「お入口」は誰を立てているか~気になる敬語#35
敬語講座を終えて、「質問を3回まで受け付けますから、どうぞ使ってくださいね」と受講者の方と別れた後、早速質問が届きました。
それが今回のテーマです。
頂戴したご質問
少しだけ文章を加工しましたが、ほぼ頂戴したままの質問を掲載しました。
さて、この件は既に記事にしてあって、とその記事を探したら、、、、、、ない!
なんということでしょう。何度も何度も目にしていたにも関わらず、まだ記事にしていなかったとは。
そして、こういう質問を頂戴できるとは、講師冥利に尽きます!
それでは、解説に参りましょう。
「お入口」が立てる対象は誰?
名詞の頭に付く(=接頭辞)「お」には、3つの使い方しかありません。
①主体尊重(その言葉が所属するその人本人を立てる使い方)
例)「お名前」ならその「名前」を持つその人を立てるための「お」
②受け手尊重(その言葉が所属するその人を立てない/そこに込められた敬意が向かう先を立てる使い方)
例)私があの人に書いた「お手紙」なら、私を立てず「あの人」を立てるための「お」
③美化語(人を立てない使い方)
例)「お昼」の「お」は誰も立てていない
まずは、「入口」という言葉に上記のどれが使えるか見てみましょう。
「入口」に所属する人がいるでしょうか。いれば①か②のどちらかです。いなければ③しかありません。
これも解釈の問題なので万人が同じ答えになるとは言えませんが、いないと見てよいでしょう。
お客さま専用の入口というものはあるかもしれませんが、それはあくまで専用であってお客さま「のもの」ではありません。
同様にデパート「のもの」とも言えません。
え?デパートの所有物じゃないの?と思われるかもしれませんので、別の例を使ってもう少し説明しましょう。
「お玄関」はどうかを考える
「自宅」はその人のものです。「自宅を所有している」と言えますし①主体尊重を使って「ご自宅」とも言えます。
それでは次に「玄関」について考えてみましょう。おそらくはどんな家にも玄関がありますが、「玄関を所有している」とは言えませんし「お玄関」とも言えません。もし言うならそれは①主体尊重でも②受け手尊重でもなく③美化語です。
そう言われても分かりづらいかもしれないので補足すると、「お玄関」と言う人であっても「あ、それお玄関に置いといて!」というように使うと思います。このとき、言う相手は自分の子どもであるかもしれません。ここから、「お玄関」が誰かを立てるために「お」を付けているわけではなく、美化語として使われているということが分かっていただけるかと思います。
これを踏まえて再度「お入口」を見るなら、恐らくはこれを書いた人はお客さまを立てる意図で「お」を付けているでしょうけれど、それは誤用であり、付けたとしても美化語にしかなり得ないということです。
それでは美化語としてなら正しいのでしょうか。
そんなことを次回書いてみようと思います。
それでは、また。
また、下記の講座では「お」や「ご」の使い方を体系立ててご説明しています。オンライン開催も可能です。講座についてのご質問は、コメント欄もしくはサイト下部「クリエイターへのお問い合わせ」よりどうぞ。