【読んでみたシリーズ#003】たった一人の分析から事業は成長する!『実践 顧客起点マーケティング』を読んでみた(後編)
こんにちは。
LOCAL LOGITEXの佐藤慶樹(けいき)です。
今回は前回に続いて西口一希氏の著書『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』をご紹介していきます。
後編は、マーケティング戦略の立案について具体的な内容をお届けします。
(前編の記事はこちらから)
1.顧客ピラミッド
顧客ピラミッドは、顧客分析や分類を行うフレームワークのひとつで、商品やサービスの顧客を下記5つのセグメントに分類できます。
・ロイヤル顧客(認知あり/購買頻度・高)
・一般顧客(認知あり/購買頻度・中~低)
・離反顧客(認知あり/購買経験あり/現在購買なし)
・認知・未購買顧客(認知あり/購買経験なし)
・未認知顧客(認知なし)
これらは次の3つの設問による調査で作成可能です。
①そのブランドを知っているかどうか(認知)
②これまでに買ったことがあるかどうか(購買)
③どのくらいの頻度で購買しているか(毎月、毎日などの購買頻度)
とてもシンプルなフレームワークですが、マーケティング対象全体が把握できるので、戦略立案の議論の際には欠かせない分析だと思います。
顧客ピラミッドを作成したうえで、戦略の選択肢は次の5つに絞られます。
①ロイヤル顧客をいかにスーパーロイヤル顧客化するか
②一般顧客をいかにロイヤル顧客化するか
③離反顧客をいかに顧客に復帰させられるか
④認知・未購買顧客をいかに顧客化するか
⑤未認知顧客をいかに顧客化するか
どの戦略を選択するか、どのルートを辿るかが経営者やマーケターの腕の見せ所といえます。
2.N1起点のカスタマージャーニー
さて、N1分析とは。
本書では、ロイヤル顧客のN1分析をしていけば、認知から顧客化、ロイヤル顧客化までの変遷を捉えることができ、我々の想像も及ばない「異質な体験や認知形成」を見つけ出すことが重要と説いています。
我々がビジネスの現場で見聞きするカスタマージャーニーの多くは想像で平均的に作られていることがほとんどだと思います。
しかし西口氏は、本当の顧客の心を捉える商品企画や提案は、具体的な名前を持ったN1起点、N1分析で進めることが絶対に必要で、「実在しない顧客のジャーニーやペルソナは無効」と言い切ります。
具体的な名前を持つ「だれか」から聞き出すエッジの効いた事実こそ、ヒット商品を生み出す秘訣と言えそうですね!
3.真のロイヤル顧客をあぶり出す”次回購買意向”を調べる
自社ブランドだけを買い続ける顧客は極めて稀です。
ロイヤル顧客を対象に「次回のブランド購買意向」の調査をすると、自社ブランドを選ばない顧客も存在することがわかります。
いくら自社商品を大量に買ってくれるロイヤル顧客であっても、”次回もロイヤル顧客”とは限らないと西口氏は指摘しています。
アンケート調査で上記の顧客ピラミッドに加えて「次も購入/使用したいブランドは、以下のうちどれか」という質問をすることで、顧客を次のように分類できます。
①積極 ロイヤル顧客:大量に購入し、ロイヤルティも高く、顧客として失うリスクが低い層
②消極 ロイヤル顧客:大量に購入しているが、ロイヤルティは低く、顧客として失うリスクが高い層
③積極 一般顧客:購入量は少ないがロイヤルティが高く、①になる可能性が高い層
④消極 一般顧客:購入量は少なくロイヤルティも低く離脱の可能性が高い一過性の顧客層。(ほとんどの商品で顧客数が多いのは、この層)
西口氏は別の著書『顧客起点の経営』で、次回購買意向(=NPI®)を「成長ポテンシャルの先行指標になる」と書いています。
事業の成長率と高い相関関係があると言われているNPS®や顧客満足度と並び、注目の調査項目と言えるでしょう。
4.後編まとめ
(1)顧客ピラミッドでマーケティング対象全体を把握し戦略を立案すべし
(2)具体的な名前を持ったN1起点、N1分析でエッジの効いた「事実」を探るべし
(3)事業成長の先行指標となる「次回購買意向」を定点観測すべし
西口氏は「マーケティングの責任」を次のように表現しています。
今後、マーケティングサービスの開始を目指している我々も肝に銘じたいと思います。
この他にも、マーケティング戦略の肝となる「9セグマップ分析」やブランディング施策の可視化、著者実績によるケーススタディなどなど、非常に実践的な内容がわかりやすく書かれていますし、付録としてExcelテンプレートも付いているので、これまでマーケティング領域と距離を置いていた方も是非ご一読いただければと思います。
5.最後に
さて、今回は西口一希氏の『実践 顧客起点マーケティング』を前編と後編にわけてご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
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