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吃音だった君は、5万人に研修をするようになったんだよ

「・・・・・・・」

頭にある「言葉」が口に出ない・・・

僕は重度の吃音だった。

「周りに迷惑かけちゃダメ」


私は親からいつも「周りに迷惑かけちゃダメだよ」っていわれていた。

ファミレスでご飯を待つ時、手は膝の上におき、静かにし続けた。電車内では黙っていた。

幼稚園とか小学校のとき今日あったことを話せばいつも、周りに迷惑かけなくて偉いねって言われた。

周りに迷惑をかけないために、できることが多くなっていく


周りの人に迷惑をかけないように、むしろ周りの人のためになるように動くのが得意になっていった。

そうやって誰かのためになれるようにしてたら、できることも増えていった。

いつも先生の期待に応えられる子どもになった。

元気に挨拶をして、片付けをしっかりして、いじめっ子がいたら立ち向かう子どもだった。

スポーツも体操クラブ通ってたからできることも多く、クラスでも1、2位を争う足の速さだった。


けいくんすごいね



できることも多かったから、保護者とか同級生とか先生からいつも褒められていた。


褒められて嬉しい



いっつもそうやって褒められると嬉しかった。

「周りの人の役に立ってる!」って思えてすごくホッとした。


できる自分でいたい


そんな風にいつも思ってたんだけど、
その分いつも、できない自分に出会うと、とてもとても怖くなる。

みんなできてる蝶々結びが出来ないとき、
みんな答えられているのに自分がわからないとき、
そして、みんなはうまく話せるのに、自分はまったくうまく話せないとき。

なんで僕は、声が出ないんだろう


吃音だった


私は、吃音だった。

22歳くらいになって初めて、吃音という症状を知った。

みなさんも出会ったことはありませんか?
スラスラ話せない症状で、どうしてもどもってしまう方を。
Youtubeで調べたらこんな動画がありました。

絶望的だった音読の時間

みなさんにとって音読ってどんな時間でしたか?

教科書に書いてあるもの読むだけだし、そんなに苦痛じゃない人も多いと思う。

僕にとっては


音読=死にたい時間



だった。

小学校のある日のこと。

2時間目、今日は新しい章に入る。
先生から教室に入ってきて、

「今日は新しい章入るから、じゃあこの列から1行ずつ読んでいこうかー」

あの列ってことは・・・・おれは21番目だから、、、ここからか!

何度も何度も繰り返し練習しよう・・・

今日はいける今日はいける・・・

前の人が読み終えたきた!


「・・・・」



なんで・・・・全然言葉が出てこない・・・
こんなに練習したのに、どうしてや・・・・


無言の時間が10秒続く・・・・そしてやっとなんとか読み終える。


嫌われるかも

みんなはスラスラ話せるのに、なんで俺は話せないんだろう・・・

なんで吃っちゃうんだろう。

恥ずかしくってたまらなくて、せめてみんながうまく話せない理由と同じにしたくて


この漢字ってなんて読むの?今どこ読んでいるの?



そうやって周りに聞いて、いつも誤魔化していた。

できない自分=嫌われる=誤魔化そう



僕は人生ずっと、できないことがあると誤魔化してきた。

中学サッカー部。
キャプテンなのに、プレーがうまくできなければ、グラウンドや他者のせいにした。
そして、高校はキャプテンじゃなくなるのが怖くて、サッカーをしたかったけれど、やらなかった。

高校軽音部、機材のことが全然わからなかったけど、聞けなくて、一人でできる弾き語りをメインにした。

大学受験。
中学英語も高校一年の数学もまともにできなかった。
でもそれを認めたら「できないやつ」って思われそうで、難しい問題集ばっかりしてた。


いくつもの「本当は」って気持ちをいつも蓋してきた



大学生になってから訪れた、「人前で話す試練」


そんな自分が大学で始めたのがNPOカタリバでのボランティアだった。

ボランティアの内容は、高校への出張授業。非日常での対話を通して、普段は共有できない悩みや、将来の夢、などを語り合い、日常を変化させるきっかけを作る活動だった。

「自分の高校時代にカタリ場があれば、本当はサッカーをしたいって言えたんじゃないか。自分みたいな高校生を救いたい」そんな熱い想いで活動を始めた。

そこで待ち受け受けたのは

「吃音」に向き合うこと

だった。

小学校の時より、吃る機会も減っていた。

けれど、緊張感が走ったり、決まったことを言わなければいけない時は、本当に一言も出てこない時もあった。

そんな中、ボランティア活動をより本格的なものにするために、インターンを始めた。

ボランティアとしては意欲的な活動をするものの、できないことばかりだった。

対話スキルは全くダメ

インターンとしても仕事はメールすら打てない体たらく。ポテンシャルで採用してもらった。

そんな中、任された初めての大きな仕事は、「研修」だった。

高校生と本音の対話をするために、さまざまな研修があり、その一つを任されることになった。

しかしこれが、私の大きな試練だった。

研修をできるようになるには、研修トレーナーになるためのチェックがあった。

準備は完璧。一人で練習を重ね、スラスラと研修をできるようになっていた。

しかし、いざチェックがスタートすると・・・・


全然声が出ない



あんなに準備をしたのに、全然うまくできない。何度も言葉に詰まり続けた。

悔しくて涙が止まらない。うまくできない自分が情けない。嫌われるのが怖い。

みんな俺のことどう思ってるんだろう?


「がんばります」って言って、意気揚々と始めたインターンだった。

それなのに、「あいつ口だけやん」とか「あいつだめじゃん」とかそうやって思われるんじゃないか?って・・・

周りに嫌われてるかもしれないし、周りの役にも立ってないし、、、
自分いる意味あるのかな???

学校も理系で毎週20枚くらいあって忙しくて、趣味のサッカー観戦もあって、そんな中で、カタリバできないのにやって、誰にも貢献できなくて、自分が苦しんで、

できない自分がいても意味ない。。

やめよう・・・・

「忙しいからやめます」


やめようと思ったんでけど、できないからやめますなんて言えない。
それはとても惨めだ。

そこで、「忙しいからカタリバやめます」と伝えた。

そしたら、当時の上司にこう言われた

「このまま辞めたらできないままのけいだよ」


「このまま辞めたらできないままのけいだよ、高校生の時となんら変わらない。やりたいことだけでも、できないからって逃げるだけ」
「おまえあんなにがんばりたいって言ってたんか」
「少しずつできるようになったらいいやんか」


気づいてたら涙が出てきてた。

できないんだなー自分って、それに悔しくなったからじゃない。

嬉しかったんだ。

自分ってここにいていいんだなって。
ここにできなくても、必死にやっていればいていいんだって、、

できない自分もこの人は受け止めてくれる

この人は、できない自分なんて責めてないんだ。
できない自分がいても、目指すもののために頑張っていこう。
そうやって言ってくれてるんだなって。

必死な自分に、できるできないなんてつけんな

おれは何にもわかってなかった。
いつも「できるか」「できないか」ばっかり考えてた。
できないといる意味がないなんてないってずっと思ってた。
でも違ったんだ。

必死な自分に、できるできないなんてつけなくていいんだ

エネルギーをちゃんと、自分がしたくて、誰かのためになることに一生懸命注いでいるんだったら、それでいいんだって。

そうしたら、自分も周りも幸せなんだって気がついた。

愚直に進めば、自ずとできるようになる。だからこそ、コツコツやっていこうって。

「弱い自分」「だめな自分」「周りに見せたくない自分」も居て当然

「弱い自分」「だめな自分」「周りに見せたくない自分」も居て当然だ。
そんな自分を周りの人も持っていて、それをお互いに分かり合いながら進むことが大事なんだ。

もっと自分のことを周りにもわかってもらいたいし、周りのことも自分もわかりたいなって。

「目に見えるものと目に見えないものを統合していきたい」


できるとかできないとかの「目に見えること」と同じくらい、その裏側にあるいろんなひとの「目に見えない」気持ちも大切にしたい。


「目に見えるものと目に見えないものを統合していきたい」


そう、思えるようになっていったんだ。

吃音で惨めだった君は、5万人に600以上の研修を届けているよ

あの日教室で、惨めだった君へ。

あの日だけではないか。毎日のように、惨めだったか。

友達の名前も呼べない。雑談もつっかえる。塾の先生に吃音を責められる。

お前が勉強ができないのは、吃音だからだ。そう言われて、塾の個室、親の横でできない音読を涙を流しながらさせられたこともあったよな。

本当に毎日、苦しかったよな。

そんな君は、28歳になった。

まだ本当にたまに吃音が出るよ。

でもね、そんな自分もいるよねって、受け止められるようになったよ。

君は、信じられないかもしれないけれど、

1000人を超える人がいても、平気で話せるように君はなった。

そして、何より、こうして、多くの人に「吃音だったこと」「できない自分に葛藤してたこと」を伝えることすらもできるようになった。

それは、君のことをできるできないじゃなくて、「頑張っている」んだって、後押ししてくれた人がいたからだ。

そして、できるようになるんだって、努力を日々し続けた自分がいるからだ。

だからね、どうか、少し深呼吸して。


君に思いやりを持って接してくれる人の顔を思い浮かべて

「大丈夫だよって」笑みを浮かべてくれている優しさの中で、今日もまた、出る変わらない声を頑張って出してみよう。

できる。できない。それだけが、世界じゃないよ。

これを読んでいる君と、そしてみんなに伝えたい。


頑張れ



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高橋 奎  
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