イノベーションのためのユーザー調査とは?『UXリサーチの道具箱』を読んでみた【#004】(後編)
こんにちは!
LOCAL LOGITEXの佐藤慶樹(けいき)です。
前回に引き続き、【読んでみたシリーズ】の第4弾として楢本徹也氏の著書『UXリサーチの道具箱』をご紹介します。
1.ジャーニーマップ
事業構築、特にマーケティング分野で活躍されている読者の方であれば「カスタマージャーニー」というワードは日頃から使用されていると思います。
前編で触れたとおり、プロダクトを利用するユーザー像をペルソナ(Personas)と言いますが、そのペルソナの体験をマッピングしたものが「ジャーニーマップ(Journey Map)」です。
ちなみに弊社LOCAL LOGITEX事業の立ち上げ当初、ジャーニーマップを下図のように作成しました。
このようにステージ(上の場合『認知→情報収集→商談/検討→契約→共有/継続利用』)は顧客の調査データに基づいて定義するものですが、「消費者行動モデルを適用できる場合もある」と著者は説いています。
ここで代表的な消費者行動モデルを3つ挙げます。
(1)AIDMA(アイドマ)
AIDMA(アイドマ)は1920年代にアメリカで提唱された古典的な消費者行動モデルと言われています。
消費者は、①まず商品の存在を知り(Attention)、②興味を抱き(Interest)、③欲しいと思うようになり(Desire)、④商品の名前を記憶して(Memory)、⑤それを購入する(Action)というものです。
①Attention(注意)
②Interest(関心)
③Desire(欲求)
④Memory(記憶)
⑤Action(行動)
(2)AARRR(アー)
AARRR(アー)は、デジタル時代の代表的な顧客ライフサイクルモデルと言われています。
①Acquisition(ユーザー獲得)
②Activation(ユーザー活性化)
③Retention(継続)
④Revenue(収益化)
⑤Referral(紹介)
(3)AISAS(アイサス)
AISAS(アイサス)は2004年に広告代理店の電通により提唱された消費行動プロセスです。本書には掲載されていませんが、Eコマース時代には欠かせないフレームワークですので、この場でご紹介させていただきます。
①Attention(注意) – プロダクトの存在を認知する
②Interest(関心) - プロダクトに興味・関心を持つ
③Search(検索) - パソコンやスマホでプロダクトを検索する
④Action(行動) - 実際にプロダクトを購買する
⑤Shere(共有) - プロダクトの情報を共有する
インターネットが一般的になったことで”共有”や”紹介”しやすいビジネス環境となり、AARRR(アー)やAISAS(アイサス)といった消費者行動モデルが登場してきました。
2.ジョブ理論
個人的に本書でもっとも感銘を受けたのはこの部分でした。
名著「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・クリステンセンは、本質的な顧客ニーズ(ドリルではなく穴)に注目することこそがイノベーションの源であるとして、『ジョブ理論』を提唱しました。
「人は”片付けるジョブ”のために製品やサービスを雇う」という有名な一節がありますが、例えば、人は「穴を開ける」ために「ドリル」を雇います。
当然のことのようですが、これを理解できるか(=顧客ニーズを的確に把握できるか)が、プロダクト開発に大きな差を生むことになると思います。
ジョブ理論について詳しく知りたい方は是非こちらも読んでみてください!
3.ビジネスモデル・キャンバス
ビジネスモデル・キャンバスは、ビジネスを構成する重要な9つの要素を1枚のシートで可視化し、ビジネスモデル(収益構造)を理解するフレームワークです。
一見複雑ですが、
左側3項目は「実現性(作れるか?)」、
右側3項目は「市場性(売れるか?)」、
下側2項目は「持続性(儲かるか?)」を表していると著者は言っています。
新規事業を立ち上げる際には、ぜひ使ってみたいフレームワークですね!
4.バリュープロポジション
ビジネスモデル・キャンバスの他にも、本書ではバリュープロポジション・キャンバスというフレームワークも紹介されていますので、興味のある方はぜひ本書を手に取って見てください。
ここでいうバリュープロポジションとは「①顧客が望んでいて、②競合他社は提供できず、③自社が提供できる」ようなプロダクトアイデアだと著者は言っています。
ただし、著者は「キャンバスは”絵に描いた餅”にすぎない。会議室で話し合ったことはすべて仮説であり、検証しなければ意味がない」と指摘しています。
Facebookが最初はハーバード大学の学生限定で始まったように、
Amazon.com が書物だけを取り扱うオンライン書店から始まったように、
NETFLIXがオンラインでのDVDレンタルサービスから始まったように、
小規模に始めてスケールしていくには「顧客のフィードバック」が欠かせないことを本書を通じて学ぶことができました。
リーン・スタートアップをもっと知りたい方はこちらも合わせてお読みください!
5.後編まとめ
ターゲットユーザへの理解を深めるため、ユーザー体験を可視化してジャーニーマップを作ってみよう!
ジャーニーマップ作成には消費者行動モデルを参考にしてみよう!
ジョブ理論を意識できるかがプロダクト開発の大きな差に!
実現性、市場性、持続性がひと目でわかるビジネスモデル・キャンバスを活用しよう!
仮説を終えたらオフィスを飛び出し、リーン・スタートアップで検証しよう!
6.最後に
さて、今回は2週にわたり楢本徹也氏の『UXリサーチの道具箱』をご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
また、前編でもご紹介した続編『UXリサーチの道具箱II ―ユーザビリティテスト実践ガイドブック―』もおすすめですので、あわせてお読み頂ければと思います。
本書のテーマは「調査手法」でしたが、Ⅱでは「評価手法」をテーマにしており、こちらもとても興味深い内容になっています。
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