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豊かな高音発声の仕組み(導入編)


高音発声に悩む人は多い

特に歌唱等の表現では、幅広い音域で豊かな発声が出来るようになりたいと考える人は多いと思います。

しかし、高音発声時に喉を締めた苦しそうな音になってしまったり、そもそも高音が出ないという悩みはよく聞くことです。

高音発声は何が難しいのか

豊かな高音発声に必要な筋肉は外から見ることが出来ず、知覚することもほぼ不可能だからです。
豊かな高音発声には、輪状甲状筋や甲状披裂筋等の筋肉がバランス良く働くことが必要ですがごく小さな筋肉でやはり知覚は非常に難しいです。

そうすると知覚が可能な筋肉を使って非効率な手段で高音発声を実現しようとしてしまいます。
その結果が喉を締めた苦しそうな発声や、そもそも高音が出ないというものです。

豊かな発声のためには、どの位置にあるどの筋肉が、どのように働くのかを認識することです。
その際に忘れてはいけないのは不要な筋肉の力はできるだけ抜くということです。多くの場合不要な筋肉の力が入っていると豊かな発声を妨げることになります。

喉周辺の知覚できる筋肉については基本的に豊かな発声では使用されません。そのため良い発声というのは、喉や首の力は抜けているが、響きはとても感じるという状態になるはずです。

今回は豊かな高音発声を実現するための導入編として、いくつかの筋肉や骨、大まかな考え方について紹介したいと思います。

豊かな高音発声のためにまず何をすべきか

まずは、発声時の体感覚を繊細に感じ取ることを意識できればと思います。
特に力みは豊かな発声を妨げるものなので、力みを敏感に感じ取り出来る限り、その力みを取り除くようにします。
ここでは、高音発声時に力みやすい筋肉として胸鎖乳突筋と甲状舌骨筋を紹介します。

胸鎖乳突筋
鎖骨から耳の下まで伸びる筋肉です。
下の画像は右側の胸鎖乳突筋の図となり、左側にも同じように存在します。

呼吸には関連してくる筋肉のため重要ではあるのですが、高音発声そのものにはほぼ関与しません。
非効率な高音発声時に首に筋張って浮き出てしまうのはこの筋肉です。
また、発声そのものにはほとんど関与はしませんが、大きな筋肉なので固くなったり、過度に緊張すると他の筋肉や体感覚を感じ取ることが難しくなります。何より発声していて気持ちよくないため、力みを感じたら力を抜きたい筋肉です。

甲状舌骨筋
甲状軟骨から舌骨まで伸びる筋肉です。
下記サイトのイラストが分かりやすいと思います。
(身体の構造を理解する上で勉強になるサイトです!)

この筋肉が過度に働くと喉頭が引き上げられ、豊かな響きを持った発声が難しくなります。
首の上部に力みを感じる場合には、このあたりの筋肉が原因かもしれません。こちらも力みを感じたら力を抜きたい筋肉です。

豊かな高音発声に必要な筋肉は何か

豊かな高音発声に必要な筋肉は小さい筋肉が多く、その動き等を知覚することはほぼ不可能です。
しかし、筋肉の場所や動き方を認識しておくことで、発声時に目標とするイメージを思い描きやすくなったり、がむしゃらに頑張って余計な筋肉を働かせるということも防ぎやすくなります。
ここでは高音発声において重要となる輪状甲状筋を紹介します。

輪状甲状筋
輪状軟骨から甲状軟骨まで伸びる筋肉です。
下記サイトのイラストが分かりやすいと思います。

この筋肉が働くと声帯が伸ばされます。
ゴムをピンと張って弾いたときに、強く張るほど高い音が出るのと同じで、高い音を出すためには、声帯が強く張っている必要があるというのが基本的な考え方です。

それでは、輪状甲状筋が身体のどのあたりにあるのか確認してきます。
甲状軟骨と輪状軟骨は比較的見つけやすいです。
男性であればより分かりやすく、首の中央あたりにある喉仏が甲状軟骨の一部になります。
そして、甲状軟骨の出っ張り(喉仏)のすぐ下にある出っ張りが輪状軟骨です。

※説明図のクオリティが低くて申し訳ありません…

下記サイトでは、外皮から見た甲状軟骨や輪状軟骨の位置を分かりやすく表現してくださっています。(このサイトもめちゃめちゃ勉強になります!)

また、女性の場合は男性ほど喉仏が出っ張っているわけではないので少し分かりづらいですが、首の真ん中辺りを触ると骨の感覚があると思います。
実際に触ってみると甲状軟骨と輪状軟骨の位置を推測することができるかと思います。

※甲状軟骨や輪状軟骨周辺の筋肉は非常に小さく繊細なものが多いです。触るときは過度に力を入れず慎重に触るようにしてください。

甲状軟骨の大きさは、
男性が縦3cm程度・前後径4cm程度、
女性が縦2cm程度・前後径3cm程度
が平均サイズとなるそうです。

輪状軟骨の大きさは、
男性が前後径2.4cm程度・横径2.8cm程度、
女性が前後径2.2cm程度・横径2.3cm程度
が平均サイズとなるそうです。

さて、この甲状軟骨と輪状軟骨の間に輪状甲状筋があるのですが、下記が非常に分かりやすい動画になっています。
0:20~0:35で輪状甲状筋がどのように働くかが表現されています。

0:20~0:28は、甲状軟骨と輪状軟骨を外から見たときの様子です。
輪状甲状筋が働くと甲状軟骨と輪状軟骨前部が近づくように動きます。

0:29~0:35は、甲状軟骨の内側で、輪状甲状筋が働いて声帯が伸びていることが確認できます。

ちなみに、この動画の0:05~0:19では、過度に働かせたくない筋肉として紹介した甲状舌骨筋の動きが説明されています。
位置等も含め確認してみると良いと思います。

本当は、この他にも披裂軟骨や甲状披裂筋等、様々な要素で音が作られますが複雑なため一旦省略します。
興味が出てきたら調べてみるのが良いと思います。
要望がありましたら私の方でも改めてまとめたいと思います。

まずは、なんとなく喉で頑張って力づくで高音を出すのではなく、輪状甲状筋という筋肉の働きで声帯が引き延ばされ、高音が出るようなイメージを持ってもらえればと思います。
その際、他の知覚できる筋肉はリラックスした状態が理想です。

豊かな高音発声に必要な筋肉はどう鍛えれば良いのか

豊かな高音発声のための筋肉を直接的に鍛える方法は今のところ私の中では見つかっておりません。また、それも不要なのではないかとも思っています。特定の筋肉だけ過剰に発達しても豊かな発声のバランスを崩してしまいかねないと考えるからです。

それよりも知覚できる力みを抜きながら、高音発声の仕組みを理解して、豊かで響きのある声を意識しながら出し続けるというのが最良の手段だと考えています。

豊かで響きのある声はどのようにイメージすれば良いのか

豊かな発声というのは、どのようなイメージを持てば良いのか分からないという方もいらっしゃるかもしれません。

その場合は、好きな歌手、声優、俳優の身体の使い方や響きを参考にしてみるのが良いと思います。

ただし、声自体を真似るのではありません。
声そのものを似せようとすると自分の本来の声と違うものを作り出そうとして余計な力が入りやすくなってしまいます。
力み無く真似してみて声が似てくるのは問題ありません。(自身の本来の声で発声していて真似する対象と同じ声になるということはあまりありません)

参考にするのは、まずは身体の使い方です。
例えば力が入っていそうな所が無いかを観察したり、自分との身体の使い方の違いはどこにあるかを観察してみたり等です。

あるいは声の響きです。
真似する対象と同じような響きを出そうと自分の体感覚でいろいろと試してみると良いと思います。
喉に響かせる意識を持ったり、頭に響かせる意識を持ったり、頭全体に響かせる意識を持ったりと思いつくものをいくつも試して、気持ちよく声が出る自分なりの方法を編み出す感覚が良いと思います。

いずれも思い込みを意識して排除して丁寧に観察しながら行うことが大事です。

最後に

余計な力みを抜くこと、効率的で豊かな高音発声に必要な筋肉について知ること、丁寧に意識しながら取り組むこと等、いずれも地味で繊細な訓練ですし実践する本人がこれだ!と確信を持って粘り強く取り組まなければ良い結果は得られません。

そのため、自身の中にまだ他にもっとやり方があると考えていたり、これはあまり効果は無さそうと考える場合(その人の状況によっては十分あり得ることです)にはまずは自分の中でこれだと思う取り組み方をしてほしいと思います。

もし、今回紹介した内容に共感してくださったのならぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。
きっと良い成果が得られるはずです。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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