『猫語の教科書』に学ぶ敬語のエッセンス①〜所有者敬語
世にも賢い猫が、なんとタイプライターを駆使して原稿を仕上げ、人間の家の乗っ取り方を指南する『猫語の教科書』。
猫好きにはたまらない本でしょうけれど、それだけでなく、実際に読んでみると驚くことに敬語のエッセンスが散りばめられていました。
なるほど猫があれほどに人間を魅了してやまないのは、見た目の可愛さに甘んじることなく、ここぞというときの敬意を十分に踏まえているからなのですね。
敬語は人を支配するためのものではありませんが、人間をいとも簡単に支配してしまう猫から学ぶ敬語のエッセンス、1回目です。
所有者敬語
この本では、お気に入りの椅子を自分のものにする方法についても説明されています。(人のものを自分のものにするのが所有者敬語ではありませんよ!)
人間の不思議な考え方を逆手に取って、ご主人を椅子から追い払うことができるのです。(この「不思議な考え方」が所有者敬語です)
敬語というと、「おっしゃる」とか「させていただく」のようなある特定の言葉の数々を指すと思われるかもしれませんね。そうすると、この引用文のどこに敬語が含まれているのかと戸惑われるのではないでしょうか。
しかし敬語とは、敬意を言葉として表現したものです。あなたが敬語と思っていらっしゃる一つひとつの言葉には、意味があります。そして、それらは、口先で終わるものではなく、行為としても表現されます。
例えば「ありがとう」という言葉を言ったとしても、行為からは全く感謝の気持ちが汲み取れなかったとしたら、この人は「ありがとう」という言葉(の意味)を知らない奴だと言われますよね。それと同じです。
行為としての所有者敬語の例
例えば、子どもを褒められて嬉しくない親はいません。そこで、目上の人が子どもを連れていたなら、まずは子どもを褒めるというのが定石です。小さな子どもなら「賢そうなお子さんですね~」とか。ある程度大きな子どもなら「立派なお子さんですね~」とか。これが社長のご子息ともなれば、高校入学、大学合格の都度、山のようにプレゼントが届きます。その多くは、子ども自身が会ったこともない部下や取引先からです。
他にも、このような行為は頻繁に目にします。例えば高級レストランに行けば、あなたのコートやカバンをそれはそれは丁寧に預かってくれるでしょう。敬意は人に払うものです。では、なぜ物にしかすぎないそれらを丁寧に扱うかといえば、その行為を通して、所有者であるあなたへの敬意を表すためにほかなりません。
ビジネスでも同じです。取引先の社長に対して、従業員の質の高さを伝えれば、それは社長を立てることになります。
敬意を払われるためにすべきこと
猫ならば、お気に入りの椅子に座った主人を追い払っても、かしこいと評価されますが、さすがに人間であればそうはいきません。
お世辞ではなく本当に敬意を払われるためには、プレゼントの宛先には自分の名前が書いてあったとしても実際の贈り先は親である社長であり、自分はそれにふさわしい行動をしなければならないと理解する子どもに育ってこそでしょう。
また、取引先が従業員の質を褒めてくれるだけでなく、客が口々に褒めるような従業員教育をすること、それが社長のすべきことです。
猫もこう書いています。
人に対して所有者敬語を適切に使うとともに、人から受けた所有者敬語を敬語であると理解したうえで謙虚に自らを高めていく、この両面ができてこそ、所有者敬語を使いこなしていると言えるでしょう。
次回は枠組み(建前)を受け入れる重要性について、猫から学びましょう。
それでは、また。
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世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。