再始動の秋
伯父が亡くなり1年が経つ。
伯父の自宅と事務所の片付けも終わり
相続税の申告や全ての手続きが終わり
先月、一周忌を済ませ
ほっとした。
そして、伯母が認知症になり10年が経つ。
10年間で、4つの施設と1つの病院へ行き、その度に荷物を運び、分厚い資料に目を通しサインをし、身元引受人になって来た。
今の特別養護老人ホームに入居して6年が経つ。
私は、伯母と血縁関係がないので相続人ではない。
伯父が亡くなった時点で、伯母の身元引受け人や預かっているもの全てを、推定相続人である伯母の兄・Aさんに渡そう思っていた。しかし、Aさんは86歳、息子さんが昨年急死され、伯母のお世話は出来そうにない。成年後見人制度の話をしたが、伯母が莫大な動産・不動産を所有しているわけでもないので、この制度を利用するまでもないと判断されて、
「敬子さんに、このままお世話をお願いします。」 と言われた。
しかし、預かっているものを持っているのは荷が重い。
「私が持っているのは筋違いだから。」
と、今まで入居した施設の資料や病院などの領収書を段ボールに入れ、Aさん宅へ持っていった。
ほっとした。
肩の荷が降りるって、こういう感覚なんだ。
心が軽くなる。
やっと自分のやりたいことに集中できる。
さあ、やるぞー!
早速、机に向かい大きな図案を描き始める。
コツコツと針は持ち続けていたけど、小さいものばかり作っていたので、手の動きが鈍くなっているのではないか不安だった。
この10年間、色んな感情を得て、以前とは違う図案が描けそうだ。
スケッチをしようと庭に出ると、奥の方で赤紫の菊が咲いている。
昨年、伯父の祭壇に飾っておいた菊の花が1ヶ月も咲き続け、花瓶の中で根が出ていた。それを庭に植えたらどんどん成長し、今はたくさんの花を咲かせている。
まるで寂しがりやの伯父が「ここにいるよ、忘れないで」と言っているようだ。
再始動に、この菊を図案にしよう!
スケッチしながら菊の花に話しかける。
「おじちゃん、私は精一杯やるから。
ちゃんと私を守ってね。」
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『奥庭で「ここにいるよ」と咲き誇る菊の声の懐かし響き』