お子様がレーンを廻っております~気になる敬語#30
いつも本質思考で刺激を与えてくれるデザインさまの記事『お控えください のメッセージ② - 語句不足・語順誤り +』で取り上げられていた画像が今回のテーマです。
試しにネットで調べてみると、やはり話題になっているようです。それがこちら。
このTwitterでは句読点や改行で改善を促していますね。
デザインさまは読点でごまかすのではなく、語順を改めるよう促していらっしゃいます。分かりやすい文章のためには、述語のなるべく近くに主語を置くのが基本ですから、ごもっとな意見ですね。
この語順を変えるという工夫だけでも、誤解は免れることができますが、敬語講師たる私としては、この問題に敬語の観点を加えたいと思います。
それでは、まいりましょう。
「です」「ます」を文の句切れでないところで使わない
文法的に言えば「節の中では対者敬語を抑える」ということになるので、これで分かる方は以下を読む必要はありません。ですが、なるべく小難しい言葉を使わずに敬語を説明したいので、よろしければお付き合いください。
「です」「ます」は文の句切れで使われる言葉です。したがって、これらの言葉が文中に出てくると、読み手は「、」「。」が続くことを予期します。
であるならば、「、」「。」を絶対入れてはならないところに「です」「ます」を入れてはいけないということです。
母が作りました(。)オムライスです。
たとえば、「お母さんが作ったオムライス」を目上に言おうと思ったとき、次のように言い直しがちです。
「母が作りましたオムライスです」
これが口語であれば、微妙な間やイントネーションで「母が作りました」が、次の「オムライス」を修飾していることが伝わります。しかし、文章に間やイントネーションはありません。
そして、目は構文を意識して文章を読みます。
すると「母が作りました」の後に、うっすらと句点(。)が見え、思考が突っかかります。「母が作りました」と「オムライス」がそれぞれ独立して見え、次におかしいと感じ、ようやく修飾ー被修飾関係にあると納得する経緯を辿るので、モヤっとしイラッとすることになるのです。
修飾ー被修飾にあるならば、決して切ってはいけません。したがって、このように修飾する部分では「です」「ます」は使わないのが基本であると覚えてください。
注意書きに戻ると、以下のように言い換えられます。
✖ レーンを廻っておりますお皿
〇 レーンを廻っているお皿
もう一度、注意書きの写真をご覧ください
実はこの写真の中に、もう一つ修飾している部分があるのを見つけられますか?
それがここです。
「直接触れませんようご注意をお願いいたします」
「直接触れませんよう」は「ご注意」に係っているのではなく、「お願いいたします」に係っています。
早く来ます(。)ように言ってきます。
開始時間になっても来ていない人がいたとき、「早く来るように言ってきます」と言う人はいても、「早く来ますように言ってきます」という人はいません。
これも「早く来るように」は「言う」を修飾している部分なので、偉い人に向かって話している場合であっても「ます」が抑えられるのです。
注意書きに戻ると、以下のように言い換えられます。
✖直接触れませんようお願いいたします
〇直接触れることのないようお願いいたします
修正例
敬語を適切に使えば、文章はすっきりと読みやすくなります。
それでは、また。
マンツーマンで講座を開催しております。オンライン開催も可能です。講座についてのご質問は、コメント欄もしくはサイト下部「クリエイターへのお問い合わせ」よりどうぞ。