非認知能力を育てるには「学習」ではなく「環境」

 インターネット・AIの発展で、人間の知識活躍時代は終わりそうです。
「認知能力(学歴・勉学・IQなど)ではなく、非認知能力(忍耐力・協調性・EQ・マナー・礼儀など)が十分に形成されていることが、社会的に成功するためには重要だと言われています。(※非認知能力は他にも、計画力や自制力、リーダーシップ、やる気なども含まれます。)

 ”私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む”ポール・タフ著 の中でのポイントを自分なりに要約してみたいと思います。


■非認知能力は「学習」で身につけるのではない、「環境」である。
 「非認知能力は教えることのできるスキル」と考えるよりも、「非認知能力は子どもをとりまく環境の産物」ということで、読み書きそろばんのように教える・学習するというスタイルではなく、環境づくりが影響するということです。

■どんな環境が良いのか=「自律性」「有能感」「関係性」
 非認知能力を高めるためには、「自律性」「有能感」「関係性」を経験できる環境づくりが必要です。つまり以下の環境でできるだけ多くの時間を過ごすこと。
 「ポジティブな感情に満ちた雰囲気」をつくり
 「自律性を求める子どもの気持ちを敏感に感じとる姿」を示し
 「自分が自立した存在であり成長していると感じられる」
 「帰属意識の持てる」 環境であること。

「自律性」「有能感」「関係性」とは
「自律性」
 自分が選んで自分の意思でやっているのだという実感を最大限もたせ、管理・強制されていると感じさせない。
「有能感」
 やり遂げることはできるが簡単すぎるわけではないタスク。現在の能力をほんの少し超える課題を与えるとき。
「関係性」
 好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じるとき。

■具体的な働きかけ、環境作り
 チームへの帰属意識、目標を高く持つこと、自信を持つことを教える。
  ① 子どものプレーを注意深く、細かいところまで見つめる
  ② 子どもたちと一緒に熱心に分析し、ミスについて詳細まで率直に話す
  ③ どうしたらよかったか理解させる

 大事なのは温かい、正面から向き合ったやりとりです。自分たちの成功を信じてくれる大人、思いやりと敬意をこめて関心を向けてくれる大人から正しいメッセージを受け取ることができる働きかけ、環境づくりが必要です。

■失敗はチャンス、と捉える粘り強さが、打ちこむ推進力
 「粘り強さ」を持った子どもが他の子どもと違うのは、失敗からすぐ立ち直る力を持っている点です。何回かテストで失敗しても、教室で懸命に勉強することをやめない。複雑な課題に悩んだり、混乱したりしたときも、ただあきらめるより、問題を解くための新しい方法を探します。
 失敗は一時的なつまずきに過ぎず、学んだり改善したりするための貴重なチャンスであるというメッセージを受けとれば、挫折はその子どもをより勉強に打ちこませる推進力になります。

■失敗に対応できるマインドセット(心のありよう)
  ① 私はここに所属している。
  ② 私の能力は努力によって伸びる。
  ③ 私はこれを成功させることができる。
  ④ この勉強は私にとって価値がある。

■マインドセットを育む働きかけ
 子どもがより大きな課題、より難度の高い問題に取り組むようになるには、以下のメッセージを送り続けることです。
  ① がんばれば知能は伸びるという、「しなやかな心」をつくるメッセージ
  ② 高い期待を寄せているメッセージ
  ③ 子どもがきっとその期待に応えられると確信しているメッセージ
 
■結果、どうなるのか
 チームで仕事をする能力、人前でアイデアを提示する能力、効果的な文章を書く能力、深い分析思考をする能力、ある状況で覚えた情報やテクニックを見知らぬ新しい問題や状況に対して応用できる能力が養われます。
 解決方法のわからない問題に出会い、苦労してそれに取り組み(たいていチームメイトに助けられたり、教師からのサポートを受けたりしながら)、最後には答えを出す。そういう瞬間を経験するチャンスがあれば、しなやかな心について抽象的な、あるいは理論的な説明をする必要もありません。子どもたちはみずからの体験によって、自分の脳が努力や苦労を通じて育つことに確信を抱くようになります。


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