『猫語の教科書』に学ぶ敬語のエッセンス⑧〜終わりに
世にも賢い猫が、なんとタイプライターを駆使して原稿を仕上げ、人間の家の乗っ取り方を指南する『猫語の教科書』。
猫好きにはたまらない本でしょうけれど、それだけでなく、実際に読んでみると驚くことに敬語のエッセンスが散りばめられていました。
なるほど猫があれほどに人間を魅了してやまないのは、見た目の可愛さに甘んじることなく、ここぞというときの敬意を十分に踏まえているからなのですね。
敬語は人を支配するためのものではありませんが、人間をいとも簡単に支配してしまう猫から学ぶ敬語のエッセンス、その最終回です。
人は孤独に耐えられない
猫は、人をどのような生き物だと見ているでしょうか。
そして猫は、
そんな存在です。
相手を操作しようとせず、自尊心を傷つけないように配慮し、ありのままを受け入れる。そんな敬意は、猫ととても似てはいないでしょうか。
この本には「敬意」という言葉は出てきません。その代わりに、「愛」という言葉が出てきます。
猫ならそうかもしれませんが、孤独に耐えられない人間は、愛のないご機嫌とりでも貪りついてしまうことがあります。ホストクラブやガールズバーにはまる男女や買い物依存症などを想像してみてください。
猫のように強く、猫のように優しく
だから、人は自分であることを受け入れ、孤独に耐性を持ちましょう。
そして、人に何かするより前に、ただそこにいて「あなたがいてくれてよかった」ということを伝えましょう。
この本に出てくる猫は、飼い主のめんぼくを守ること、客の前で恥をかかせないことを繰り返し説いています。この「めんぼく」ですが、「顔を立てる」「顔に泥を塗る」なんて言い方もしますよね。
実は、この「顔」、中国でも同じように使われますし、敬語を含む敬意についてのポライトネス理論(ブラウンとレヴィンソン)でも「フェイス」という概念が重要なのです。
敬意は世界共通
この本の著者は、ポール・ギャリコ。
ニューヨーク生まれのアメリカ人です。
ですが、これまで見てきたように、敬意という言葉こそ使われてはいないものの、書かれている内容は敬意そのものです。
日本には敬語という独特な文法体系があるがゆえに、「日本だけが封建主義で、海外は他者に敬意など払わない、それが対等ということだ」というような誤解があるように思われます。
しかし、そんなことはありません。敬意の表し方は文化によって異なりこそすれ、敬意が不要な社会など想像すらできません。
日本には、敬意のエッセンスが詰まった敬語という文化があるにもかかわらず、それがかえって、敬語を使いさえすれば敬意を表したことになるというような安易な誤解に流れているようで、もったいない限りです。
これからも、日本の敬語を広めるべく活動していきますので、少しでもいいなと思った方は、拡散をよろしくお願いいたします。
それでは、また。
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