見出し画像

海に眠るダイヤモンド

一番会いたい人に会えなくても、人は生きていける。
ちゃんと幸せを探していける。
そこにあるものがだんだん、かけがえのないものになり、そしてそれが、やがて自分の全てとなる。

何ものにも代え難い存在を産み、
愛の対象は増えることを知る。

生きていく。
そうするしかなかったから。
そうすることしか、できなかったから。

それが全てだった。
ひたすら生きてきた。

あの時は、
会いたくて。
会いたくて。
どうしようもなくて。

でも、
会えなくて。
会えなくて。
どれだけ待っていても。

会えなかったから。

だから、
懸命に新しい幸せを築きながら生きてきた。
時が経ち、すっかりそのことを忘れていることさえあった。


でも唐突に、その時はやってくる。
何かがキッカケとなり、ふたたび感情は湧き上がる。
押さえ込んでいた感情を。
考えないように避けていた感情を。

何十年もかけて築いてきた幸せも、培ってきたものも完全に飛び越えて。
今、していたことさえ、儚く散るほどに。
どちらが夢なのか。どちらが現実なのか。
自分が、ここに立っていることさえ忘れてしまうほどに。
足元が崩れ、夢の中で佇む自分と重なる。
記憶の中で、待っていたあの人の笑顔に会う。

シャボン玉が弾けるように夢は覚め、そして残る期待。
過去の想いは枯れることはなかったのだと気付き、
何十年もかけて違う幸せを築いて来たのに、まだ求めてしまうのか、と自分に問う。

今までの苦労は?
こうすることしかできなかった自分は?
必死にやってきたことは、間違っていたのか。
どうすれば良かったのか。

してもしようがない自問をし、
悪くもないのに、我が身に罪を着せる。

いや、全て間違っていない。
ちゃんと生きてきた。
目の前のことから逃げなかった。
ちゃんとやり遂げて来た。

答えは分かっている。
何度考えても、全てが正しい。
お願い、否定しないで。
そう自分を責めながら、
ただ、それが悲しいのだと涙する。
ただ、恋しいのだと、超えてきた時間が胸を抉る。

会いたくて。
会いたくて。
お互いに求め合っていたとしても。

会えなくて。
会えなくて。
どんなに求めていても。

それでも全てが正しい。

いま、過去に思いを馳せ、そして願う。
過去の自分が、幸せでありますように、と。
そしてあの人が、幸せでありますように、と。


知れば知るほど、過去が露になり、
知れば知るほど、心がざわつく。

あの時の約束は。
あの時の希望は。
置いてきぼりになった過去の私は。

全てを胸に留めて、ただ、会いたい。
でも、怖い。
でも、会いたい。
でも、、、


恐怖が消え去った後にやっと出会えた、あの人の眠っていた記憶。
そして一面のコスモスの先に見える、故郷。

ずっと覚えていてくれた。
叶えてくれていた、私の希望。
ただ、一緒にいることだけができなかった。

誰もいなくなってしまったけど、
私が覚えているから。全部覚えているから。
あなたは、私の胸の中にいる。
みんな、私の中にある。


お待たせ、とあの人が言う。
待ちくたびれた、と私が言う。

何十年も待って、心の中でやっと受け止めたプロボーズの言葉。

一輪の花を差し出し、
迎えに来たよと、あの人が言う。
もう、佇む私はいない。

現実に戻り、
より一層自分らしく生きることを誓う。

私が全てを背負って、
全てを抱きしめて生きていく。


□⋆。:゚・*◇:゚・⋆。⬛︎□⋆。:゚・*◇:゚・⋆。⬛︎

年始の休みでドラマ「海に眠るダイヤモンド」を観ていました。
最終回を2回続けて視聴し、2回とも号泣して、さらに3回目を見て、別日にTVerで観ることの出来る、第1話から3話までと、第9話を観て、また最終回を4回目で観て。やはり変わらず号泣しました。

主人公の朝子が愛おしくてたまらなくなり、書いてみたくなった文章です。

あまりに入ってしまったこのお話しを、1度吐き出さないと何となく次に進めない気がして。

途中視聴率が下がったりなど、苦戦したようでしたが、最後まで観て本当に良かった作品でした。

宮本信子さん(現代)と杉咲花さん(若い頃)の朝子。神木隆之介さんの2役鉄平と玲央。70年の愛と青春と友情。そして家族の壮大なお話し。

ちょっとのめり込みすぎちゃったかもしれません
(/// ^///)



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集