2つの「頂く」
さて、今回は日本語教師のtamadoca様より頂戴したお題について考えます。
※以前あべみょん様からも、ラジオで聞く敬語が気になるとリクエストを頂戴したことがありましたね。そのときの記事がこちら。
誤解のもとは「謙譲語」
tamadocaさんが今回、気になった内容がこちら。
同じ疑問を持っている人、実は多いんじゃないかと思います。
なので、なるべく分かりやすく説明します。
分かりづらかったら、どうぞコメントにてご質問くださいませ。
こう言うとき、「●」は目上です。目上だから「頂く」という謙譲語を使うわけです。
これは、誤用です。これでは息子を自分より偉いと言っていることになるからです。
それならば、下記も正解のはずです。
そうです。たしかに正しい使い方です。
そして、これは誤用のはずです……。
これが、なんと、誤用ではありません。
②も④も「謙譲語」に該当します。
それならば、②が誤用なら、当然④も誤用と考えるのが真っ当な思考です。
……これは、敬語を「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」と3つに分けて教えた学校教育が悪いのです。実は、謙譲語には2種類あり、それを、『敬語の指針』では「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ」と分けています。
しかし私は、「Ⅰ」「Ⅱ」って言われて分かるかいっ💢と思ってしまうので、この言葉を使いません。
誰を立てるかで敬語を考えます。
立てる相手が違う
先の①「プレゼントを●から頂いた」の「頂いた」は「もらう」の特定形(特別な形に変化する敬語)で、「もらう」という行為をする本人を立てず、「くれる」相手を立てます。
したがって、②「プレゼントを息子から頂いた」は誤用となります。
同様に③「社長の家で、奥様の手料理を頂いた」の「頂いた」は「食べる」の特定形ですが、これは話の聞き手を立てます。
よって、誤用となるのは④「息子の手料理を頂いた」のように、料理を作ったのが目下かどうかではなく、下記⑤のように聞き手が目下かどうかです。
「いやいや、それは①でも同じでしょ?」と思いますか?
下記⑥の文では親分を立てるために「頂く」が使われており、聞き手が目下かどうかは関係ありません。
使用上の注意
聞き手を立てるとはいえ、行為者が目上の場合は、さすがに使えません。
例えば、聞き手に失礼のないように話したいという場合であったとしても、下記のような場合は誤用となります。
さらに注意事項ですが、目上目下は状況により変わります。社長だからといって、「頂く」を使ってはいけないとは限りません。
例えば、聞き手が学生時代の恩師だとしたら、会社の社長は恩師から見たら何の関係もない人です。
「頂く(もらう)」と「頂く(食べる)」を使い分ける
見た目は全く同じ言葉ですが、「もらう」の「頂く」と「食べる」の「頂く」では、言葉の意味も敬語としての使い方も変わります。
注意して使い分けてください。
tamadocaさんは、既に自分の中で分かっていたのですが、「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」という知識が、かえって邪魔をしていただけなのです。
それでは、また。