#8 「めんどくさい」はおもしろい。のか?
めんどくさいの哲学 #8
今回は、ぼく自身の経験をもとに、めんどくさいを哲学していきます。いや、毎回そうなんですけど、直近の例をもとに、というか、いま直面しているめんどくささについて考えてみたいと思います。
ところで、人の感情って、おうおうにしておおざっぱじゃないでしょうか? 例えば、ある政治家を「嫌い」と感じたとします。なんか普段の発言なんかをニュースで見たりしてそう感じる。そうすると、坊主憎けりゃ袈裟まで、じゃないですけど、やっていることすべてが嫌い、いいことしててもなんか裏があるのでは? ってなりますよね。でもその政治家にも家族もいますし、慕って協力している人もいる。たぶん会ってみたら、いいところもあるんだと思うんです。でも、どこかの氷山の一角を見るだけで、あいつは「嫌い」ってなってしまう。人の感情ってそういうおおざっぱさがある。
これと同じで、めんどくさいという感情もまた、けっこうおおざっぱです。
この金曜日、ぼくは、めんどくさいのただ中にいました。あるパンフレットを作る仕事があって、けっこうページ数があるのに、締め切りまで2週間しかない。というわけで、この土曜日は、休みを返上して原稿を作らなきゃいけない、ということになりました。もう、この時点で心の中は、めんどくさいという感情120%になります。もう、この土曜日は働きづめになる、という気持ちになったわけです。
「このめんどくさいをなんとかならんか?」
ここのところ、めんどくさいについてあーだこーだ考えてたぼくは、自己ツッコミしてみました。「そもそも、何がめんどくさいの?」「どうめんどくさいの?」という具合に、めんどくさいを細かく見てみようと思いました。じゃあ、どうやって細かくみたらいいんでしょう?
ちょうどそのとき、というかこれを書いている今まさに、なんですが、坂口恭平さんがnoteで、「生きのびるための事務」という連載をしていました。これ、スーパー事務アドベンチャー小説という、聞いたこともないジャンルの小説なのですが、内容についてはいろいろあって、話しはじめると長くなるので割愛します。気になる方はぜひ読んでみてください。おもしろいですよ。
で、その小説の中に「人間は『時間』を考えることはできないから、スケジュールとして書き出して目で確認したほうがいい」というようなことが書いてあったのです。
「ははあ、ぼくが感じている、土曜日に仕事をしなくちゃいけなくてめんどくさいという感情も『時間』のことだな。実は考えることができないんだな」と思ったぼくは、金曜夜から土曜日夜にかけての24時間のスケジュールを、坂口さんのやり方を参考に、細かく書いてみることにしました。
22時30分時就寝。5時起床。それから10分ヨガをやってコーヒーを入れて飲む。で、6時から8時まで仕事。朝食の準備と食事に2時間。昼食は息子に作ってもらうので昼食まで仕事。昼食の後は、休憩。昼寝。読書。で、15時からまた仕事。18時からは夕食の支度で、その日の仕事はおしまい。
これを書き出して「あ」と思ったのは、仕事漬けで潰れると思った土曜日でしたが、実際は6時間くらいしか仕事をしない。ということでした。それも、2時間半、3時間、3時間、という3セット。しかも、楽しみの料理(ぼくにとって料理はレジャーです)や昼寝、読書などもしっかり確保されています。こうして書き出してみることによって、まあ、仕事をするんでめんどくさいことはめんどくさいのですが、どんな風に、どれくらいめんどくさいかが明らかになり、当初のおおざっぱにめんどくさい状況より、ずいぶん気持ちが楽になりました。
これには驚きました。まずこの円形のスケジュール表、どこかで見たことありますよね? 小学校でやらされる、夏休みのスケジュールとおんなじです。あれって作っているとき、「こんなのやるわけねーよな」と思いませんでしたか? 実際夏休みになったら思い出しもしませんし、あの表に何の意味があるのかまったくわかりませんでした。いや、いま思い出してもわかりません。というわけで、いい印象のない円形スケジュール表なのですが、直近これから24時間のスケジュールを書いただけで、こんなに気分が変わるということに驚いたのです。
この経験を経て、ぼくが思ったのは「めんどくさいって、よくみると面白いな」ということです。すごくおおざっぱに「めんどくさい」と思っているうちは、嫌な気持ちしかないのですが、細かく見ていって、「何がめんどくさいのか」「どうめんどくさいのか」「どのくらいめんどくさいのか」と分析していくと、遠目からみていたのと印象が変わってくるのです。初対面はとっつきにくい感じがしたけど、少し話をしてみたら割と個性的で、けっこう面白くて好きかも、っていう人みたいに、「めんどくさい」ってヤツは、付き合いがいがあるヤツなんです。
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