転職活動において工夫した点と気楽にいきましょうっていう視座
本記事の想定読者
・20後半〜30代後半のミドル転職者層
・外資系IT企業への転職活動を考えている人
7月末をもって約6年半を過ごした現会社を退職することにしました。
モバイル x SaaSの大波が世の中を席巻する中で、その波に乗って優秀な仲間達と仕事を楽しみ、新たなスキルセットを磨き上げ、結果的に多くの企業に少なからず貢献できた事は貴重な体験でした。外資IT界隈では1〜3年で転職が繰り広げられる中で、約6年半の在籍は長いキャリアであり、僕としてはそれだけ満足出来ていたんだなと思い返しています。
そして、約7年ぶりの転職活動を行なったので、転職活動で自分が実践した事や感じた事などを備忘録的にまとめる事にしました。あくまで僕の考えやアプローチですが、誰かの何かのお役に立てればと思います。
嵐の予兆がある中で、次を決めずに出発
2022年春先以降から特に聞くようになってきたリセッションですが、2022年に入ってから特にテック界隈は急速なダウントレンドに入り、4〜5月以降から外資IT界隈でもHiring Freeze(採用凍結)もちらほら聞くようになっていました。そのような絶妙にタイミングが悪い中で、5月末に転職を決心しました。転職理由としては極めて普通過ぎるけど以下です。
現会社で約6年半を過ごし、純粋にやり切ったので
New Trends x New Technologyの新たな挑戦をしたかったので
多くの人は次の転職先を決定してから会社(ボス)に伝える流れですが、僕の場合は特に何か戦略的に行動した訳でもなく、自分の心がそうしろって言ってたので転職活動ゼロの段階で、米国人のボスに対して「I am departing.」とだけ伝えました。幸いにも1on1を通して僕の最近の関心や考えを理解していたボスは「I trust your judgement. I will do everything for your best.」とだけ返してくれました。(米国では突然の転職やリストラは日常茶飯事で、同僚としてはお別れにはなるけど、ネットワーク的には繋がっていてまた一緒に仕事するから、よろしくね感覚のドライな処もあるかなと思います)。
ボスからはさらっとOKだったが、それ以外の人達から引き留めコール、メッセを頂きました。また、タイミング的にも「嵐が来る前に出来る限り早く次を決めた方が良い」と助言してくれた方も数名いました。
Reboot期間を持つ選択も有り
実は同じチームで米国で働いていた同僚が2022年1月末に会社を辞めました。辞める前に彼と話した時に彼は「次は特に決めていない。ずっと働き続けてきたから少し休もうと思っている。」と言い、実際に彼は3ヶ月位は休暇モードに入り、家族や子供との時間を楽しんでいました。そして5月下旬にLinkedIn経由で新たなポジションに付いた事を知りました。その時に純粋に「良いな、こーいう感じ」と思った自分がいました。彼に限らずですが、自分のためのReboot期間を設けて家族や自分の時間を大切にする人をたまに見かけていて、そんな元同僚の行動にも少なからず感化され、特に周りからブロックされる要因はない自分にとって、次の転職先も決めずに、今回は思い切ってReboot期間も有りかもなと思いました。なので、6月から転職活動をするけど、2〜3ヶ月程度はゆっくり夏を過ごそうかなと考えていたのが初動でした。
ただ、実際には6月1週目から転職活動を行い、幸いにも7月1週目には転職先がほぼ決定しました。結果的に7月末に辞めて、8月からは新天地でスタートを切ります(...あれ?ゆったりするって言ってた初動の気持ちはいずこへ?)。
今回の転職活動では、これまた普通過ぎますが、以下を行ったことが良かったと思います。
初期に自分自身の棚卸し
関心ある企業リストアップし、選択と集中で対応
上記を踏まえた資料を作成し面談でフル活用
外資IT界隈にいると外部エージェントから幾つも企業を紹介頂きますし、各社HRからもダイレクトリクルーティングを頂きます。それに流されて「ちょっと話を聞いてみる」レベルで色々な企業に手を付けていては時間の浪費に終わり、日常業務がある中では全部が中途半端になります。僕の場合は最初に10社を選定し、その後は4社にフォーカスして「全集中!」をしました。結果的に3社からオファーを頂き、残り1社は他オファーDeadlineもあり辞退しました。転職はご縁やタイミングもあるかと思います。
Next Career方向性を整理する
6月1週目に一番初めに行ったのは現状 vs Next Career希望の整理です。この時点ではまだざっくり感覚で整理です。ただ、これは自分の方向性や求める内容を一定レベルまで整理して、外部エージェントにお話する際に有効です。この辺の項目は外部エージェントを活用する場合は聞かれる事なので、予め整理しておくとコミュニケーションもスムーズですし、より精度が高い企業・ポジションを紹介してもらいやすくなります。
ビジュアルを駆使して、相手に理解頂く努力をする
興味ある企業を選定した後は実際にカジュアル面談に進みます。特にIT界隈ではオンライン面談が普通になっており、今回の転職活動でも99%がオンラインでした。オンラインの良い点は資料等を投影できる事です。面談は多くの場合、以下のような会話が含まれます。
その時に言葉だけで説明するのと、ビジュアルを含めて説明するのでは相手の理解に雲泥の差が出ると考えます。初めましての相手に対して、言葉だけで自分の多くを理解して頂くのは無理に近いです。相手へのリスペクトを込めて、僕はせっかく投影できるのあれば、その機会を思う存分に活用した方が良いと思います。
今回準備した資料要素は以下です。
上記をテンプレとして、企業毎・面接フェーズ毎で調整をかけています。面談によっては、3と4は省くことも多く、代わりに5番を重点的にお話しすることが多かったです。
結果的に9割の企業・面談者からは非常にポジティブに受け止めて頂けました。残り1割は伝統的な面接スタイルを重じているのか、資料投影をお願いした際に少し怪訝な顔をされ、いわゆる画一的な面接コミュニケーションが行われました。ただ、そのような会社(上長になるかもしれない人)はそもそもカルチャーフィットしないので僕の方からその場で面談継続をお断りしました。
このプロセスの良い点は以下だと感じました。
効率的・効果的に自分の事を面談者に知って頂ける
資料に落とし込む事で、自分の理解が深まる。加えて、該当企業、仕事内容や貢献できそうな観点が自分なりに整理できる
資料準備に対して先方に好印象を持って頂ける
僕のようなスタイルは実は珍しいらしく、多くの相手(中にはSVP・社長レベル)から非常に好印象を持って頂き「このスタイルは初めてだな〜〜。弊社の事をここまで調べてきてくれて純粋に嬉しいよ」と言って頂くこともありました。僕としては現在の仕事(営業・コンサル等)をする中で相手企業をリサーチした上でプレゼンするのは当然の事で、それを転職活動でもしただけの話でしたが、今回の転職活動で知らない部分が見えて勉強になりました。
フェーズによって資料と会話の割合は変える
インタビュープロセスでは資料活用の割合を以下のように調整しました。
前段として、IT界隈では正式なインタビューに進む前にカジュアル面談を実施してくれる企業が多いです。よって、両者の擦り合わせのためにもカジュアル面談をお願いした方が良いです。
カジュアル面談
HRこそ人事プロであり、HRに認められる事でそれ以降のプロセス(VP・CEO等への内部的な口添え含め)がほぼ決まると思います。それ故にHRとのカジュアル面談では自己紹介、自身の強み弱み、なぜ該当ポジションが気になっているのか、どのような貢献ができそうかを資料を通して説明できると良いです。また、募集ポジションで気になっている事を幾つでも聞いた方が良いです。
VP面談
VPレベル(Hiring Manager)との1次面談の場合、上記の基礎的な事に加えて、具体的な実務シナリオ、STARメソッドを用いた事例紹介も加えて、ビジネスプレゼン同様に臨む必要があります。また、カジュアル面談で確認した内容を踏まえて、業務に直結するような質問を複数行うことが大事です。
SVP・CEO面談
SVP・CEOレベルになると大抵30分しか時間を頂けません。限られた時間の中では、自己紹介やなぜ貴社なのかに関して資料で紹介するレベルに留め、それ以外は言葉のキャッチボールが大事になります。SVP/CEOレベルは部門全体や会社全体の視座になるため、そのような視座の質問を複数行うことが大事です。また、業務内容よりは人柄・性格、コミュニケーション姿勢(チームプレーが出来るか、周りに良い影響が出せるか)が重要で、特に会社のCore Valuesへの理解、それを実践してきたような事例などをSTARメソッドに沿って話せることが大事になります。
Experience Mappingで自分の棚卸し
当然ながら職務経歴書(レジュメ)はアップデートしますが、それは初歩的な事なので割愛します。
僕は自分自身の価値やキャリアを「XXXの企業/部署にいた」「XXXマネージャーを歴任した」ような肩書的な感じでまとめるのではなく(それは職務経歴書の役割)、「何をしてきた人なのか」という経験側面のConnecting the Dotsで整理して相手に知って頂くアプローチが良いかと考えて、7年ぶりの転職活動機会なのでMapping整理しました。例えば、僕の場合は以下のような感じです。
最初は上記のように細かく記載していましたが、実際の面談では初対面の方に多くを読んでもらう時間もないので以下のようにキーワードタグだけに変更しました。加えて今後のキャリアの方向性もやんわりとマッピングしました。そして、お話しする際は、過去の転職の際に、なぜ転職しようと思って、次の会社を決めたのかという判断軸も付け加えることも大事です。それらを整理することで、聞き手は「ストーリー」として腹落ちしやすいからです。
次のキャリア選定で大事にした事
Experience Mappingを整理して次のキャリアを考えている時に大事にしていたことは、経験の上書きをせずに、キャリアの流れと自分の興味関心エリアを加味しつつ、自分の「タグ」を増やしていく(スキルセットを増やしていく)事に視点を置きました。そして、お話ししている企業/ポジションにおいて、どのように貢献できそうかを具体的に考えて整理してみる事です。
因みに、転職活動の際には他の「モバイル x SaaS」「分析ツール x SaaS」「アドテク x SaaS」関連の多くの企業からもお声をかけて頂きましたが、僕にとっては経験の上書きになる事であり優先順位の最下層に設定しました。
また、過去の実績アピールは最低限にすることも意識しました。相手が見極めたい点は、どんな貢献をしてくれそうか?継続して学ぶ姿勢があるのか?チームプレーで他に良い影響を提供できそうか?等だと思います。
テクノロジーが日々進化し、働き方も進化する中で、過去の経験やノウハウは腐り、使い物にならなくなるケースの方が多いです。結局は生涯学習です。自分から能動的に学び、それを自分なりの昇華して、実践で応用でき結果に繋げる事が肝になると思っています。Experience Mappingは自分の過去と将来の方向性をConnecting the Dots的に整理して、相手に自分を理解してもらう上では効果的かと思います。ただ、上記に記載したような資料要素で準備を行い、相手から理解頂く事に努め、自分なりの言葉で貢献できそうな点をお話ししたり、質問したりすること自体が、相手には「この人は自主的に動き、学び、結果を出してくれそうな人」という印象が伝わるのかと想像しています。
番外編:キャリアにストーリーは大事なのか?
転職活動の後半(6月下旬頃)に、以下のコメントに目が留まりハッとしました。
彼の見解はある意味で「正」で、彼の言う通りにフィーリングや相性でキャリアを進めることも1つの解なんだろうなと思いました。同時に、少し気楽になった側面もあります。
僕は比較的に分析タイプの人間なので、Experience Mappingで自分の棚卸しをしてきました。もちろん、それは結果的に自分自身と面談者にとって有効だったと実感しています。ただ、例えば、ずっと同職種(例:B2Bセールス)をやってきた人にとっては「こちらのプロダクトの方が先進的で売りやすい、この企業の方が勢いがある」などが転職理由や次企業を決める点で事足りるのかもしれません。僕の尊敬する先輩も、某Top Tierコンサルファームに転職したけど2ヶ月で辞めていて、理由を聞いたら「なんか偉そうだったから」という理由で笑っちゃいました。まさに相性の問題だと思いました。そして、何より自分自身も今回オファーを頂いて最終的に決めた会社は「上長として自分と一緒に働く方のパッション、考え方、人柄がなんか良さそうだったから」です。
明日何が起きるか分からない人生ですし、もしかしたら僕も入社2ヶ月後には辞めているかもしれません。色々な人生の進み方、キャリアへの考え方があり、外部環境を含めて色々な事情やタイミング、そして一期一会の相性が大事な要素だったりもします。そのような意味で、佐藤さんのコメントは転職活動で少し張り詰めていた僕自身を気楽にさせてくれました。
これから転職活動をされる方に少しでも何かお役に立てれば幸いです。
以上