『猫語の教科書』に学ぶ敬語のエッセンス②〜建前
世にも賢い猫が、なんとタイプライターを駆使して原稿を仕上げ、人間の家の乗っ取り方を指南する『猫語の教科書』。
猫好きにはたまらない本でしょうけれど、それだけでなく、実際に読んでみると驚くことに敬語のエッセンスが散りばめられていました。
なるほど猫があれほどに人間を魅了してやまないのは、見た目の可愛さに甘んじることなく、ここぞというときの敬意を十分に踏まえているからなのですね。
敬語は人を支配するためのものではありませんが、人間をいとも簡単に支配してしまう猫から学ぶ敬語のエッセンス、2回目です。
人間も従う規則には、猫も従おう
一番大事なのは自分であってよいと思います。ありのままの自分を受け入れることも必要です。なぜならそこがスタートになるのですから。
ただそのときに、置かれた環境ごとありのままの自分を受け入れることができないと、ちょっと周囲と摩擦が起きてしまうかもしれません。
今日は楽しいから日が沈まないようにと願っても、1秒たりとも日没の時間は変わりません。しおらしく願おうとも怒鳴りつけようとも変わりません。それは敬語をいくら駆使しようともどうにもならないことです。
世にも賢い猫は、そのことも説いています。
さすがに人間のことをよく観察しているだけあって、いろいろな場面に当てはまります。上記の文章を一部だけ変えた下の文はいかがでしょうか。(変更した部分を太字にしました)
「学校は先生にも従うべき規則だの規制だのがいろいろあって、思うとおりにはいかないってことをわかってあげましょう。だから学生も、勉強したいならいいつけに従うしかありません。」
「会社は上司にも従うべき規則だの規制だのがいろいろあって、思うとおりにはいかないってことをわかってあげましょう。だから部下も、働きたいならいいつけに従うしかありません。」
「旅行中」「学校」「会社」という場には、守らなければいけない「規則」や「規制」があり、それを決める側、守る側の上下関係があります。それらすべては眼前の状況からは見えないかもしれませんが、枠組みとして存在しています。この枠組みを理解し受け入れていますよということを言葉の上で示す一つの方法が敬語です。
逆の言い方をしてみましょう。
誰もが置かれているなんらかの枠組み、これを拒絶し受け入れないなら、適切な敬語は使えません。
そんなことを言ったって、うちの上司は(「先生は」だったり「親は」だったりするかもしれませんね)日によって言うことが変わるんだから、絶対に「従うべき規則だの規制だの」じゃなくて、適当なことを押しつけてくるんだよ!
そんな風に思われる人もいるかもしれません。
それについては、また次回、猫に聞いてみましょう。
それでは、また。
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