サッカー×まちづくり、スポーツによる地方創生の新しいモデルとは?
宮崎県都農町のプロサッカークラブ「ヴェロスクロノス都農」が、ホームではじめての試合、念願の観客も迎えての開催、7対0で快勝しました。
1万人規模の町で、チーム名に県ではなく町を入れている事例はあまりないのではないでしょうか?
それだけ、「ヴェロスクロノス都農」が町にコミットし、サッカーだけでなくまちづくりにも関わっていることを意味してます。
「ヴェロスクロノス都農」の前チーム名、J.FC宮崎が都農町をホームタウンに、そして所属するプロサッカー選手が、練習後に「地域おこし協力隊」(一般社団法人ツノスポーツコミッション)として農業や空き家保守、町のPRのお仕事をしていることや、高校生のアカデミーを創設しています。
地方創生・まちづくりにとって、スポーツは重要や役割を果たします。サッカー、Jリーグの事例を踏まえ、都農町における先進的な取り組みをご紹介します。
1. サッカーの経済効果
プロサッカーの市場規模は、2016年で年間937億円。
イギリスでは5倍近い4,674億円と大きく差がついていますが、それだけポテンシャルがあるということ。
Jリーグのクラブチームが地域にもたらす経済効果は数億円から数十億円。
都農町と同じ九州の大分トリニータで見ると、
経済効果:約25億円
雇用効果:322人
税収効果:約4,000万円
都農町のような人口1万人、過疎化した町にとって、直接の経済効果以上に雇用の効果は大きいです。
選手以外にも、監督、コーチ、トレーナー、営業、広報、経理、事務、施設運営など、クラブチームの運営のための雇用が生まれます。
また、選手やスタッフ経験者とその家族の移住で、人口増の効果も期待できます。
2. Jリーグによるまちおこし事例
①鹿島アントラーズ
Jリーグによるまちおこし事例として元祖ともいうべき鹿島アントラーズ。
最近では2万人の動員スタジアムを強みに、「未来の街づくり」の最先端技術の実証実験をしているとか。
企業誘致にもつながりますし、地元市民も、実験成果を還元してもらえればメリットしかありませんね。
参考にしたいケースです。
②FC今治
岡田武史さんを軸に、より地域密着を掲げるFC今治。
発足わずか5年で5,000人収容スタジアムを建設するのは夢のような話。
それだけ、新しい資金を調達できるということで、町にとってはわかりやすい経済効果が期待できます。
③佐賀県みやき町
人口2万5千人の町、佐賀県みやき町では、町が主導して「女子サッカーのまち」を宣言しています。
なでしこジャパンで、一躍脚光をあびた女子サッカーですが、競技人口はまだまだ少ないようです。
まだ小さなマーケットながら、みやき町のように、集中して聖地を目指す動きは、小さな町の戦略として、おおいに共感できるものです。
3. 都農町が目指すスポーツによる地方創生
都農町では昨年8月に都農町、株式会社J.FC宮崎(現名称:ヴェロスクロノス都農)、一般社団法人ツノスポーツコミッションの3者で「つの職育プロジェクトに関する協定」が締結されました。
Jリーグ昇格に向けてサッカー環境を整備したいヴェロスクロノス都農の所属選手が、地域おこし協力隊(所属は一般社団法人ツノスポーツコミッション)として、町の農業や福祉、PRの仕事を兼務する日本でも珍しい事例となっています。
昨年2月、サッカー選手および家族の合計60人が都農町に移住し、町にとってはサッカークラブができたことと合わせて、貴重な労働力としても貢献してもらいウィンウィンの仕組みが動き始めています。
さらに、将来的には、自分たちが育てた選手を昇格させていくことが必要でスポーツアカデミー設立をすることになりました。
高校生は宮崎総合学院と提携して、通信課程で学べる仕組みを作り、安心してサッカーに打ち込めます。
現在、高校生10人、中学生が15人が所属しています
ヴェロスクロノス都農、一般社団法人ツノスポーツコミッションが、当初より町に対して提供できるメリットを3つあげていました。
①外から人を呼ぶ(交流人口)
②移住者を増やす
③関連する企業の誘致
3つめの企業誘致について、企業側のメリットは、サッカークラブを通してまちづくりに貢献できること。
ヴェロスクロノス都農が目指しているのは、「サッカーチームが地方創生する」のではなく、「地域おこししている人がたまたまサッカーやってる」こと。
・Jリーグ入りを目指すサッカークラブ経営
・地域おこし協力隊としてサッカー選手のセカンドキャリアの職育
・高校生の育成
都農町で進めるサッカーの三本柱は、これからのスポーツによる地方創生の新しいモデルになりうる可能性を秘めてます。
(記事協力)一般社団法人ツノスポーツコミッション