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『チェンソーマン(2022)』9話まで観ました。

最近では珍しく毎週楽しみにしておりました。
観終わった感想としては誰にもおすすめはできないけど「こんなの待ってました、サイコー!」なのでした。

この作品が週刊少年ジャンプに載ってたというのが信じがたい。元気勇気友情だったか?、そんな少年ジャンプのキーワードには全く沿ってはいないではないか。それにタバコは吸うわ酒は飲むわベッドシーンはあるわで、「わざと描いてはいけないキワキワを描いている」ようにしか思えない。私たちが問題が起きないように怖気付いて作った鋼鉄の安全ラインを、チェンソーを使ってぶった斬ろうという魂胆だったのであろう。

父親の借金で自分の臓器を売っている少年に感情移入できる小中学生なんて、日本にはほとんどいないであろう。一話目から生きるか死ぬかの崖っぷちにいて、そこからスルスルと抵抗するまもなく落ちてしまう。そのどん底で悪魔と融合して生き残ることになってしまうという、人ではない者のお話です。

ヒーロー(と言っていいのかどうか)の動機は時代によって移り変わる。昭和なんかか「お金持ちになって親にいい暮らしをさせてやりたい」だったりしたが、平成とかになれば「自分がいい思いをするためだけ」と個人主義が大きくなり、令和のチェンソーマンになると「女の胸を揉むため」ともうわけがわからないことになってくる。

仲間のために命をかけるわけではなく、仲間の一人の命を犠牲にしたらみんなが助かるならば「みんなが助かるならあんたが死ねばいい」と言う。家族なんかは出てこないし、むしろ家族のせいで自分がヒドい目にあっているような人が出てくる。

お話を続けるにあたってネタがなくなってくると新しいキャラクターを登場させるみたいなものがある。味の無くなってきたガムに新しいガムを投下するようなものであるが、それも今作はぶった斬ってくれる。「このメンバーでこれから悪魔と闘っていくわけですが」と言い終わる間もなく全員が無慈悲なことになってしまう。

今作の女性の描き方もちょっと特徴的で、男性側の幻想でカワイイとかセクシーとかに分類されるようなキャラクターがいないように思う。
デンジの上司となる公安対魔特異4課のリーダーのマキマは、優しく人懐っこい一面と非情で容赦のない冷徹さを併せ持ち、つかみどころがない性格。であるし、
魔神であるのに悪魔を闘うパワーは現実にいれば間違いなく関わり合いになりたくない人物であるが(以下wikiから引用)、今作の一番人気キャラである。

非常に自己中心的かつわがままな性格。言ったことをすぐ覆す上に虚言癖があり、かつ無責任で都合の悪い事態は責任転嫁する。元が悪魔だった故にプライドが高く傲慢だが、自分より強い相手には逆らわず自己保身を優先する傾向にある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/チェンソーマン

私なんかは「きっとこういう話だろうな」と思ってて、その通りになるとつまらないと思っていた。自分の想像すら越えないお話には苛立ちがあった。でもそんなこといちいち言ったってしょうがないんで黙って見ていただけだ。
「このキャラクターはこういう情けないキャラクターで、簡単に殺されたりして相手の強さや残酷さを思い知らされるのね」なんて考えようとしなくても勝手に先読みしてしまう。そういうのを越えた展開を見てはじめて「こういうのを見たかったんだなあ」と気がついたりする。

ある時期に人気がある作品があるとそれをお手本にして、それに似せたものを多くの人が目指すような流れができてしまう。そういう人気作品の影でいくつもの『間引かれた作品たちの無念な思い』みたいのが積み重なったりして、それが突然雪崩みたいに崩れることがある。
『チェンソーマン』はそういう流れで出てきた作品なんではないかと思った。
(私なんかは大友克洋の『童夢』を読んだ時に、「なんじゃコリャあ!」と自分の血が熱くなっておかしな流れ方をするような感覚があった。『進撃の巨人』にも『メイドインアビス』そういうのを感じた)

「人を呪わば穴二つ」という言葉がある。
他人を呪って殺そうと墓穴を掘る者は、その報いで自分のための墓穴も掘らなければならなくなる という意味。誰かにやったことは、まわりまわって自分に返ってくるって意味であろう。
悪魔の力を借りて攻撃するものはとんでもない威力の攻撃が可能になる。しかしその代償を悪魔に支払わないといけない。そうやって悪魔と闘う者たちがいる。
でもそんなもんではとうてい返せないくらいの力を使うにはどうするのか? 別のものを犠牲にするのである。必ずしも自分でその代償を支払う必要はないし、そんなことを毎回していたら身体がいくつあっても足りないし、そんなことではいつまで経っても悪魔に勝つことはできない。

そういう『このお話の世界の土台みたいなもの』がしっかりとあって、その上でストーリーが進んでいくのではじめから最後まで「あきれたり引いたりせずに」に見れたように思う。
残酷な映像描写はあるし教育上よろしくないお話であるとは思うので、抵抗のある人には安全ラインの内側にある別の作品を見るのをおすすめする。なにせこの作品は、安全ラインをぶった斬って外に飛び出そうとするような作品なので。

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