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忘れたくない

ぐんぐんブランコをこいで、どんどん揺れが大きくなって
視点も高くなって、怖い感覚とか消えてしまって
そのうちもっと揺れに慣れると、どこまでも大きく大きく
空を突き抜けるまで飛べるかな、と思ったり
風が心地よかったり
でも、ふと握った鎖を見るとサビサビで
手が真赤になっていて、とたんに切れるんじゃないかと
怖くなったり
一番高いところで飛び出したらどこまで飛べるかを
考えたり、でも実際に飛び出そうとすると
臆病な自分が現れて怖くなって地面に近づくたび
足でブレーキをかけてだんだん揺れを小さくして
最後は近くに情けなく降りて。
「あ〜ぁ、今日も飛び落りられなかった」
と、しょぼんとしたり。
次に乗った近所の子は、高く漕いだと思ったら
ぽ〜んと遠くまで飛び出して着地。
かっこいいな、と思ったり。

そんな感覚を忘れて何年になるだろう。
今、漕いだら飛び出せるんだろうか。

こうして書いてみると、人生の生き様のような気もする。
若い頃は他人のことなど考えずに
自分の道を突っ走れるだけ突っ走って。
そのうちに突っ走る楽しさも知るけれど
バランスが崩れたりして怖いことも覚えて
最後は安全なランディングの事を考えて
ブレーキをゆっくりかけ始めて着地したは良いけれど
もっとなんとかなったのではないかと
反省しきり。

一番忘れたくないのは
風をきってがむしゃらに漕ぐ感覚。
歳を重ねると分かったような気になって
動かない自分がいるわけで
経験の範疇でしか動かない自分がいるわけで

最後までちゃんと漕ぐ感覚は持っていたいよ。

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