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10月1日-24日|村上春樹『午後の最後の芝生』フェア

村上春樹が作家デビュー3年後に発表し、いまなお多くの読者から愛され続けている短篇『午後の最後の芝生』。
思春期は過ぎたけれど、大人になったというにはやや頼りなくて甘い乾いたような微妙な頃の回想として、喪失を振り返る物語。

 やれやれ。
 僕はほんとうにやれやれと思った。
 十四、五年前といえば、僕が芝生を刈っていたころじゃないか。
     *
 記憶というのは小説に似ている、あるいは小説というのは記憶に似ている。
 僕は小説を書きはじめてからそれを切実に実感するようになった。
記憶というのは小説に似ている、あるいは云々。
 どれだけきちんとした形に整えようと努力してみても、文脈はあっちに行ったりこっちに行ったりして、最後には文脈ですらなくなってしまう。なんだかまるでぐったりした子猫を何匹か積みかさねたみたいだ。生あたたかくて、しかも不安定だ。そんなものが商品になるなんて――商品だよ――すごく恥かしいことだと僕はときどき思う。本当に顔が赤らむことだってある。僕が顔を赤らめると、世界中が顔を赤らめる。

『午後の最後の芝生』より

本書のフェアを書店フロアにて開催いたします。
物語の挿画として描かれたものの、一度雑誌に発表されたきりとなっていた盟友・安西水丸のイラストレーションがありました。
フェアの中で、こちらのイラストレーションのジークレープリントの展示・販売を行います。※オンラインでは10月6日より販売開始予定。

風が抜けるイラストレーションが心地よい。

10月24日までの期間限定受注
https://www.keibunsha-books.com/shopbrand/anzai
ジークレープリントとは、高性能インクジェットプリンタを駆使し版画用紙にプリントする現在最先端の版画技法です。
※安西水丸事務所公認の保証印がつきます。
※各種販売点数が決まっています。お品切れでの再入荷はありません。

安西の没後10年を機に、遺されていた原画をもとにした、ふたりの貴重なコラボレーションを書籍と絵画でお楽しみくださいませ。


担当:原口

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