貴女の愛も夢も野心も / 映画『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』
小学生の頃「昔の外国の話」として読んだ物語が、今の自分にも刺さる形で蘇ってきたことに胸の奥がぎゅっとなった135分。映画館で観て良かった。自宅で観ていたらもっと感傷的に没入してしまい立ち直れなくなった気がする。
平たく言えば「人の幸せは人それぞれの形」なのだけど、4姉妹それぞれが自分なりの信念で幸せと愛を求める様を、改めて新鮮な気持ちで見つめた。かつてメグに憧れた私もすっかりジョーの様になっていて、だからこそ彼女をメインに進む物語は居心地も悪いが共感もしやすかった。
女友達同士で、語り合いたくはないが、共通項として持っていたい作品。結婚してもしなくても良い。仕事に生きても生きなくても良い。経済的に恵まれること、静かに愛を育むこと、女性の生き様に正解は無い(そして望むなら総てが正解)と思えるのなら、私たちはお互いを尊重し合って生きていける。
貴女の愛も夢も野心も、認め合える私たちで居たいのだ。
ジョーが主役のビジュアルを見て「独りで生きる自立する女」の話と思われるのは不本意だ。貧しくても愛を大切にするメグの生き方も、裕福になることが幸せだと信じて突き進むエイミー(それは家族の役に立ちたいという気持ちがあるのだけど)の生き方も、そして慈愛の深さ故に命を弱らせてしまったベスの生き方も、否定されることはない。
夢を追い求めているだけで生きていけないのは、現代だって同じだ。現実に沿わせる為に多少の妥協をして、それが曲がりなりにも叶う形になるならまだマシで。女性というだけで(或いは男性、もしくはどちらでもなくても)選ばれないことがままある。100年以上前の話がリメイクしているにしても現代とリンクするのは何とも言えない気持ちになる。
「わたしの若草物語」って何なの?と思っていたけれど、観終われば確かにその通りで。ラストは賛否両論あると思うけど、個人的には現代への共感要素が加わるので悪くないなと思った。要素しか覚えていなかったけど初見だとしても鑑賞には問題無さそうで、逆に原作本を読み返したくなった。
原作の場面をうっすらと覚えている。
ベスがピアノを贈られるシーン、エイミーが池の真ん中で溺れるシーン、長女メグと四女エイミー・次女ジョーと三女ベスがそれぞれ仲の良かったこと。
結婚は煩わしい、自由に生きていきたい。でもたまに、ちょっぴり寂しい。100年経っても変わらないジョーという一人の"私"の在り方。日本で実写化するなら吉沢亮にローリー役やってほしい。
エマ・ワトソンが好きなんだけど、フローレンス・ピューは『ミッドサマー』とは全然違うし(花冠で踊るシーンはちょっと笑った)ティモシー・シャラメも魅力的だし、何よりジョー役のシアーシャ・ローナンをとても好きになってしまった。本作の前にグレタ・ガーウィグ監督と組んでいる『レディ・バード』(ティモシー・シャラメも出てる!)、観そびれてるので早々に拝見したく。
映画館再開に合わせて公開された新作が、高評価を得ていることを嬉しく思う。キャストに対してストーリーは華々しくないかもしれないけれど、これこそがまさに一人一人のマイライフなのだと多くの人に感じて欲しい。
▼抜粋Filmarks