敬意の方向性を見分ける「受け手尊重」~敬語クイズ#7の答えと解説
敬語には機能があります。それは敬意を払う方向性を示すことです。
そしてその方向性は以下の3つです。
① 聞き手(読み手)
② 主体
③ 受け手
そしてそれぞれに、払う敬意の中身があります。
前回は、『受け手尊重』が表す敬意の中身について出題しました。
前回の問題(再掲なので飛ばして可)
問題ー1(営業マンが主体(=営業する側と営業される側があるとき、営業するその人))
明日は、初めて会うお客さまに自社商品をプレゼンします。営業マンの態度として、仕事に責任感をもって取り組み、お客さまを尊重している程度が高いのはどちらでしょう。
A:何を聞かれるかなんて分かるはずないんだから、準備なんかしようがないよな。会社が用意したパンフレットだけ持っていって何か聞かれたら「確認してきます」って受けておこう。
B:お客さまの会社情報からして、当社を選んだ理由はなんだろうか。明日聞かれるとしたらどんなことだろうか。質問されそうなことはなるべく準備して、少しでもお客さまに信頼されるように頑張ろう。
問題ー2(検討する側が主体(=検討する側と検討してもらいたい側があるとき、検討するその人))
ある製品の導入を検討するにあたり、明日はメーカーの営業マンがやってきます。検討する側の態度として、仕事に責任感をもって取り組み、メーカーを尊重している程度が高いのはどちらでしょう。
A:まずは説明を聞いて今日のところは帰ってもらおう。向こうは契約取るつもりで来るかもしれないが、俺は上司からとりあえず聞いといてって言われただけだし、こっちが客なんだからそれでとやかく言われる筋合いはないよな。
B:内情を何でも話すわけにはいかないが、なぜ自動券売機を検討していて、どういう効果を期待しているのかを分かってもらい、当社に合った券売機を教えてもらおう。この後、何社か券売機メーカーには来てもらうから、購入決定までには少し時間がかかることも伝えておかなければいけないな。
正解発表
そして、答えは両方ともBです!
回答してくださった皆さま、ありがとうございました。
しかし、答えとしてはBなんだろうけど、それって敬語と関係ないビジネスマナーの話なんじゃないの?と思われるかもしれません。
いえいえ、そうではないんです。
敬意は、お客さまや取引先に対するときのみに限定するものではありません。
ものごとは、うまく行かない前提で考える
文章を書けば評判になり、告白すれば愛されて、命令すれば誰もが従う、そんな人生を歩んでいる人に受け手尊重は必要ありません。誰のことも気にせず、自分のしたいように振る舞えばよいのです。
しかし多くの人にとっては、そんなときのほうが少ないんじゃないでしょうか。
校正に校正を重ねても誰の目にも留まらず、好きな人には愛されず嫌いな人からは付きまとわれ、自分の部下は指示に従わないのに部長の指示に二つ返事で従う自分が情けない、そんなことばかりが起きます。ともすれば「なんで自分だけがこんな目に遭うんだ!」「理不尽だ!」と全てを投げ出したくなるかもしれません。
「理不尽だ!」と傷つき怒っていては、いつまでたってもそこから動けませんが、受け手尊重の考え方を使って責任は自分にあるけれどそれを評価するのは自分ではないと思ってみると、次へ進めます。
問題1を使って、その先を考えてみましょう。
問題1の振り返り
問題1の営業マンAが客先からの質問に何も答えられず、次のアポも取れずに帰社したとしたら、こう考えるかもしれません。
自分はできなくて当然だと免責し、相手に変化を求めています。これは、言ってみれば自分尊重です。
一方、営業マンBが客先からの質問に何も答えられず、次のアポも取れずに帰社したとしたら、こう考えるかもしれません。
自分の思う通りになるなんて最初から考えない。受け手をありのまま受け入れ、その受け手のために自分を変えていく。その主体的で能動的な姿勢が受け手尊重です。
次週は、このクイズの最初に引用したてるとさんのコメントから、受け手尊重の粋を再度まとめたいと思います。
では、また。
敬語はシステム。敬語の考え方を知る講座【500円 OFF優待!】
この記事が参加している募集
世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。