病気から学ぶ「制限」の重要性

昨年1年間、自分の中では初めて闘病生活というものを味わった。今もまだ、治療をしているが、当初に比べると回復をしっかりとしており、既に以前の生活を超える健康さを皮肉なことに手に入れた。

正直、病気にならないに越したことはないと今でも思う。ただ、病気になったことで学ぶことも大きくあった。それにより、自分でも今までなかったアクションも取れるようになったこともある。

2020年12月上旬に、身体中が強張りを感じ始めた。毎朝目を覚ますと、何故か全身が筋肉痛。トライアスロンのトレーニングはしているが、そこまでの強度のトレーニングをしていないのに、何故?と何度も思っていた。毎朝のルーティーンで、体重計に乗ると、何故か体重の減りが激しい。正直体重は減るのは別に悪いことではないので、最初の方は「おー、いい感じじゃん」なんて気楽に考えてたりした。1ヶ月後までは・・・・

恒例の年末年始は、常に暴飲暴食Weekであり、2021年は実家には世の中がコロナの影響もあり帰れなかったものの、それなりに飲み食いをした。年末年始は、ルーティーンなんて「特別な日」ということを言い訳に、体重計なんて乗ってもいなかった。正月の休みが終わる日の朝、さてと内心成績発表的に、どれくらい増えているのか・・・・と嫌な気持ちで体重計に乗ると−5キロになっていた。

この時、身体の違和感は、間違いなく、「明らかに、おかしい」という確信に変わった。

年明け、23日に人間ドックを受診した。その時には体重が通常が55キロ〜57キロの所が、既に46キロにまで減少していた。電車のホームの階段を上がるだけで、息があがる。寝ている最中に、自分の動悸の音で目が覚める。何をしてても、疲れる。腹が減って、食べているのに体重が減る。Garminで毎日の平均心拍数が180・・・・おいおい、大会に出てても、そんなに上がることないぞ。寝てる時ですら、心拍数160って、どうなっているんだよ・・・・

2021年1月23日、人間ドック当日、一連の検査が終了して医者の問診。カルテ情報を見て、どうやらすぐに仮説的な疾患があったようだ。「はい、手の平を天井にかざして、両手を胸のところに持ってきて」・・・・手が震える。心電図の波形を見て、「なるほどね」と一言。これね、すぐに紹介状書くから、大きい病院に行ってすぐに投薬治療を始めてと・・・・。

自己免疫疾患だった。甲状腺の疾患で、女性疾患と呼ばれるほど、女性の罹患者の方が男性に比べて多い。大体、女性5人に対して男性1人というような比率の疾患だ。この病気は、簡単にいうと「燃費の悪い車」に身体がなってしまうと僕は自分で理解をさせている。身体が活発に活動をしてしまい、エネルギーを体に入れてもすぐに消費をしてしまうのだ。身体に入れたエネルギーでは足りなくなると、身体の脂肪をエネルギーに変え、それもなくなると筋肉をエネルギーに変えて食べ尽くしていく。だから、体重がどんどん減っていくのだ。心拍数の高さは、自分の身体がフル稼働している証拠。全て、説明に納得が出来た。

身体が異常に甲状腺ホルモンを放出してしまっていることから来る症状のため、薬で過剰なホルモンが出ないように抑制することから治療はスタート。これがある程度効いてきて、ホルモン量が正常になると、次は薬の量を減らしていく。薬が減ってもしっかりと自力でコントロールをすることができるかのトレーニングをしていくのだ。最終的に、薬を飲まなくても、自力でホルモン量をコントロールできれば、無事寛解ということになる。今は寛解近くまできている。

病気になると何かと「制限」がつく。制限とは、ネガティブに捉えられがちであるが、かなり思考の転換を生み出してくれるものでもある。特にわかりやすい制限は時間の使い方である。いくらでも働いていた、働けていたが、ドクターストップが掛かった形になり、それだけではなくストレスを抱えることもするなという、信じられない制限まで設けられる状態。

働く時間は短く、ストレスもかからない状態の実現。これは、難題だ。更に、仕事は待ってはくれない。多くのプロジェクトのリードに加え、社内組織作りも行なっている。自分の体調が崩れたからといって、パフォーマンスを下げるわけにはいかない。

働く時間の短縮しストレスをかけない状態で変わらないパフォーマンスの提供の実現をどのようにすることが出来るか。結論、全てを実現することができた。正確にいうと、パフォーマンスは過去最大と言っていいのではないかと思う。

この勝因は何かというと、分かっていたつもりのVT(value time)をもっと細かいレベルで理解をすることにあった。VTとは、自分の思考の回転力の精度が一番高まるタイミングを理解することである。自分自身の思考力が高まる時間と場所は、朝の9時32分〜9時57分@自宅、11時28分〜11時56分@自宅、15時03分〜16時28分@家の近くのコメダ珈琲店、この合計2.5時間が集中力=生産性を高めるのに適していることがわかった。多分、思考のメカニズムとしては、ある意味信じ込みと一緒で、上記のような時間、場所も確実に特定させて、その空気感の中で確実に集中する時間としたのだと思う。結果的に、プロジェクトの最も重要な設計や仮説を立てる時間は、上記の中でだけ実施することに。それ以外は、朝に30分(VT前)、夕方に30分(VT前)、夜に30分(寝る1時間前)をメール処理する時間があれば十分である。本当に緊急度が高いものは電話が鳴るのでそこで対応すれば良い。

最も悩んだのは、ストレスをかけないことである。仕事柄、思考にストレスをかけることで、仮説の精度が高まっていったり、重要なメッセージが出たりなどするからである。これは、「1分あたりのストレス度合い」 × 「持続時間」で考えてみた時に、簡単に答えが出た。ストレスが掛かることが問題なのではなく、かけ続けることが問題なので、ストレスがかかる時間を制限さえすれば、問題ないことが分かった。やってみると、常にVTの時は、思考がフレッシュな状態で、思考の精度が確実に高い。疲れ果ててない、本来の思考力で戦えている感じがして、とても心地よい状態であった。

結果的に、今は以前より生産性が高くなった。出来た時間で、ジムにも行き、冒頭で伝えた通り、皮肉にも健康になった。

ちなみに、VTをどのように見つけ出したかの実験方法は以下のような手段をとった。毎日いろんな時間や場所で、少し難しそうな本(出来れば自分が興味のないトピック)を10分刻みで読むようにしてみた。僕にとって本の読むスピードは、わかりやすい集中力のパラメーターなのである。集中してる時は、どんな内容でも読むのが早い。集中力が欠如してる時は、どんなに頑張っても1ページも進まないなんて時もある。全く読めなかったタイミングをどんどん時間から消していくのだ。残った時間の中で、次は場所を変えてみたりする。その残った時間帯の中で、読むスピードが早かった、時間帯と場所とシチュエーション(例えば、コーヒーが必要や、ミスチルを聞くとか)、をランキングしておく。あとは、最も生産性が高い時間帯を上位から2.5時間分抜き出すだけだ。こうすることで自然と、自分におけるVTが出来上がるのだ。

是非自分自身のVTを作り上げてみてほしい。
驚くほどに、無駄に気付かずに時間を活用していたことに気づく。

最悪のきっかけから生まれた制限。今ではそれも楽しめるような気がする。

もう少し付き合ってみるのも、悪くないかな。

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