【映画】首
日本史ものや時代劇にはほとんど興味がないのですが、今年は『レジェンド&バタフライ』と並んで織田信長の映画を2本も観るという珍しい年でした。
加えて、北野武監督の映画で劇場で観たのは、アノ『みんな~やってるか!』だけ、それ以外はTVで『その男、凶暴につき』を観ただけという状態でした。
『みんな~やってるか!』を観て、北野武作品を観なくなる気持ち、皆様にわかるでしょうか……
しかし今回『首』はなかなか、『その男、凶暴につき』と『みんな~やってるか!』を作った人の映画だなっていうのが感じられて味わい深いのでした。
『その男』のひたすら即物的な暴力描写に「こりゃー、日常的にケンカとか体罰で暴力に親しんだ世代の映画だなあ」と思ったものですが『首』で際立っているのがはげしい暴力で、ゴア描写と言って良い残酷シーンが次々と出てきます。
そして『みんな~やってるか!』にみられる、面白い人が面白いことやってるんだろうけど、カメラ(監督)が突き放してるもんだから大して面白くない、そんな無理のあるコント映画になってる感覚。
それに似たものもありました。
「風雲!たけし城」そのまま、という感じのビートたけしによる羽柴秀吉には結構笑わせてもらいましたが、ツービート時代から一貫してある、突き放したドライな笑いの感覚でした。
そんな残虐とブラックユーモアに彩られた戦国もので、映画としてはものすごく面白いです。
登場人物を駆動するのが彼らの間の恋愛感情であるというのがまた面白い。
「恋愛感情にも似た男同士の複雑な関係」とかでなくて本当にモロに男色だらけの色恋沙汰で、男同士のキスシーンや濡れ場?まで複数あるというエグさ。
女性の役者さんというと柴田理恵ぐらいで、あとはほとんど背景扱いでしか出てこないという徹底した女っけのなさも特徴です。
いや、綾瀬はるかとか浜辺美波とかレベッカ・ファーガソンが出た方が、私はいいんですが……
そういうことを補うに値する、スゴイ俳優たちが大挙出演して常に楽しませてくれたのも確かです。
特に目立っていた加瀬亮の信長、山野一の漫画みたいな顔のスチルがあったので描いてみました。山野一っぽい絵にはできなかったけど。
以下は……
ネタバレかな?
ネタバレすると、
織田信長が本能寺で焼き討ちに遭って死にます!
しかも、明智光秀に!!
……という冗談はさておいて
本能寺のシーンはやっぱり戦国ものの最大の見せ場という感じがあって、今回は信長の舞がないかわりに、彼が能を鑑賞するシーンで焼き討ちシーンの前振りをして盛り上げてます。
徹底的に非道なふるまいをし続けていた信長、その最期の場面も実にいい感じでした。
ただ、それまで映画を牽引していたモンスターたる信長が不在になったあとは、映画が少しトーンダウンした感じがあり、何か蛇足に引っ張られている感覚になりました。
ここが実に、『みんな~やってるか!』の感覚に近づいてました。
家康の逃亡のくだりの天丼(繰り返しギャグ)やら、安国寺恵瓊(六平直政)のオーバーアクトのギャグやら、「なんじゃこりゃ」って感じになってきます。
しかしこの終盤は、私は実に見事だと思いますね。
「アホか」というある人物の台詞やラストの台詞。
狂気の時代を突き放した視点で総括しようする映画のテーマがしっかり表現されてました。
やっぱりたけしってこういう人だよなあーという映画になってるのがスゴイなと思います。