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思い出の詩ーー蘇軾

連日の猛暑、いかがお過ごしでしょうか?

今日はせめて涼しげな漢詩をと思い、西湖の詩をご紹介します。

これは、私が「漢詩を中国語で朗読する」原点になった、思い出の詩です。

中国に短期留学したときのこと、朗誦大会が行われるということで、一人ずつに課題が与えられました。私がいただいたのは、宋代の詩人蘇軾が杭州・西湖を詠んだ詩でした。

 飲湖上、初晴後雨  Yǐn húshàng、chū qíng hòu yǔ    
       蘇軾   Sū shì

水光瀲灔晴方好   Shuǐguāng liànyàn qíng fāng hǎo

山色空濛雨亦奇   Shān sè kōngméng yǔ Yìqí

欲把西湖比西子   Yù bǎ Xīhú bǐ Xīzǐ

淡粧濃抹総相宜   Dàn zhuāng nóng mǒ zǒng xiāngyí

【書き下し文】

  湖上に飲す 初め晴れ後(のち)雨

水光瀲灔(れんえん)として晴れ方(まさ)に好し

山色空濛として雨も亦(ま)た奇なり

西湖を把(と)りて西子に比せんと欲すれば

淡粧濃抹(たんしょうのうまつ)総(す)べて相宜(あいよろ)し


【詩の形式】七言絶句  第一句と第二句は対句になっています。

【桂花私訳】

水面(みなも)キラキラ、晴れてよし

煙る山々、雨もよし

西湖を美女に例えれば

薄化粧も完璧メイクも全てよし!

*「西子」とは春秋時代の有名な美女西施のことを指しています。

今回はかなり自由に「私訳」に挑戦してみました。イメージを優先させて訳しましたので、その点はご容赦くださいm(__)m

漢詩を中国語音で発音した初めての経験でしたので、とても印象に残っています。

作者:蘇軾(1036~1101)は宋代の詩人で、地方官として杭州にも赴任しました。彼が築いた堤防は、「蘇堤」と呼ばれ、西湖最長の全長2800mあり、「蘇堤春暁」として西湖十景の一つに数えられています。

また、蘇軾の号は「東坡」、あの有名な中国料理「東坡肉(トンポーロー)」は、彼の名前が由来となっているそうです。(*④参照)

たまたま手許にあった『西湖揽胜』( 浙江人民出版社)、『宋诗一百首』(上海古籍出版社)を参考にさせていただきました。現地で購入したことすら忘れてしまっていましたが、これから頼もしい「相棒」になってくれそうです

【参考書籍】
①『詳講漢詩入門』佐藤保  ちくま学芸文庫

②『西湖揽胜』( 浙江人民出版社)

③『宋诗一百首』(上海古籍出版社)

④『ブルーガイド わがまま歩き 上海・蘇州・杭州』実業の日本社

 

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