「致します」と「いたします」の使い分け
先日、四重敬語を見つけ、それを記事に致しました。
その記事のコメントにて、プリント彩館ライトンの主でもあり、敬意を込めて大師とお呼びしている清水さまより、ご質問を頂きました。
漢字と平仮名の使い分けについて、特に意識していないという方も多いでしょうし、いつも迷うという方もいらっしゃるかもしれませんね。
結論からいえば、「補助動詞は平仮名」で終わるのですが、「補助動詞」なんて言われても分からない!なぜそうなるのか気になる!という方に向けて書きました。
理由も理論も興味ないという方は、まとめだけご覧くださっても大丈夫です。
漢字と平仮名の使い分け
大きな指針としては、次の二つがあります。
①常用漢字表
『常用漢字表』は、文化庁が「一般の社会生活において現代の国語を書き表すための漢字使用の目安」として決めたもの
②公用文における漢字使用について
『公用文における漢字使用について』は、①で挙げた常用漢字表を使用するにあたっての留意点を書いたもの
実際の運用は
自分しか見ない日記であれば気にする必要はありませんが、新聞などの公的なものは基本、この二つに従います。「基本」、と書いたのは、実際の文章を限られた表に当てはめるのは難しく、対策として新聞各社がウチはこうする、と定めた辞書を作らざるを得ないのが実情だからです。
なので、別に新聞各社の表記に相違があったとしても、どこが間違っているということではなく、解釈の余地があるというふうにご理解ください。
それでは本題の「致します」と「いたします」ですが、これは『常用漢字表』に掲載されている漢字です。であればいつ何時でも漢字表記にすればよさそうなものですが、そうもまいりません。
メインの動詞に敬意を添える敬語の使い方
『公用文における漢字使用について』を見てみましょう。
「次のような語句」という曖昧な書き方なので困るわけですが、例を見てみると、「報告していただく」「話してください」など、私の専門分野である敬語があるのがお分かりかと思います。
だから、敬語は平仮名で書けばいいんだな、と早合点しないでください。
ここで使われているのは、全てメインの動詞に敬意を添える敬語の使い方です。
「報告する」「話せ」でも間違いではないが、人間関係を表すには「…ていただく」「…てください」のほうが明確である
そんな使い方です。
「致します」と「…ていたします」
これを「致します」に当てはめると、こうなりますね。
「私が致します」(漢字表記)
「私が十分注意していたします」(平仮名表記……?)
あれれ?おかしいですね。
「て」の後に使われてはいますが、そういうことではないはずです。
これは、「致します」がちょっと特殊な敬語だからなんですね。
メインの動詞を「持つ」としたときに、「いただく」も「ください」もつなげることができます。
それに対し、「致します」だけはつながりません。
「て」を省いてよい敬語だけのお約束
「持っていただく」よりも敬度の高い言い方として「お持ちいただく」があります。
ほら! 「て」が消えました。
でも「いただく」がメインの動詞に敬意を添えているという働きは変わりません。
これをもって「致します」をもう一度見てみましょう。
メインの動詞に敬意を添える意味で「いたします」が使われています。
こういうときは、平仮名にしましょう。
まとめ
メインの動詞として使われているときは漢字。
メインの動詞に敬意を添える意味で使われているときは平仮名。
いかがでしょう。
スッキリなさいましたでしょうか。
それではまた。
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