々。これらの人々は、ただ毎日仕事に行っているわけではありません。国すべてにかかわる責任を果たしているのです。イタリアすべてに対する想いからくる行動なのです。
・本日、政府はもう一歩踏み込んだ方法をとることを決定しました。イタリア全土において、生活に必要な絶対必要最小限と判断される以外の全ての生産活動を中止します。
・労働組合や各種の業者団体と議論をし、生活と国を維持するために絶対必要とされる業種のリストを作成しました。
・生活必需品と食料に関する部門は、まったく縮小されません。ですので、皆さんには安心してもらいたい。スーパーマーケットの開店時間もそのままです。買い占めに走ることはありません。
・薬局、銀行、郵便、保険、金融、交通に関する業種の活動も保証されます。
・それ以外の業種に関しては、スマート・ワーキングとします。
・国の生産機能を抑制することになりますが、止めるわけではありません。
・難しい決断でしたが、この最も厳しい現状を、感染拡大を可能な限り抑制するためなのです。
・医療緊急事態が、全ての意味で経済緊急事態に変貌しつつあります。
・しかし、国家はここにあります。政府は、可能な限り早く再出発するための特別措置をとります。
・我々のコミュニティは、守るべき最も大切な財産、つまり命を守るため、鎖のように強く団結しなければいけません。
・この鎖がひつとでも外れてしまったら、(命を守るための)防護壁は弱くなってしまいます。我々をより大きな危険にさらすことになるのです。
・「後退」にも見える今日の我々の試みは、明日、再び走り出すためのものです。工場に、オフィスに、広場に、そして親戚や友人たちの腕の中に戻るためのものなのです。
・大事に思っていた習慣をしましょう。それは我々がイタリアを愛しているからです。しかし、勇気と未来への希望は捨てません。団結することで乗り越えましょう。
記者はいません。「いつこの感染は終息するのか」という誰も答えられない愚問を投げかけたり、「特別措置」の内容を細かく問いただす会見ではありません。首相の言葉をそのままに、ある意味の覚悟を持って聞く。そういう演説でした。それはそのままに、イタリアの状況を表しているかとも思います。
ここ数日、急に日本の友人知人たちから、「なにか必要なものがあったら送ります」というメールがくるようになりました。日本でイタリアに関するどのような報道がされているのかはよくわかりませんが、首相の演説にもあったように、生活必需品と食料は揃っていますので、今のところ元気に家にこもっております。ご心配いただき、本当にありがとうございます。
しかしその一方で、「花見ができない」「コンサートがなくなって悲しい」というようなコメントを日本の報道に見つけます。私の友人から直接聞くこともあります。そんなとき、私はどう答えていいのか悩んでしまいます。日本だけ、まるっきり違う次元に存在しているかのようで。
きっとイタリアからでは見えないたくさんの問題が日本にもあることでしょう。しかし、なにはともあれ死者数をご覧下さい。日本にお住まいの方々にとって今回のことは、世界各国に比べていかに日本の状況が良く保たれているかを再認識するための、貴重な機会になるのではないでしょうか。
(下は日本の厚生省のサイトからとったものです)
(下はイタリアの衛生省のサイトからとったものです)
どうか日本国内でも警戒を怠ることなく、十分にお気をつけください。