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「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」ライト層の感想
皆様あけましておめでとうございます。
年末に話題の忍たま映画を見てきたのでネタバレ丸出しの感想を書きます(唐突)
2024年に見た映画はリバイバル上映の「メメント」と本作の2本のみ。
どっちも面白かったな~
鑑賞に至るまで
12月中旬にネットサーフィンをしていて、たまたま広告画像が目に入ったのがキッカケ。
「へぇ~忍たまの映画なんてやるんだ」なんて思いつつ、なんかイラストがいつもより大人向けっぽい?と感じた。
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そんなビジュアルの雰囲気から、何年も「忍たま」を見ていない「大きいお友達」である筆者でも楽しめる内容なのではないかと感じ、冬休みに妹(ガチ勢寄りで本映画もリピート鑑賞)を誘い観に行ってきた。
なお、鑑賞にあたり、あらすじを含めた前情報は全く入れていない。
筆者の「忍たま」理解度
忍たまのEDといえば四方八方肘鉄砲。(歳がバレる)要は「昔忍たまを見ていた成人」であり、ガチ勢ではない。
外伝の絵本が家にあったし、「落乱」も断片的には読んだことはあるが、主となる情報源はやはりアニメの「忍たま」であった。
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花房牧之介、兵庫第三共栄丸、魔界之小路先生など有名な古参キャラなら分かるが、そこまでガチで視聴していたわけではないので、なんとなく見たことはあっても顔と名前が一致しないキャラのほうが多い。
学園の上級生はおろか、一年でも「は組」以外の子達はよく分からない。
(笑顔が不気味なコワモテの人とか毒蛇のジュンコを可愛がっている生物委員の人とかいたよなぁ…)
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平姓なのは知らなかった。
照星さんや雑渡さんあたりのキャラが登場する時期には既に教育テレビをほぼ卒業していたためあまり思い入れはなく、個人的には新キャラ判定。一応なんとなく知ってはいるが…
ともかく、ディープなファンではないが昔から馴染みのあるコンテンツではあり、映画を楽しむにあたっては十分な知識量だろうと判断したのも映画鑑賞を決めた理由のひとつだ。
感想
⚠モロにネタバレするので注意⚠
”死”や”虐殺”の描写
凄惨な場面が表現される際は、血は彼岸花・死体は藁人形で描写されていた。
ファミリー向けコンテンツの性質上、直接的な描写をするわけにもいかないのだろうが、「子供向けにやさしい描写にされている」というのともまた違うと感じた。
「忍たま」を逸脱しない範囲でギリギリを攻めているというか…
普通に怖いよ。
筆者は「メメント」を鑑賞していたことからも分かるように、サスペンス的な表現には耐性があるのだが…
本作の見せ方は想像の余地があるぶん、下手にそのまま描写されるよりも鬼気迫るものを感じた。
直接的な表現を避けつつも迫力や雰囲気を損なわない工夫が凝らされている。
行間を読もうと思えば「土井先生は虐殺の生き残りだったのか」「それは秋の夜の記憶であり、現在も消えることはなく残り続けているのだろう」と、台詞や説明が一切無いながらも土井先生の過去をある程度想像することができるのだ。
小さな子供にはそこまでの深読みはできないので「分かる人には分かる」といった感じだろうか。
「子供でも楽しめる」と「子供騙し」は違うということを、制作陣はよく分かっているのだろう。あと、彼岸花と天鬼のCVで鬼舞辻無惨を連想した。アニメ版はぴエネMADでしか知らないけど…
シビアな時代背景
上記の凄惨な表現や土井先生・きり丸のバックボーンに限らず、貧困や飢え、戦火が身近にあることを感じさせるシビアな描写も各所に散りばめられていた。
普段はギャグという安全装置の影に隠れて忘れがちであるが、「忍たま」の世界は「信長の野望」と同じように国盗り合戦が当たり前に存在する、現代日本よりもずっと死が近い世界なのだと再認識することとなった。
(そういえば、昔生首に死化粧をする話とかあった気がする)
危険な世界だからこそ、作中で描かれる「絆」や「笑い」は尊いものなんだろうなぁ…
聞くところによると、作者のこだわりによって「忍たま(落乱)」の時代描写は(ギャグ的に登場するオーパーツを除けば)史実に即したものになっているのだそう。
確かに、本作で言及された「袋翻の術」をはじめ、作中に出てくる「忍術」は蝦蟇を出したり分身したりするものではなくどれもリアリティがある。
博物館で「忍たまっぽい」と感じた街や鎧の模型の年代を見るとドンピシャで室町時代後期のもので、感心したこともあった。
普段から細部にこだわって作られているからこそ、「戦乱の世である」ということの説得感が強く胸に響くのだろう。
戦闘シーン
【天鬼 vs 六年生達】
まさか、流血戦闘シーンを出してくるとは…
ギャグシーンで大きな”たんこぶ”ができるのとは違い、一朝一夕では傷が完治しないのもまた生々しい。
流血表現を抜きにしても、想像以上にアクションシーンの作画に力が入っており、良い意味で期待を裏切られた。
(来場した子供が「土井先生、怖い…」と怯えていたくらい)殺意剥き出しの天鬼に本気で応戦していた六年生達だが、天鬼の正体が分かったとき、困惑しながらも「生徒」として歩み寄っていくのがまた切ない…
六年生達が土井先生を捜索するシーンもそうだが、筆者が思っていた以上に彼らが土井先生に並々ならぬ思い入れを抱いているのが伝わってきた。
映画鑑賞後に知ったことだが、現六年生が一年生時代に担任だったのが土井先生であり、お互いに初めての先生・生徒だったそうだ。
そりゃ、思い入れもあるわけだ(泣)
(忍術学園の教師は担当学年が決まっているのだろうか。確かにそっちのほうが教育の効率は良い気がする)
【雑渡昆奈門 vs 利吉達】
次なる戦闘シーンも強者vs複数人という構図であったが、天鬼戦とは打って変わって雑渡さんに殺意は無く、むしろ「意図的に致命傷を避けている」ということが伝わる戦闘シーンであった。
もし雑渡さんが本気を出していればすぐに全滅させられていた…というか、
「命を奪わずに足止めする」というのは普通に殺すよりも遥かに難しいだろう。
利吉さんもかなりの実力があるプロ忍だと認識しているが、彼らを軽くいなせる雑渡さんって…
強 す ぎ じ ゃ な い ?
敵陣営じゃなくてよかったね…マジで
冒頭の土井先生もそうだけど、単に無双するよりも相手を気遣いながら無双するとより凄く見えるな。
あとゲスト声優の演技が違和感無さすぎて良い意味でビックリ。
「天鬼」
事故によりトラウマだけを残して記憶喪失となってしまった土井先生だが、ドクタケの洗脳によって全く別の人格を上書きされてしまったというよりは、「環境によってはこうなっていた」というIFルートの人格であるのだろう。
記憶喪失&洗脳という突飛な状況ではあるが、「強く優しく誰からも好かれる土井先生だって、誰にも見せない闇を抱えているのだ」「『天鬼』と違って土井先生には居場所があり、絆があるのだ」ということがよく分かり、土井先生のキャラクターを深堀りするのに効果的なシチュエーションだと感じた。
稗田八方斎
土井先生が何にぶつかったのかは終盤まで明らかにされていなかったが(岩でもなさそうだったのでずっと疑問に思っていた)、実は八方斎の頭にぶつかっていたのだった。
「実は稗田八方斎もおかしくなっていた」とすることで、八方斎にヘイトが向かったり視聴者に遺恨が残ったりすることを避ける良い落とし所だと感じた。
基本的には悪役であるドクタケの面々も憎めないキャラのはずだもんな。
八方斎の惨い命令に拒否反応を示す風鬼には、「あ~そうだよね、同じくらいの息子がいるもんね…」と同情してしまった。
戦乱の世にはあながち有り得ない命令でもないのがコワい。
忍術学園の先生達
「土井先生の失踪」という異常事態に際して、学園として土井先生を捜索するだけではなくできるだけ生徒達を不安にさせないような配慮がされている描写があり、「昔は気付かなかったけれど大人は大人として子供を守ってくれていたんだな」と再認識した。
…ただ、きり丸一人に秘密を背負わせるには重すぎるって!
結果的に「は組」の皆と共有できたからよかったんだけど。
一人だけ馬鹿デカい負担を背負うことになったきり丸が不憫で仕方なかったなぁ…
まぁそれはそれとして、土井先生の失踪に冷静かつ本気で対処する山田先生がカッコよかった。
体術担当だしキャリアも長そうだし、戦闘になったら土井先生以上に強いんだろうな。
ていうか、山田一家と土井先生ってさぁ…
「お兄ちゃん」ってさぁ!?
そういう関係…だったのか…
雑渡昆奈門
上記の通り雑渡さんについては少しアニメで見たことがある程度でよく知らず、「横座り癖がある」「なんか強いらしい」くらいの情報しか持ち合わせていなかったのだが…
えっなにこれメチャクチャ強いじゃん。
コナンで言う赤井秀一的なチートキャラなの?
淡々と天鬼の暗殺を決定するあたり、プロ忍としての判断能力にも長けていそうだ。
なおかつ、ギリギリまで暗殺を引き伸ばしてくれる懐の深さよ…!
土井先生にとっても子供達にとってもタソガレドキにとっても最善になる択をとっていた雑渡さん。
私情を捨てられずに行動していた利吉さんとは対象的で、戦闘力でも判断力でも「プロ忍」としての実力が卓越しているのが分かった。
こう書くと利吉さんが当て馬みたいだけど…私情が入って当たり前だし利吉さんは悪くないよ。
要は、雑渡さんがカッコよかった(小並感)
映画鑑賞後に知ったのだが、横座り癖があるのは人を助けた時にできた怪我によるものだとか。
単なるギャグだと思っててすみません…………
その他(気になった点)
・長寿番組ゆえに慣れ親しんだCVから変更になっていたキャラが何人かいたが違和感は無かった。
・欲を言えば、通常運転の「土井先生」の活躍をもっと見たかった。
最初の決闘シーン以外はどうしても受け身(救出される側)に回ってしまい、いまいち見せ場がなかった印象。
・違和感のある音響演出があったが、分かる人には刺さるのだろうか?
正直意図が理解できなかった。
総括
たまにある「当時の子供達に向けた大人向けアニメ」でもなく、かといって「子供向けアニメ」でもない。
遠近両用眼鏡のように、大人と子供両方の視点から楽しめる工夫が凝らされた良作であると感じた。
(逆に言えば、ガチガチの大人向け作品を求めている人からしたら物足りなさを感じるかもしれない。)
昔「忍たま」を見ていたという大人にも、子供にもオススメできる作品だ。
ただ小さい子が怯えているシーンもあったので、未就学児にはキツいかな…?
おわりに
原作漫画は既に完結しているそうだが、ハイクオリティな最新作のリリースによって「忍たま」のコンテンツとしての強さを改めて感じることとなった。
多くのキャラを抱えているにも関わらず一人一人の個性が尊重され、キャラが大事にされている(悪役の稗田八方斎でさえも)のが分かったし、
全年齢層が安心して楽しめる作品ながらも、女性オタクに根強い人気があるのも納得できた。
「懐かしい」に留めておくにはもったいない現役コンテンツである。
聞くところによると過去の映画作品もかなり評価が高いようなので、折を見てそちらも鑑賞してみようと思う。
余談
・滝夜叉丸のねじ込み出演に笑った。「上級生はよく知らないけど滝夜叉丸だけは分かる」という我々ライト層の存在が認知されたうえでのサービスシーンか…!?
・「利吉さん」のことを頭の中でいつの間にか「利吉くん」と呼んでいたことに気付いた。時の流れって怖いな~
おわり