✨全日本学生馬術大会2023✨~前編~
こんにちは!研究ニュースTMの森田美菜です。
11月1日から6日まで兵庫県の三木ホースランドパークで行われた全日本学生馬術大会2023の取材に行ってきました。
この大会は学生馬術部の頂点を争うもので、全国各地の予選を勝ち抜いた人馬のみが参加できます。馬術部員たちの憧れであり目標とも言える大会です(全日本学生馬術大会は通称「全学」と呼ばれているため、以下、全学と記します)。
私は大学時代、馬術部に所属して4年間全力で馬術に励みました。これから説明する3競技すべてに出場した経験があります。
そんな私が思う学生馬術の魅力、楽しさをお伝えしたいと思います!
競馬が好きな方、馬術を見たことがない方にも良さを知っていただけると嬉しいです!
🐴 馬術ってどんな競技?全学とは?
11月1日に開会式が行われ、その後5日間で5つの競技が実施されました。
2日~3日 全日本学生賞典障害馬術競技大会
2日 M-D障害馬術競技大会
3日 第3課目A馬場馬術競技大会
4日~5日 全日本学生賞典馬場馬術競技大会
5日~6日 全日本学生賞典総合馬術競技大会
名前が似ているので、太字で強調した部分にご注目ください。
障害はその名の通り、馬場内に設置された障害物を飛び越えて、決められたコースを回る競技です。
障害物と障害物の間は距離が決められているため、選手たちは自分の足でコースを歩いて下見をし、「私の相棒の馬ならこのくらいのペースで、このくらいの距離から障害物に向かえば上手に飛べるな」ということを考えてルートを決め、試合に挑みます。
馬場は長方形に囲われたラチの中で決められた演技をし、騎乗者や馬の動きの美しさ、演技の技術に審判が点数をつけて審査をする競技です。
選手は燕尾服を着用し、馬は馬体をピカピカに磨かれ、たてがみを綺麗に編まれて試合に臨みます。イメージはフィギュアスケートに近いと言えるでしょう。
総合は障害と馬場に加え、馬術競技場内の山道や広場に設置された障害物、池などを飛び越え、駆け抜け、ゴールを目指す“クロスカントリー”を行います。そして、3種目の合計点数を競います。
クロスカントリーは他の2種目に比べてスピードが出ますし、障害物は固定されたボリューム感のあるもので迫力満点。私自身が出場した時はアドレナリンがドバドバ出ている感覚がありました……。
見ている方もドキドキします。
オリンピックでも同じように障害、馬場、総合馬術競技が行われています。
「馬術競技を見たことがないのでイメージが浮かばない😥」という方は、JRAの公式YouTubeにオリンピック馬術競技のダイジェスト動画がありますので、こちらをご覧ください。
https://youtu.be/uus7ustmRpI?feature=shared
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さて、今回観戦したのは「全日本学生賞典障害馬術競技大会」です。
障害競技とひとくくりに言ってもいろいろなルールがあり、全学は現在、2回コースの走行を行う『2回走行』というルールで行われています。
障害物の高さは最大で130cm!
馬術はまだまだマイナーなスポーツですので、今回は全日本学生賞典障害馬術競技大会のルールの要点を説明します。
各大学5人馬まで出場が可能で、そのうちの3人馬以上で団体を組みます。
団体としてエントリーしたメンバーのうち、総減点の少ない3人馬が団体の成績としてカウントされます。また、同点の場合はその3人馬の総タイムが速い方が上位になります。
団体を組まなかった人馬は個人で出場します。
順位は減点の少なさに加えて、タイムの速い方が上位になります。
また、団体で出場している人馬は個人戦も兼ねているため、試合終了後には全出場人馬の順位が発表されます。
減点されるポイントは、タイム減点と障害減点です。
タイム減点は、スタートしてからゴールするまでのタイムが規定タイムを超えると、1秒ごとに1点減点されるものです。
障害減点には、①障害物の落下、②障害物への反抗があります。
①は障害物を飛び越えた際、支柱にかけたバーに馬の肢が当たってしまい、バーが落下して減点されるものです。4点減点されます。
②は向かっていった障害物を飛ぶことを馬が拒否して止まってしまったり、横に逃げてしまったり、通るルートがおかしくなって円を描いて走ってしまうと減点されます。1回目は4点減点されます。
ただ、2回目は失権になり、そこでコース走行が終了となります。
他にも細かいルールはありますが、これが基本。
簡単に言うと、
「障害を落とさず、反抗されず、速くゴールした人が勝ち!」
ということになります。
💁🏻♀️ 競技中の観客席より
馬術は紳士淑女のスポーツと呼ばれていて、静かな会場で厳かに行われるイメージがあるかもしれません。
もちろん馬は繊細な生き物ですので、大きな声を出したり、走り回ったりする行為は禁止されています。
ただ、それぞれの馬術部を応援する部員やコーチ、OBOGに加え、一般の観客も多くいるため、競技中の観客席は熱いまなざしでいっぱいです。
競技会にもよりますが、全学は無料で観戦することができるので、どなたでも思い立ったらすぐに見にいけるスポーツと言えるでしょう。ちなみに、三木ホースランドパークには無料駐車場がありますよ(全学開催時の場合)。
競技中、コースを完走した選手には大きな拍手が送られ、馬が障害を反抗しそうになると観客席から「あ~💦」と声が漏れる場面も。
みんなが前のめりになって競技を楽しんでいました。
ライバル校の選手がバーを落として減点が増えれば、自分のチームが上位に行けますが、それとこれとは別。上手にコースを回ってきたら、ライバルにも拍手を送って頑張りを称える姿を見ていると、これこそが「紳士淑女のスポーツ」なのではないかと感じました。
また、ある選手は「全学は全国から友人が集まるので楽しいですね。お互いの部活のことや近況を報告しあいます」と話してくれました。
馬術は他のスポーツに比べて競技人口が少ないため、大会や講習会などで知り合えば、全国に友人ができます。
マイナースポーツのいいところかもしれません。
会場にはたくさんの笑顔があふれていました!😊
競技会で頑張るのは選手だけではありません。
コースの組み換えやハロー掛けの補助、競技中に落ちてしまったバーを元通りに直すことも学生が行います。
コースデザイナーの指示に従い、障害物を正しく設置するにはたくさんの力が必要です。このように、多くの学生たちが大会を成功させるために奮闘しているのです。
🎤 選手インタビュー
全日本学生賞典障害馬術競技大会の出場選手は、「実家が乗馬クラブで物心つく前から馬と過ごしていた」という方から「大学生になって初めて馬に乗った」という方までさまざまです。ただ、馬が好きということや試合でいい成績を残したい気持ちは同じ。
それぞれが人馬一体になってゴールを目指す姿は眩しいほどにかっこ良かったです。
そして、1位から5位はこのような結果となりました。
1位 関西大学 漆原竜吉選手&カリエーレ
2位 京都産業大学 西村悠希選手&アルファルド
3位 同志社大学 泉和華子選手&クアドリフォリオ
4位 明治大学 石川傑選手&プライムローズM
5位 関西大学 島村空音選手&千蘭
今年は2回の走行で減点0が7人馬いたため、新たな短いコースを走行するジャンプオフが行われました。ここでも減点0だったのが1位の漆原選手と2位の西村選手。凄過ぎる……。
その2選手のコメントをお伝えします!
1位 漆原竜吉選手(関西大学・2年生)
1年間を通して積み上げたものが、こうやって結果になってくれて、とても嬉しいです。
1番の目標は関西大学が団体として優勝することで、個人の結果もついてきたらいいなと思って臨んだのですが、どちらも優勝することができて言葉にできません。
カリエーレは厩舎ではわがままなところがあるのですが、競技に行くと頼りになる馬です。
馬つきの後輩を始め、同級生、先輩、下乗りをしてくださったコーチ、オーナー、監督などいろんな方々に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
2位 西村悠希選手(京都産業大学・2年生)
アルファルドは20歳。歳を取っているため、フレッシュな状態で臨めるように心掛けました。スーパーホースということを信じて、僕が邪魔をしないように乗っています。
この馬は厩舎ではおとなしく、愛嬌があるのでみんなの人気者です。食べ物の好き嫌いがなく、エサは残さずに食べてくれます。
今は馬に助けてもらうばかりなので、技術を磨いてもっとうまくなりたいです。父がJRAの調教師(西村真幸師)なのですが、僕も調教師になりたいと考えています。あと2年間の馬術部活動、一生懸命頑張ります!
馬術を少しでも身近に感じてもらえましたでしょうか?
見てみたい!と思われた方は、試合の日程や馬術観戦のマナーを確認して、ぜひお近くの馬術競技場に足をお運びください😊
リニューアルオープンした東京都世田谷区のJRA馬事公苑については、競馬ブック 唐島TMが紹介しています。
後編は学生馬術で頑張っている引退競走馬を中心にお伝えする予定です。
お楽しみに!
(文・森田美菜 写真・青木慶子)