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『TITANE チタン(2022)』を観ました。

以下の序盤のあらすじを見たら「これはカンヌで賞獲ったからきっといい作品なんでしょ、などという軽い気持ちで見たらいかんやつだ」と賢明な読者ならお気づきになることでしょう。
えげつない(いい意味で)映画なんで観る人を選びます。私は大好きです。

少女アレクシアは幼い頃自動車事故に遭い頭蓋骨にチタンを埋め込む。
成人したアレクシアは、ショーガールになりモーターショーで情熱的なダンスパフォーマンスを披露している。
アレクシアがシャワーを浴びていると、何者かが扉を何度も激しく叩きつけ突き破ろうとしていた。一旦収まったところで扉を開けると、ショーで使っていた車が自らの意思をもち誘惑してくる光景を目の当たりにする。彼女はそれに反応し、意思をもった車と全裸で激しい性行為をする。

https://ja.wikipedia.org/wiki/TITANE/チタン

主人公のアレクシアに感情移入できる人なんてほとんどいないであろう。ヤバい奴を自分に被害が及ばない距離から離れて見るような感覚だ。それでもなんで見てしまうかと言うと、こんなことしてる人がどうなるかが気になってしまうからだ。
確実に不快な場面が次々に出てくるのに何故だが見てしまうのは、「俺をイラつかせるからこういうことになるんだ」的な自分勝手な行動原理ではありながら、アレクシア側からしたら「降りかかる火の粉は払ってるだけ」なんじゃないかと思われるからだ。
サインが欲しいとアレクシア追いかけてくる男の完全に身勝手な言い分「君はまだ俺のこと知らないけど、いつか特別な関係になれんじゃねえか」をなんとかがんばって聞き、次にアレクシアがこの男を黙らせる時にはチラチラと周りを気にしたりはしないでいきなり行動する。それから自分がどこでなにをしたのかに気がついていく。間違いなく自分の損得とか頭で考える計画的な行動するタイプではない。

はじめから悪いことをしようとしてするタイプではなく、気がついたら取り返しのつかない状況になっているタイプを見て思わず笑ってしまうのは何故なんだろう。今作はかなり目を背けてしまう場面も多い(というか、ほぼ目を背けてしまう場面)のに見るのをやめないのは、今作に強烈に引き付けられていて、アレクシアがどうしたいのか?何に向かっているのか?を最後まで見たいと思わせるからだ。

アレクシアの行動のほぼ全てに無言でツッコんでいた私。
「なにをしとんねん」「そこでヤッたらいかんでしょ」「そんなんすぐバレるに決まっているし」「それ全然隠せてないから」という私のツッコミも虚しく、アレクシアの行動は取り返しのつかない方向に加速していく。

どこまで作り手が考えてたのかわからないが、もしかしたら偶然こういうことになってしまった作品なのかもしれない。狙ってカンヌの賞を取るようなタイプではなく、たまたまカンヌの審査員長のアメリカの映画監督スパイク・リーが血迷った結果、最高賞であるパルムドールを獲るようなことになったのではあるまいか。
たしかに私は「はじめから最後まで目が離せない、ずっと面白い」と思ったが、決して知り合いにはおすすめできない。「こんなのが面白いなんてあなた普通じゃないわ」などと言われて人間関係壊したいくないからだ。
それでも「なんだか面白そう」と思うような人がいれば覚悟して見ればいいとは思うが、それでどう思うかは私は関知しない(というか関知できない)。

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